タイで今、“チャーシュー”がかわいすぎると話題だ。しかも、食堂ではなく、動物園で、だ。
正体は、コビトカバの赤ちゃん。
付けられた名前は「ムーデーン」、現地の言葉で“チャーシュー”を指す。

“豚肉団子”の名前を持つムーデン (写真:khao kheow open zoo 2024年)
“豚肉団子”の名前を持つムーデン (写真:khao kheow open zoo 2024年)
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じつはこのムーデーン、2024年に世界的ブームを巻き起こした「ムーデン(“豚肉団子”の意)」の姪っ子にあたる。
叔母譲りのかわいさは、すでにSNSで話題沸騰中。
タイの新たな“豚肉料理シリーズ”のスターとして注目されている。

世界を沸かせた「ムーデン」

「ムーデン」は2024年、タイ東部のカオキアオ動物園で大ブームとなったコビトカバだ。

名前の意味は、現地の言葉で“豚肉団子”。
ぷにぷに、もちもちの体。ぽてぽて歩き。そして時折見せる“虚無顔”。
歩いているだけなのに、なぜか目が離せない。

SNSでミーム化したムーデンの表情(写真:khao kheow open zoo 2024年)
SNSでミーム化したムーデンの表情(写真:khao kheow open zoo 2024年)

「無」なのか、「眠い」のか、それとも「お腹がすいた」のか。
SNSでは瞬く間に人気となり、日本のニュースでも大きく取り上げられた。

人気は社会現象レベルにまで発展し、イタリア人カップルがムーデンの前で「プロポーズ」を行うほど。
さらには、熱狂した来園者が、ムーデンの飼育エリアに侵入してしまう騒動まで発生した。

ムーデンの前でプロポーズするカップル(写真:khamoo.andthegang)
ムーデンの前でプロポーズするカップル(写真:khamoo.andthegang)

ムーデンはもはや、タイを代表する“動物界のスター”。
そして今、その血筋を受け継ぐ新たなコビトカバが誕生したのである。

名前を決める投票で“チャーシュー”が圧勝

バンコク中心部から車で約5時間、タイ東北部のコラート動物園。
2026年3月に、コビトカバの赤ちゃんが生まれた。

タイ東北部ナコンラチャシマ県にあるコラート動物園
タイ東北部ナコンラチャシマ県にあるコラート動物園

園は、名前を一般投票で決定。候補には、なぜか「豚肉料理」の名前がずらり。

・ムーワーン(甘い豚)
・ムーヨーン(豚肉フレーク)
・ムーヌム(やわらか豚)
・ムーヨー(豚肉ソーセージ)

もはやコビトカバの命名会議なのか、タイ屋台料理のメニュー開発なのか分からない。

「チャーシュー」が圧勝した名前投票。肝心の本人は、お母さんのそばが一番好きなようだ
「チャーシュー」が圧勝した名前投票。肝心の本人は、お母さんのそばが一番好きなようだ

そんな中、約37万票中35万票以上を獲得し、圧勝したのが「ムーデーン」だった。

タイ人なら誰もが知る「ムーデーン」(チャーシュー)。コビトカバの名前の由来に
タイ人なら誰もが知る「ムーデーン」(チャーシュー)。コビトカバの名前の由来に

タイ語で直訳すると、“赤い豚”。現地で定番の“チャーシュー”料理を指す。

一方で母は、“クリスピーポーク”

さらに、ムーデーンのお母さんの名前は「ムーグローブ」。意味は、“クリスピーポーク”だ。
豚肉をじっくりと揚げて、外側をカリカリになるまで仕上げた料理を指す。

タイで「ムーグローブ」と「ムーデーン」は、よくセットで出てくるという。
飼育員も「親子でぴったりの命名」と太鼓判を押す。

母親の名前は「ムーグローブ」(クリスピーポーク)。娘に負けない存在感を放っていた
母親の名前は「ムーグローブ」(クリスピーポーク)。娘に負けない存在感を放っていた

なぜタイでは動物に料理名をつけたがるのか?動物園にも聞いてみたが、明確な理由はよく分からなかった。

日本でも、動物の名前に身近なものを重ねる文化はある。
東京・上野動物園で2025年に生まれたコビトカバは、「イロハ」と命名された。母親「モミジ」にちなむ名前だ。

その国の馴染み深いものを、動物に重ね合わせるのは、自然なことかもしれない。
グルメ大国タイでは、かわいいコビトカバですら、料理名になってしまうのだろうか。

かわいい。お腹が空くとの感想も

当のムーデーンは、まだ生後2カ月。一日のほとんどを寝て過ごしている。

水の中でぷかぷか浮かび、時々お母さんの後ろをよちよち歩く。その姿を見ようと、多くの家族連れが動物園を訪れていた。

水の中でうとうと。寝顔までかわいいと来園者を悶絶させていた
水の中でうとうと。寝顔までかわいいと来園者を悶絶させていた

来園者からは、「ムーデーンにソースをかけてる姿を思わず想像した」「お腹が空いてきちゃった」という感想も飛び出した。

SNSには毎日のように動画があがり、「かわいすぎる」「食べたくなる」と、タイ人たちの心をくすぐっている。

取材班に見せたキュートな姿

ただ、取材は簡単ではなかった。

ムーデーンは普段、なかなか陸上に姿を見せない。コビトカバは夜行性で、皮膚が乾かないよう、水中でじっと過ごすことが多いからだ。

「きょうは、お昼寝姿しか撮れないかもしれない…」

取材班に、そんな空気が漂い始めた頃だった。
突然、空が暗くなった。タイ特有の激しいスコール。雷鳴が響き、大粒の雨が動物園の地面をたたき始めた。

すると…。ムーデーンが、現れた!

なかなか陸に上がらなかったムーデーン。突然のスコールが“撮れ高”を連れてきてくれた
なかなか陸に上がらなかったムーデーン。突然のスコールが“撮れ高”を連れてきてくれた

雨の中を、よちよち歩く。母親のあとを懸命についていく。そして、坂道で足を滑らせるハプニングも。

よちよち歩きの途中で、まさかのスリップ。坂道は少し苦手らしい
よちよち歩きの途中で、まさかのスリップ。坂道は少し苦手らしい

まだ赤ちゃん。それでもどこか、堂々としている。大雨が降っても、雷が鳴っても、本人はどこ吹く風。むしろ楽しそうに見えた。

雷が鳴っても、大雨が降ってもお構いなし。肝の据わり方は叔母譲りかもしれない
雷が鳴っても、大雨が降ってもお構いなし。肝の据わり方は叔母譲りかもしれない

動物園によると、“ムーデーン効果”で来園者はすでに1~2割増えているという。

ベビーラッシュで第3の“豚肉料理”誕生か!?

そして今、タイでは「第3の豚肉料理」が誕生しようとしている。

タイ東北部のコーンケーン動物園で、2026年4月に生まれたコビトカバの赤ちゃんについて、名前を決める一般投票が始まった(5月20日~6月15日。結果発表は6月28日)。

本人はまだ知らない。自分の名前を巡って、タイ中で“豚肉料理会議”が始まっていることを(写真:Khonkaen Zoo)
本人はまだ知らない。自分の名前を巡って、タイ中で“豚肉料理会議”が始まっていることを(写真:Khonkaen Zoo)

この赤ちゃんも「ムーデン」の親族にあたり、「ムーデーン」の“いとこ”にもあたるという。
気になる名前候補は、こちらだ。

・ムーヨー(豚肉ソーセージ)
・ムーナムトック(豚肉のスパイシーサラダ)
・ムーダー(「豚だよ!」)
・ムーデュン(ぷるぷる豚)
・ムーピン(豚の串焼き)

“豚肉団子”のムーデン。 “チャーシュー”のムーデーン。そして第3の料理名は、果たして何になるのか。

タイの“豚肉料理シリーズ”は、どうやらまだ終わりそうにない。

関 隆磨
関 隆磨

FNNバンコク支局特派員。1989年秋田県生まれ。2012年に仙台放送入社。県警・行政クラブ、報道デスク等を担当し、2026年4月~現職。