札幌市営地下鉄の延伸をめぐる議論が再燃しています。
JRも地下鉄もない唯一の区・清田区の住民からは切実な声が上がる一方、事業費や人口減少局面での採算性など、課題も山積しています。
札幌市営地下鉄は南北線・東西線・東豊線の3路線、総延長48キロ、全49駅で構成されています。
1971年、札幌オリンピックに向けて南北線(北24条~真駒内)が開業したのが始まりで、全国で4番目の地下鉄として誕生しました。
近年は利用者数が増加傾向にあり、2025年のデータでは1日あたり約65万6000人、年間では約2億4000万人が利用。いずれも過去最多を更新しています。
札幌市によると、沿線の再開発やインバウンドを含む旅行客の増加が要因とみています。
延伸の議論が高まっているのは主に2つのエリアです。
1つは東西線の宮の沢駅からJR手稲駅を経由し北海道科学大学方面へ延ばす案。
もう1つは、東豊線の福住駅から東月寒・北野を経て清田区役所方面へ延ばす案です。
特に清田区では住民の声が切実です。
70代の女性は「冬にバスが止まり、福住駅から清田まで約4キロ歩いた」と話し、10代の女性は「バスの本数が減り、中心部に行くだけで1時間かかる」と訴えます。
80代の男性は「昔から計画されているが、なかなか実現しない」と話しました。このエリアに地下鉄が通ると信じて家を買った人も多いといいます。
地元期成会は40年以上前から延伸を求めて活動を続けています。
主張の柱は2つ。
1つは「公共交通は採算性だけで判断すべきではない」という点。
もう1つは、1984年ごろに里塚霊園の建設を受け入れる際、地下鉄延伸を含む14項目で地元と市が合意したにもかかわらず、延伸が実現していないという経緯です。
さらに現在、里塚霊園の移転新設の話が浮上しており、「地下鉄も伸びていないのに霊園を建て直すのか」と反発が強まっています。
全国に目を向けると、人口減少局面でも地下鉄延伸の事例はあります。
大阪メトロ中央線はコスモスクエア駅から夢洲駅まで延伸し、2030年秋にも開業予定のIR(統合型リゾート)を見据えた判断でした。また、加算運賃で早期回収を図る仕組みも導入しています。
札幌と経済規模が近い福岡では、地下鉄七隈線が天神南駅と博多駅を結んだことで利用者が急増し、沿線の宅地開発が大きく進みました。
公共交通政策に詳しい呉工業高等専門学校の神田佑亮教授は、「沿線をどう開発するかがカギ」と話します。
朝夕の通勤だけでなく、日中も人が行き来する双方向の需要を生み出すことが重要だとして、東豊線沿線にあるプレミストドーム周辺の開発がカギになるのでは、と提言しました。
清田区民の悲願である地下鉄延伸は実現するのか。採算性と住民の暮らしをどう両立させるか、今後の議論の行方が注目されます。