「里親」制度は特別な人のためのものではない。社会全体で子供を育てる仕組みとして、今あらためて求められている。秋田県の取り組みと当事者の声から、その現実と可能性を見つめる。
家庭で育てるという国の方針

国は2016年、虐待や貧困などで親と暮らせない子供を、施設ではなく家庭で育てる方針を打ち出した。
里親には、養子縁組のほか、一定期間子供を受け入れる「養育里親」がある。

週末や長期休みだけの短期から自立までの長期まで関わり方は多様で、手当や生活費の支給も整備されている。
里親は、特別な制度ではなく、子供に家庭環境を提供するための現実的な選択肢である。
秋田で進む包括的な支援体制
秋田市に開設された「県里親支援センターTOMONY(トモニー)」は、里親制度を支える拠点である。
研修、マッチング、養育開始後のフォローまでを一貫して行う体制を整え、専門職が常駐する。
里親を孤立させない支援が特徴であり、「チームで子育てする」仕組みを具体化している。
“委託率”アップへの取り組み

県内には親と暮らせない子供が約200人いるが、里親のもとで暮らす割合は約23.7%にとどまる。国が掲げる目標(2029年度までに乳幼児75%以上、学童期以降50%以上)には及ばず、制度の認知不足が課題となっている。

そこでセンターは、県内の飲食店の協力を得て、小規模な説明会「里親のCOTO(こと)」を始めた。参加者に、会場となる店の料理を楽しみながら、制度や県内の実情に耳を傾けてもらおうというものだ。
また、思いに賛同してくれた企業に「里親サポート企業」として登録してもらい、割引サービスや従業員への啓発活動などを通じて里親制度を支援する輪を広げている。
飲食店での説明会や企業との連携といった取り組みは、里親を身近に感じてもらうための試みだ。里親は「遠い存在」ではないという認識を広げる必要がある。
当事者が語る、変化の喜びと戸惑い

長期の養育里親として子供を迎えた女性は、「ガチガチに固まっていた子がほぐれて、『こんなことできるんだ』と見えてくるのが楽しい」と語る。
子供が本来持つ力が現れてくる過程に、確かな手応えを感じている。
一方で、戸惑いもある。
「好きな靴を選んでいいよと言ったら固まってしまった。自分で選ぶ経験がほとんどなかった」と話す。
日常の小さな選択ですら困難な子供に向き合う中で、育て直しの必要性を実感する。
それでも、「相手の気持ちを考え続けることが、自分自身を成長させてくれる」と言い切る。
支え合うことで成り立つ子育て
女性は1人で子供を育てているが、「TOMONYや児童相談所、心理士とチームで育てている感覚がある」と語る。
里親同士で経験を共有する機会もあり、「むしろ実子を1人で育てるより充実している部分があるかもしれない」と感じている。
里親制度は、個人の善意だけに依存しない支援の仕組みとして機能している。
“特別視”が生む孤独
しかし、社会の受け止め方には課題が残る。
「すごいことをしていると言われるが、それが距離を感じさせる」と女性は語る。
称賛の言葉は、ときに孤独感を生む。
「特別なことではないから、『そうなんだ』くらいで受け止められる社会になってほしい」と願う。
子供を社会で育てるという意識
少子化が進む中で、子供は社会全体で守り育てる存在である。里親制度は、そのための重要な手段の一つだ。
制度を支えるのは行政だけではない。一人一人の理解と関心が、子供たちの未来を支える土台となる。
里親を特別な存在とせず、自然に支える社会への転換が求められている。
(秋田テレビ)
