気温の上昇とともに『エアコン2027年問題』という言葉を耳にするようになった。
2027年4月から「国が定める“省エネ基準”が大幅に引き上げられ、メーカー各社はより高性能な製品開発を求められる」というもので、背景には国が進める「脱炭素社会」への取り組みなどがあるという。
あくまでメーカーに課される目標だが、従来の格安エアコンの多くが製造中止になったり、新モデルの価格上昇が見込まれるなど、我々消費者にも大きく関係する。
今や、単なる空調ではなく命にかかわるエアコン。
2027年問題は消費者にどんな影響があるのか。今、何をすべきなのか。
白物家電を中心に情報を発信する“家電プロレビュアー”で、開設した「家電ラボ」で大小さまざまな家電の性能や使いやすさなどの検証も行う“家電の専門家”石井和美さんに話を聞いた。
■エアコンが正常に動くなら慌てなくて大丈夫!
【家電プロレビュアー 石井和美さん】
「エアコン2027年問題」が気になっている方も多いと思いますが、基本的には慌てなくて大丈夫です。
新製品の価格上昇や、猛暑予想などを受けて、既に駆け込み需要が始まっています。
確かに格安エアコンの販売は在庫限りと考えられますから、品薄を心配される方も多いでしょう。
ですが、焦らずに、まずは今使っているエアコンの動作確認をしてください。
買い替えの目安や時期については後述しますが、正常に動くなら慌てて行動を起こさなくても大丈夫です。
万が一、故障などの不具合が出た場合は、すぐに電気店に相談して下さい。
今、工事は混みあっています。もともとの人手不足に駆け込み需要が重なり、数週間待つことも少なくありません。
今年まだエアコンをつけていない方は、今すぐリモコンのスイッチを入れてテストして頂ければと思います。
■『エアコン2027年問題』とは
エアコンは主に「上位機種(ハイエンド)」と「標準機種(スタンダード)に分かれ、2027年問題で価格が上がるのは「標準機種」です。
「標準機種」は、例えば6~8畳サイズなら10万円以下で購入できるタイプで、“格安エアコン”とも呼ばれています。
従来の製品の多くは、価格を抑えるため最低限の機能のみを搭載しているので、新しい省エネ基準を満たしていません。
新製品は、省エネ機能強化のために、例えば冷却装置の中のアルミを増量したりするので部材のコストが上がり、本体価格も上昇します。
「新製品の価格が上がる」と言われているのはこのことですが、省エネ効果で電気代が節約される面もありますから、「単純な価格上昇」とは異なります。
■買い替えの目安のひとつは“修理できるかどうか”
エアコンの平均寿命は一般的に10年程度が目安とされていますが、実際の平均使用年数は13~14年程度のご家庭が多いようです。
使用できる年数は、使用頻度や設置場所によって異なりますが、買い替えのひとつの目安になるのが「部品があるかどうか」です。
メーカーの部品保有期間は製造中止後9~10年とされているので、10年を超えると修理が出来なくなるケースがあるのです。
よく使うエアコンが10年を超えていて、次も従来の格安エアコンでと考えている場合は、新・省エネ基準に切り替わる前に、買い替えを検討されると良いでしょう。
ただし、今のエアコンが問題なく使用できているなら、混みあっている夏場を過ぎてからでも十分だと思います。
通常、「標準機種」は2月~3月の決算期にかけて型落ちモデルが安くなる傾向がありますが、今は2027年問題の影響で底値時期が読み切れません。
ですが、今すぐ駆け込むのではなく、本体価格や電気代、機能などをじっくり検討してからの購入をおススメします。
■本体も室外機も大型化
買い替える場合は、設置スペースにも気を付けて下さい。
従来の「標準機種」は、薄くてコンパクトなものが殆どです。最低限の機能のみだからこそのスリム化ですが、節電仕様になるとそうはいきません。
例えば熱交換器などの中の部材が少し大きくなると、それだけでも全体が大きくなります。機能が良いものほど大型化するといえるでしょう。
わが家の子供部屋(6畳)のエアコンを新モデルに変えたら、ぐっと前にせり出して一気に大きくなりました。
「大きさぐらい…」と思われるかもしれませんが、狭い部屋でそれまでコンパクトだったエアコンがぐっと前へせり出してくるのはかなりの圧迫感です。
さらに室外機も大きくなります。
リビングの14畳用新モデルの室外機は、従来のものよりひと回り以上大きく、思わず二度見するほどの存在感です。
ベランダなど狭いスペースに室外機を置かれるご家庭も多いと思います。新しいエアコンを買う際は室外機の大きさもしっかり確認して下さい。
■エアコン選びは“節電”だけでなく“心地よさ”や“利便性”も重視して
10年前と比べると、エアコンの性能はずいぶんと進化しています。
新しいモデルは、例えば一定の温度になると自動でスイッチが入るものや、スマートフォンと連動して外出先から自宅の温度が分かるものなどもあります。
仮に高齢のご家族が一人で家にいてエアコンをつけていなくても、遠隔でスイッチを入れることができるので、非常に安心です。
自宅で熱中症でなくなる高齢者が増えている中、こうした性能は「命を守る」意味でも重視すべき点だと思います
また、センサーの進化も目をみはるものがあります。
温度や湿度を測るだけでなく、人の状態や感情まで検知できる機種も登場しています。
センサーの感度が上がったことで、温度などの自動調整に無駄がなくなり節電につながりますし、手動で頻繁に温度調整をするストレスもなくなります。
エアコンを選ぶ時、つい省エネや節電に目がいきがちですが、心地よさや利便性など「自分が快適に過ごせるか」にも目を向けて頂きたいです。
■買い替えは焦らずじっくりと
繰り返しになりますが、エアコンの買い替えは慌てなくて大丈夫です。
現状、国内大手メーカーを中心に新・省エネ基準のモデルが出ていますが、今後、海外製品など「新基準の少し安い製品」なども出てきて、選択肢が広がると予想しています。
エアコンは命にかかわる、私たちの生活に欠かせない家電です。
状況を少し様子見しながら、今、買い替えるべきかどうか、買い替えるならどんな機能が自分に最適なのか、などをじっくり納得がいく形で決めて頂きたいと思います。
(家電プロレビュアー 石井和美さん)