兵庫県たつの市の閑静な住宅街で、母娘2人が血を流して死亡しているのが見つかった事件。2人は同じ家に住む田中澄惠さん(74)と次女の千尋さん(52)で、警察によると、首や上半身に複数の刺し傷があり、殺人事件とみて捜査が進められています。
事件を受け、近隣住民からは「びっくりして。まさかこんな田舎で…」という声が聞かれました。
元大阪府警の刑事で防犯スペシャリストは「日本人の“安全神話”が最も色濃く残っているのが地方」と指摘。さらに、“周りの目”が少ない郊外の方が犯罪者にとって“狙いやすい場所”だといいます。
のどかな地域に突然訪れた恐怖。栃木県で起きた強盗殺人事件や、2024年に発生した首都圏での連続強盗事件も、いずれも郊外の住宅が狙われています。
なぜ郊外が狙われるのか。その背景を取材しました。
■「うちは田舎やから大丈夫」という意識
神戸市内から車でおよそ1時間半。取材班とともに現場へ向かったのは、元大阪府警の刑事で防犯スペシャリストの折元洋巳氏です。
現場周辺を歩いた折元氏が真っ先に指摘したのは、“防犯意識の低さ”でした。
【元大阪府警刑事 折元洋巳氏】「鍵をかけているとか、防犯カメラをつけているところが比較的少ない。一般論的にあんまり危機感を持っている感じがしない」
実際、地元住民に話を聞くと「そんな治安が悪いわけでもないし。家出る時は(鍵を)閉めますけど、いる時は開けっ放しですね」という言葉が返ってきました。
“都心部は危険、郊外は安全”…そうした漠然とした認識がありました。
■空き家の増加が生む「人の目」の消滅
取材を進めると、もう一つの問題が浮かび上がりました。現場周辺には複数の空き家が目立ちます。
【元大阪府警刑事 折元洋巳氏】「思ったより空き家が多くて。空き家が多いというのは、管理が行き届かないし、人の目線も明らかに減ります」
過疎化が進むなどして、かつて盛んだった住民同士の交流も今は少なくなっているといいます。
【元大阪府警刑事 折元洋巳氏】「みんなが知り合いだったから(犯罪の抑止に)強かった町が、古い人がいなくなり、新しい家(人)が入ってきて、人間関係が希薄になる。郊外の良さと悪さの、“悪さ”が出てきている」
■「田舎の方がやりやすい」狙われる郊外
こうした郊外を舞台にした事件は、今相次いでいます。
今月、栃木県で起きた強盗殺人事件や、2024年に発生した首都圏での連続強盗事件も、いずれも郊外の住宅が狙われました。
折元氏は、今回の事件について“トクリュウ”(匿名・流動型犯罪グループ)の関与の可能性は低いとしながらも、郊外を狙う犯罪の構図をこう説明します。
【元大阪府警刑事 折元洋巳氏】「住所が分かればGoogle Earthで周りの状況を見て、『家でかいな』、『周り人少ないな』と、どこが行きやすいか調査した結果、金を持っていて、田舎の方がやりやすい」
郊外は今、犯罪者にとって“狙いやすい場所”になっているといいます。
■「過信できる状況は何もない」
事件を受け、たつの市危機管理監の西田伸一郎さんはこう話します。
【たつの市危機管理監 西田伸一郎さん】「高齢化率も進んでいますし、空き家も増えていますので、(地域の)目が昔に比べると働きにくくなっていると感じます。防犯対策も含め、窓に2重で鍵をかけるなど啓発させていただいています」
折元氏は、「日本人の“安全神話”が最も色濃く残っているのが地方」だと指摘し、こう訴えます。
【元大阪府警刑事 折元洋巳氏】「昔、考えられなかったような事件が多発している。今のこの状況の中で、過信できる状況は実際何もない」
警察は全容解明に向け、慎重に捜査を進めています。
(関西テレビ「newsランナー」2026年5月21日放送)