鳥取県の境港で5月20日、今季最初のクロマグロの水揚げが行われた。隠岐諸島沖で漁獲した、1本あたり平均150キロ余りのクロマグロ86本が揚がり、最高値は1キロ3480円と去年の初セリに比べ2割ほど高い値が付き市場には今季の漁の始まりを告げる活気が広がった。
地域にとっては朗報であり、豊漁への期待も高まる。しかし、この出来事は単なる季節の話題にとどまらない。クロマグロという魚が象徴するのは、いま世界が直面している資源管理の課題そのものだからである。
“乱獲の象徴”から国際的な規制の下で資源管理へ
振り返れば、これまでクロマグロは乱獲の象徴とされてきた。太平洋の資源量は過去に大きく減少し、2010年前後には深刻な水準に落ち込んだ。その反省から国際的な枠組みのもとで厳格な規制が導入され、漁獲量の制限や小型魚(30キロ以下)の保護などが進められてきた。こうした措置の積み重ねがいま、資源の回復という形で一定の成果を示していると評価されている。
資源の回復を受け、各海域では漁獲枠を見直す動きも出てきた。太平洋では日本の漁獲上限が引き上げられる方向となり、大西洋でも2026年から28年の漁獲枠は2025年比で10%以上増えている。これは資源管理が一定の成果を上げていることの表れともいえる。
問われる漁獲規制ルールの実効性
科学的評価に基づき資源状況が改善した場合に漁獲枠を拡大するという考え方は、国際的な資源管理の基本だ。
だが、ここから先が難しい。まず、漁獲枠は単純な科学の問題ではなく、各国の利害がぶつかる政治的交渉の結果でもある。大西洋の漁獲枠配分をみると、欧州連合が大きな割合を占める一方、日本にも相応の枠が認められているなど、配分には歴史的経緯や交渉力が大きく影響している。 国によって規制や監視体制の厳しさも異なり、ルールの実効性が常に問われ続けている。
クロマグロが海を越えて移動する回遊魚である以上、一国だけで管理が完結するものでもない。どこかで過剰な漁獲が起きれば、その影響は広範囲に及ぶ。
加えて、資源評価そのものにも不確実性がある。科学的分析は過去データに基づくため、海洋環境の変化や気候変動といった新たな要因を完全に織り込むことは難しい。実際、資源の状態を巡っては慎重な見方も根強く、楽観に偏ることへの警戒も指摘されている。
また漁獲の報告が世界的に厳格にルール化されているにもかかわらず、未報告などの密漁もあとを絶たない。
一方、漁獲枠問題は地元の漁業者の新たな知恵を生んだ。
「価格維持」の方法だ。漁獲枠があればたくさんとれば、直ぐに枠の上限に達するだけではなく、市場に一気にクロマグロが流通し値崩れがおきる。それを防ぐために、計画的に漁獲するようになったという。ただクロマグロが回遊魚だけにすべてが予定通りとはいかないが・・・・。
地域の漁港が映し出す風物詩が“持続可能な漁業”の象徴に
このような現実を踏まえると、境港の初水揚げは単なる「季節の話題」や「景気の良いニュース」ではなく、制約の上に成り立つ漁業の姿を映していると言えるだろう。漁獲量を増やすことと、資源を守ることは本来相反する要素であり、その均衡点をどこに置くかが問われている。
地域の港で水揚げされるクロマグロは、海の恵みの豊かさの象徴であると同時に、持続可能性という重い課題を背負っている。資源回復の成果を一時的な追い風で終わらせるのか、それとも長期的な安定へとつなげるのか。境港のにぎわいは、世界全体の選択を静かに映し出している。
(TSKさんいん中央テレビ 小泉陽一)
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