能登半島地震から2年4カ月。石川県志賀町富来の旅館「湖月館」が営業を再開した。あまたの文人に愛された名旅館。再建への思いを取材した。
857日ぶりの営業再開
志賀町富来領家町の「湖月館」が地震から857日ぶりに営業を再開した。「再出発ですね」と声をかけると、四代目女将の畑中美佳里さんは「そうですね。うれしいです。何とかここまでできましたね。本当にありがとうございます」と答えた。
湖月館は昭和の初め、富来地頭町で創業した。小説や随筆で名作を残した作家・福永武彦など、文人たちに愛された宿だった。しかし能登半島地震で湖月館は全壊判定を受ける。建物は2025年11月に解体され、今は更地となっている。
畑中さんは当初の心境を「もうダメだなと思いましたね。もう再開はできないなと思いました」と振り返った。
励ましの声に後押しされ再建を決意
それでも畑中さんの気持ちを動かしたのは、各地から届いた声だった。「本当にいろんな方が『大丈夫か』って心配して、メールとかお電話とかを頂いて。皆さんの気持ちや励ましもたくさんあったので、『じゃもう一回頑張るか』という感じで」

地震を機に、富来の中心市街地に近い富来領家町で土地を紹介してもらい、旅館を再建することに。再開の日には、祝いの酒を手に駆けつけた住民の姿もあった。
歌碑を移築、地域とともに新たな出発
新たな湖月館は2階に客室を6部屋準備。1階には昼間に地元の人が気軽に立ち寄れるカフェを開く予定だ。
そして玄関脇には、湖月館を愛した文人・福永武彦が初代女将に送った歌を刻んだ歌碑が移築された。地震を乗り越え、新しい旅館へと引き継がれたその碑には、こう刻まれている。「 夜もすがら 春のしるべの 風ふけど 増穂の小貝 くだけずにあれ」
畑中さんは、再出発にあたってこう語った。「まず今まで来てくださったお客さんにまた来ていただきたいということと、地域の皆さんと一緒に富来を盛り上げて、少しでも町のお役に立てたらなという気持ちですね」
857日ぶりに再びのれんをかけた湖月館。歌碑に刻まれた「くだけずにあれ」という願いは、新たな地でも息づいている。
(石川テレビ)
