「ピカチュウが前にいるから気持ちいいんじゃない?」
足湯に浸かりながらそう声を弾ませたのは、地元の園児たち。その言葉が、この日の空気をすべて表していた。
2年4カ月、閉じたままだった足湯

石川県七尾市、和倉温泉。七尾湾を見渡せる湯っ足りパークにあった足湯は、穏やかな海を眺めながら無料で楽しめるとあって、地元の人にも観光客にも長く愛されてきた場所だった。しかし2024年元日。能登を襲った地震は、足湯の基礎コンクリートを砕き、温泉の供給管を破損させるなど甚大な被害を与えた。あの日以来、施設は閉鎖されたままになっていた。
「コイから竜へ」——復興のシンボルを背負ったギャラドス
能登の復興を後押ししようと名乗りを上げたのが、ポケモン・ウィズ・ユー財団。財団の提案で足湯のリニューアルが決定し、足湯は「わくらポケモン足湯(WAKURA POKÉMON FOOTBATH)」として生まれ変わったのだ。

入口を飾るのは、熱湯の技を繰り出すギャラドスのイラスト。

コイから竜へと進化したギャラドスは、能登復興のシンボルとして選ばれた。打ちのめされても、より強く立ち上がる——その物語が、この街の今と重なる。
ピカチュウのテープカット、そして「一番風呂」

オープンの朝、湯っ足りパークにピカチュウが現れた。
ピカチュウも参加し、テープカット。式典の熱気が冷めやらぬうちに、地元の園児たちが足湯へと駆け込んだ。
「気持ちいい、めっちゃ気持ちいい」と声を揃える子どもたち。冒頭の一言は、その賑わいの中から飛び出したものだった。

7種類のポケモンに囲まれながら、七尾湾を眺める
足湯エリアに一歩踏み入ると、コダックやシャワーズをはじめとする水タイプポケモンなど、7種類が迎えてくれる。壁にも様々なタイプのポケモンが描かれ、どこを向いてもにぎやかな世界が広がっている。

ギャラドスの口からは、和倉温泉ならではの豊富な塩分を含んだ本物の温泉が注ぎ込まれている。視覚も、肌も、ともに楽しめる足湯だ。

「幸せです」——愛知からも、富山からも
オープン初日、足湯には遠方からの訪問者も多くいた。
「ポケモンたちみんなかわいいですし、海の景色もよくて最高ですね」と話したのは、富山県から訪れた人だ。
愛知県から来た女性は「足湯とポケふたを撮りに来ました」と言い、ポケモンと一緒に入れる足湯の感想を問われると、一言こう答えた。
「めっちゃかわいい。幸せです。」

「ポケふた」とも連動、まちを巡る仕掛けに
足湯のオープンに先立つ4月29日には、ポケモンとコラボしたマンホールの蓋「ポケふた」も能登で公開。七尾市バージョンには、ギャラドスがデザインされており、足湯との間でストーリーが繋がっている。愛知から来た女性が「足湯とポケふたを撮りに来た」と言ったように、二つのスポットを目当てに能登を訪れる観光客が生まれているのだ。

和倉温泉観光協会の奥田一博会長は、青い法被姿でこう語った。
「日本発祥のポケモンと、日本発祥の温泉文化がしっかりと融合して、和倉温泉の景色を見ながら足湯に浸かっていただき、日本中の方々、世界中の方々がたくさん来てほしい。ほんとに素晴らしい施設がオープンしたと感じています。」
その言葉には、2年4カ月の重みが滲んでいた。

夏には「ポケモン空港」も——能登周遊の起爆剤へ
この夏、のと里山空港がポケモンの世界観に浸れる「ポケモン空港」としてリニューアルする予定だ。空港から足湯、ポケふた——能登をポケモンで巡る旅のルートが少しずつ形になりつつある。

コイが竜へと変わるように、和倉温泉もまた変わろうとしている。七尾湾を眺めながら湯に足を浸す人たちの笑顔が、その証しだ。
(石川テレビ)
