スマートフォンは今や、支払いから勉強まで生活のあらゆる場面に欠かせない存在だ。しかし、1日8時間近く使い続ける若者も珍しくないなか、「SNSを見るたびに人と比べてしまう」「常にチェックしていないと気になる」といった声も聞こえてくる。若者の6割以上が実感するという「スマホ疲れ」。その対策として、富山県・黒部市にあるお寺のカフェで提供される"カジュアル写経"が注目を集めている。
1日6時間、7時間、10時間以上……「もう離れられない」
街で話を聞くと、スマートフォンの使用時間の長さに驚かされる。


「1日6時間14分使っている」「7時間56分」という20代の声に加え、40代の会社員は「10時間以上。もう離れられない。忘れたらすぐ取りに帰る」と話す。支払いや地図など生活インフラとしての役割が大きくなるにつれ、スマートフォンを手放す理由も見当たらなくなってきているのが実情だ。

高校生も例外ではない。「1日2時間半〜3時間くらい使ってしまう」と言いつつも、「参考書に授業動画がついているものが多く、学校の参考書もQRコードを読み込んで取り組むものがあるのでスマホは必須」と話す。勉強のためにスマートフォンを使わざるを得ない場面も増えており、使用時間をただ減らせばよいという単純な話でもない。
6割以上が「スマホ疲れ」を実感 最大の要因はSNS

「SHIBUYA 109lab」が15歳から24歳の約600人を対象に行った調査では、6割以上がスマホ疲れを実感しているという結果が出ている。その要因として最も多く挙げられたのが「SNS」だ。
県外の友人の近況がわかったり、いま流行している情報がリアルタイムで入ってきたりと便利な面がある一方、「常にチェックしたい」「気になってしまう」という依存的な感覚を生みやすい側面もある。
街でも、SNSとの距離感を意識して工夫している人たちの声があった。


「インスタグラムはあまり見ないようにしている。海外旅行に行っている人の投稿を見て羨ましいと感じ、ストレスを感じるのはもったいない」と話す20代女性。また、子育て中の30代の女性は「同じ月齢の子どもの成長を比べてしまうので、あえて見ないようにしている」と語る。他者との比較がストレスの温床になっているケースは少なくないようだ。

同調査では「スマホから離れるためにやっていることがあるか」という質問に対し、7割以上が「ある」と回答。散歩、読書、映画館、部屋の片づけなど、意識的にスマートフォンから距離を置こうとする行動が広がっている。
黒部市のお寺カフェで「カジュアル写経」 SNSから意識を切り離す体験

こうした流れのなかで注目されているのが「デジタルデトックス」や「アテンションデトックス」と呼ばれる取り組みだ。SNSから一時的に離れ、心をリフレッシュする行動を指す。


富山県黒部市宇奈月町にある善巧寺では、境内の一角をリノベーションしたカフェを昨年からオープンしている。もともとあった蔵や納屋を改装し、そこに立っていた木をカウンターなどの木材として再利用した、温かみのある空間だ。

善巧寺22世住職の雪山俊隆さんはこう話す。「お寺なので皆さんに写経の体験をしてもらおうと、カジュアル写経としてお茶を飲みながら気軽に参加してもらい、言葉に触れていただくことを大事にしている」。スイーツや飲み物を楽しみながら、筆を走らせる。その名のとおり、敷居を低く設定した写経体験だ。


実際に体験してみると、一文字一文字を丁寧に写していく作業のなかで、自然と集中力が高まり、頭の中が整理されていくような感覚を覚える。雪山さんも「普段書くことが少なくなってきたので、書くこと自体を新鮮に受け取ってくださる方が多い」と話す。


コースは複数用意されており、20〜30分のものから40〜50分のもの、さらに本格的な3時間コースまで対応している。途中で中断した場合は、そのまま持ち帰ることも、お寺で保管してもらうことも可能だ。参加者のペースに合わせた柔軟な運営が、幅広い層に受け入れられている理由のひとつといえる。

アプリでゲーム感覚の"デトックス"も 自分に合う方法を
デジタルデトックスは、必ずしも特別な場所に出かけなければできないわけではない。自宅でも取り入れられる方法として注目されているのが、専用アプリの活用だ。スマートフォンに触らない時間に応じて画面上の植物が育ったり、ペットが成長したりと、ゲーム感覚で使用時間を減らせる仕組みのアプリが登場している。
スマートフォンを使って、スマートフォンの使用を抑制する—。一見矛盾しているようだが、習慣を変えるきっかけとして活用している人が増えている。

「SNSを見て人と比べてしまう」「常に通知が気になる」。そんな感覚を放置したままでいると、じわじわと疲労は蓄積される。写経のような非デジタルな体験で意識をリセットするのか、アプリを使って段階的に使用を減らすのか。手段はそれぞれでよい。大切なのは、スマートフォンとの関係を「なんとなく」ではなく、自分なりに意識して選んでいくことではないだろうか。
(富山テレビ放送)
