鹿児島市の慢性的な渋滞解消の「切り札」として整備が進む鹿児島東西道路。全長約2300メートルのトンネル掘削は、残りわずか36メートルまで迫っている。貫通を目前に、「巨大な卵の中を歩いているかのような」地下空間を掘り進めたプロジェクトの道程を振り返る。
武岡トンネルの渋滞、その「根っこ」にある問題
ある朝の通勤ラッシュ。鹿児島市の武岡トンネルは大渋滞になっていた。トンネル内をゆっくりとしか進めない車の列。これは決して特別な光景ではなく、鹿児島市民にとって長年の「日常」だ。

なぜ武岡トンネルはこれほど混むのか。その背景には、九州自動車道や南九州西回り自動車道、指宿スカイラインなど、鹿児島市西側の地域から市街地へ向かう主要な道路が、実質的にこの武岡トンネル1本に集中しているという構造的な問題がある。
この渋滞を解消するために国が整備を進めているのが「鹿児島東西道路」だ。1998年に基本ルートが決まったこのプロジェクトは、鹿児島市田上の九州自動車道・鹿児島インターチェンジから、同市上之園町の甲南高校近くまでを結ぶ全長3.4キロの自動車専用道路。すでに完成した新武岡トンネルに加え、新たに市街地の地下にトンネルを掘り、最終的には鹿児島インターと鹿児島港をつなぐ壮大な計画だ。

直径11m、1400トン 地下を掘り進む「怪物機械」
鹿児島東西道路の中核となるのが、全長3.4キロのうち約2.3キロを占める地下トンネルだ。住宅が建ち並び交通量の多い道路の地下を掘るという難工事に挑むのが、「シールドマシン」と呼ばれる巨大な掘削機械である。
直径約11メートル、総重量はなんと1400トン。この巨大な円盤状のカッターを回転させながら地中を掘り進み、後方には同時にコンクリートの壁材(セグメント)をはめ込んでトンネルを形成していく。掘削と覆工を同時進行させるこの仕組みが、騒音や地盤への影響を最小限に抑えることを可能にしている。

シールドマシンの組み立ては甲南高校近くの現場で行われ、2023年11月に中洲通りの地下から本格的に動き始めた。さらに2024年9月9日からは本格的な掘削作業が始まり、作業は倍のスピードで進むようになった。取材では実際に掘っている様子を直接見ることはできなかったが、トンネルの壁材を運搬している様子が確認された。
「巨大な卵の中を歩いているかのよう」 視察団が見た地下空間
2025年4月22日、鹿児島東西道路の建設促進期成会のメンバーが現場視察を行った。鹿児島市の下鶴隆央市長をはじめとする視察団は、すでに掘削されたトンネルの内部を実際に歩いて確認した。
その光景は、まるで「巨大な卵の中を歩いているかのよう」だったという。直径約11メートルの円形断面が連なる地下空間は、圧倒的なスケールで視察団を迎えた。鹿児島市の地下でこれほどの構造物が着実に形づくられていることを、メンバーたちは自らの足で実感したはずだ。
98.5%完了、残り36メートル 貫通は目前
鹿児島国道事務所によると、2026年4月末時点でトンネルは甲南高校方面から田上方向へ2286メートルが掘削済みであり、全体の98.5%が完了している。残りはわずか36メートルだ。
シールドマシンが2023年11月に動き始め掘削が進んだ結果、ゴールはすぐそこまで迫っている。
一方で、トンネルの貫通時期は現時点では未定であり、鹿児島東西道路全体の具体的な完成時期もまだ示されていない。貫通後も道路としての供用開始までにはさらなる工程が待っている。
「官民一体で全力で」 下鶴市長が語る期待
2026年4月、視察に参加した下鶴隆央市長は、「早期完成に向けて官民一体となって全力で建設促進に取り組んでいきたい」と力強く語った。
この発言には、地域の交通課題に長年苦しんできた市民の思いが重なる。武岡トンネルの渋滞は、通勤・通学から物流まで、鹿児島市民の日常生活に幅広く影響を与え続けてきた。鹿児島東西道路が完成すれば、その状況は大きく変わることが期待されている。
残り36メートル。1400トンのシールドマシンが掘り続けた2300メートルのトンネルが、まもなく一本につながろうとしている。貫通の瞬間、そして開通の日を、多くの鹿児島市民が心待ちにしている。
