1998年に基本ルートが決まって24年。鹿児島市で計画が進められている「鹿児島東西道路」。大型プロジェクトは今どのような状況で、これからどうなっていくのか?

新トンネル開通で緩和も…解消されない渋滞

4月8日午前8時すぎ。通勤ラッシュ真っただ中、鹿児島市の武岡トンネルは大渋滞になっていた。通勤する人の車に同乗すると…。

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坪内一樹アナウンサー:
武岡トンネルの入り口に差し掛かってきましたが、入り口から渋滞になっています。

トンネル内ではゆっくりとしか進まない…。なぜ武岡トンネルは渋滞するのか。

その背景には、九州自動車道や南九州西回り自動車道、指宿スカイライン、さらに鹿児島市西側の地域から鹿児島市街地に至る主要道路が、実質的にこの武岡トンネルの1本しかないという現状がある。

鹿児島市街地に至る主要道路は、実質的に武岡トンネル1本のみ
鹿児島市街地に至る主要道路は、実質的に武岡トンネル1本のみ

この渋滞解消を目的に、国は鹿児島東西道路の整備を進めている。すでに完成した新武岡トンネルのほか、新たに市街地に地下トンネルを掘り、最終的には鹿児島インターと鹿児島港をつなぐ計画だ。

鹿児島インターと鹿児島港をつなぐ計画
鹿児島インターと鹿児島港をつなぐ計画

新武岡トンネルが2013年に開通し、以前に比べれば渋滞は緩和されたそうだが…。

通勤で武岡トンネルを利用する橋口哲士さん:
新武岡トンネルの開通前は、1時間ちょっとぐらいかかっていた。(渋滞にはまる時間が)もったいないと言えばもったいない。ただ最近、慣れてしまったところがあって

 
 

武岡トンネルは全長1.5km。時速50kmで走れば2分ほどで通り抜けられる距離だが、この日は15分ほどかかった。

全長2.3kmの地下トンネル 特殊機械で掘削へ

そんな中、鹿児島東西道路で次に進められているのが、「鹿児島東西トンネル」の整備。

坪内一樹アナウンサー:
こちらは、鹿児島インターから武岡トンネルまでの模型です。現在は武岡トンネルが2つありますが、工事を行っている下りのトンネルの入口は、今あるトンネルのさらに左になります

鹿児島インターから武岡トンネルまでの模型
鹿児島インターから武岡トンネルまでの模型

武岡トンネルと並行する形で、新たに地下を通る全長2.3kmのトンネルを整備し、さらなる渋滞解消を目指す。

 
 

トンネルの整備が計画されているのは、住宅が建ち並び交通量の多い道路の地下。トンネルの出口になる甲南高校近くの現場では、ある機械の組み立て作業が行われていた。

騒音など、周辺への影響を最小限に抑えるための工事に導入される「シールドマシン」。

周辺への影響を最小限に抑える工事に導入
周辺への影響を最小限に抑える工事に導入

シールドマシンは地下を掘り進めるだけでなく、そのまま後方にコンクリートを貼り付けてトンネルを形成していく機能を持つ特殊な機械だ。

坪内一樹アナウンサー:
これはシールドマシンの部品の1つです。これだけでもけっこう大きいですが、シールドマシン自体はもっと大きく、直径が11メートルほど。そうした部品を立て坑から下に降ろしていって、シールドマシンの本体を組み立てます

開通は2030年代 膨大な維持管理費に懸念も

シールドマシンは地下鉄の工事などで使われるが、道路のトンネル工事に投入されるのは九州では初めて。

マシンの組み立てが完了して掘削が始まるのは、早くても2023年春以降で、鹿児島東西トンネルの開通は2030年代中盤となる見通し。

建築と都市計画の専門家からは、長期プロジェクトの現実的な課題を指摘する声もある。

鹿児島大学工学部・木方十根教授:
将来の問題として明らかなのは、膨大な維持管理費が出てくること。鹿児島の場合、トンネルや橋梁など、地形に順応するために特殊な技術で道路を造っているので、メンテナンスがこれから負担になってくる。冷静に状況を見極めながら、道路全体のネットワークを考えることが必要

 
 

鹿児島東西道路の基本ルート決定から24年。プロジェクトは、まだまだ道半ばの状況。

将来的には、人口減少により交通量が減少する可能性もある中、今ある道路と新たにできる道路の意味を考えながら、ビッグプロジェクトを進めていく必要がありそうだ。

(鹿児島テレビ)

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