日本ペット栄養学会の研究奨励金を獲得し、猫に身近な植物15科39種(野草、野菜、果実、毒性植物など)を味覚センサーで比較してみると、イネ科植物だけが特別な味覚的特徴を持つことがわかりました。その特別な特徴とは、「旨味があって苦味が少ない」ことでした。旨味は猫の食事選択に最も強い影響を与える味だと考えられています。

旨味にあふれた猫じゃらし

この研究の中で、どの猫草(イネ科植物)が一番おいしいんだろうな?と思って、いろんなイネ科植物を分析しました。すると、15科39種の植物のうち、ダントツで旨味のある植物は猫じゃらし(エノコログサ)ではありませんか!

(イメージ)
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調べたのはエノコログサ、アキノエノコログサ、キンノエノコロの3種。なんと、人工的に品種改良された果実(スイカ、メロン、バナナ、カボチャ)よりも旨味にあふれていました。一方、代表的な猫草であるエンバクは猫じゃらしの1/3程度。つまり、猫じゃらしはエンバクの3倍旨い。苦味に差なし。猫じゃらしの味を知ってしまったら、そりゃエンバクを食べなくなるわけだ。

初めて猫じゃらしを口にした瞬間、思わず動きが止まってしまった友人の猫。あまりのおいしさに、びっくりしたのかもしれません。SNSでも、猫じゃらしの味を覚えてからエンバクを食べなくなったという声が続々と届いています。猫にとって猫草は、ちょっとしたおやつなのかもしれませんね。

今日もまた、猫の心に寄り添えた気がします。

岩崎永治(いわざき・えいじ)
博士(獣医学)。専門は猫の栄養学。一般社団法人日本ペット栄養学会代議員。麻布大学獣医学部寄付講座ペットケア&ニュートリション研究室特任准教授。

岩崎永治
岩崎永治

1983年群馬県生まれ。博士(獣医学)、一般社団法人日本ペット栄養学会代議員。日本ペットフード株式会社に就職後、イリノイ大学アニマルサイエンス学科へ2度にわたって留学、日本獣医生命科学大学大学院研究生を経て博士号を取得。現在は麻布大学獣医学部寄付講座ペットケア&ニュートリション研究室特任准教授。専門は猫の栄養学。「かわいいだけじゃない猫」を伝えることを信条に掲げ、日本猫のルーツを探求している。〈和猫研究所〉を立ち上げ、SNSなどで各地の猫にまつわる情報を発信している。著書に『和猫のあしあと 東京の猫伝説をたどる』(緑書房)、『猫はなぜごはんに飽きるのか? 猫ごはん博士が教える「おいしさ」の秘密』(集英社)。