『日本の公害の原点』とされる水俣病。5月1日で公式確認から70年となります。1日の慰霊式を前に30日、石原 宏高 環境大臣が初めて水俣を訪れました。
石原 大臣は水俣病の胎児性患者などと面会し、被害者団体と懇談しました。水俣で取材している中原キャスターが中継で伝えます。
(水俣市/中原 理菜 アナウンサー 中継リポート)
水俣湾の埋め立て地にあります環境省水俣病情報センターの前からお伝えします。
こちらの奥には水俣病資料館などの建物が立ち並んでいて、1日はこのすぐ近くで慰霊式が執り行われます。
さて、改めてですが「なぜ水俣病の公式確認が5月1日なのか」といいますと、今から70年前の1956(昭和31)年5月1日に医師が幼い姉妹の症状を「原因不明の神経疾患」として水俣の保健所に届け出たことがきっかけです。
姉妹のうち妹の田中 実子(たなか・じつこ)さんはご存命で、5月3日で73歳になります。ヘルパーによる24時間態勢の介護を受け、命をつないでいます。
1日の慰霊式を前に、30日に石原 宏高 環境大臣が水俣入りし、水俣病の胎児性患者などと面会しました。
水俣病情報センターで行われた患者・被害者団体との懇談は毎年、慰霊式に合わせて行われているものですが、おととし、環境省の職員がマイクの電源を切り、団体側の発言をさえぎったことが大きな批判を呼びました。これを受け、去年から2日間にわたって懇談が行われるようになりました。
石原 大臣は、第一次訴訟の原告らでつくる『水俣病互助会』のメンバーと面会。小児性患者の岩本 昭則 会長は「仲間はほとんど亡くなったり、寝たきりになったりしている」として、ヘルパーなどの支援が不可欠な現状を訴えました。
また、胎児性患者の坂本 しのぶさんは「水俣病は70年たっても何も終わっていない。これからどうやって生活していけばいいのか悩んでいる」と胸の内を明かしました。
支援者たちからも「『地域生活支援事業』を患者の状況に応じて、柔軟に使えるようにしてほしい」など国や県への要望が伝えられました。
【胎児性患者 坂本 しのぶさん】
「ちょっとでいいから私たちの痛みを分かってほしいと思った」
(大臣からの具体的な返答がなかったが?)
「残念だなと思った」
続いて、石原大臣は胎児性患者の金子 雄二さんと面会。金子さんは加齢により水俣病の症状が悪化し、数年前から24時間態勢での介護を受けています。
【加藤 タケ子さん】
「彼が水俣病患者であることを拒否するような水俣市の決断に対して、ぜひ一考してしていただきたいと思っています」
水俣市は、金子さんが申し込んだ市の障害者地域生活支援事業に基づく訪問入浴サービスの利用申請を「原則65歳未満の障害者が対象」という理由で2度却下。現在、金子さんの自己負担となっていて、訪問入浴サービスが利用できるようにしてほしいと改めて大臣に要望しました。
【加藤 タケ子さん】
「『介護保険サービスで訪問入浴を受けなさい』というのは金子さんにとって無残な仕打ちだと思う」
これに対し、石原 大臣は「水俣市の高岡 市長に対し、金子さんからの要望を事務方からすでに伝えている」と述べました。
【加藤 タケ子さん】
「これまでにない、少なくとも私はいい感触だったと思う」
【石原 宏高 環境大臣】
「忌憚のない声を聞かせていただきたい」
続いて、石原 環境大臣は『水俣病胎児性小児性患者・家族・支援者の会』と面会しました。
母親のおなかの中でメチル水銀の被害を受けた胎児性患者の松永 幸一郎さん。16年前から足が不自由になり、症状の重さで決まる補償のランクを『B』から一番重い『A』に変更するよう申請していますが、4回棄却。ことし5回目の申請を行う予定ということです。
同じ胎児性患者で歩行が可能な永本 賢二さんも疑問を呈します。
【胎児性患者 永本 賢二さん(66)】
「僕は1級(A)ですが、彼は1級(A)でないのはおかしい同じ障害なのにどうして差別するのか」
【胎児性患者 松永 幸一郎さん(62)】
「私は胎児性なのに、Bランクはおかしい」
松永さんは大臣に切実な思いを訴えました。
【胎児性患者 松永 幸一郎さん(62)】
「70年目の節目を迎えて年々患者も亡くなる。早く水俣病の問題解決を国はちゃんとしてほしい」
【寺田 菜々海 アナウンサー リポート】
「30日はここまで関係施設などを訪問した石原大臣ですが。患者などからの要望に対して、具体的な答えはありませんでした。これから6団体との懇談が始まります。どのような発言をするのか注目されます」
『水俣病被害者・支援者連絡会』に所属する6つの団体との懇談で冒頭、石原大臣はおととしの『マイフオフ問題』について改めて謝罪し、次のように述べました。
【石原 宏高 環境大臣】
「〈多くの人が長きに渡って水俣病の症状に苦しでいる〉と目の当たりにして、二度と公害を引き起こしてはならないと、水俣病対策の前進に一層取り組んでいかなければならないと決意した」
『水俣病被害者・支援者連絡会』は患者の認定・未認定問わず、立場の異なる団体同士が水俣病問題の一刻も早い解決に向けて団結しようと、10年前に結成。
公健法に基づく患者認定制度の見直しや今年度、国が実施する『健康調査』について中止を求める内容などが盛り込まれた〈共同要求書〉を石原大臣などに手渡し、これに基づいた意見を交わしました。
【水俣病被害者・支援者連絡会 山下 善寛 代表】
「70年たってもなお水俣病は終わっていないこのことは〈なぜだろう〉と環境省や県は考えたことはあるのでしょうか。ぜひ、70年を経てもなお解決しない水俣病問題に前進する方向で前向きな検討をお願いしたい」
【水俣病被害者の会 中山 裕二 事務局長】
「私どもとしては環境省との話が噛み合ってこない。聞き置くばかりで、という認識」
(中原アナウンサー 中継リポート)
石原 環境大臣と6つの被害者団体との懇談は、午後7時まで行われる予定です。
【スタジオから尾谷キャスターが質問】
懇談では被害者団体側から特にどのような意見が出されていますか。
患者認定制度の見直しなど、さまざまある中で国が今年度から行う方針を示したメチル水銀の影響を調べる不知火海沿岸住民の『健康調査』についての意見が相次ぎました。
団体側は「脳磁計とMRIを使う手法では、水俣病の全容解明や住民の不安の解消にはつながらない」などの意見が上がりました。
おととしのマイクオフ問題を受けて、大臣の滞在は2日間に伸びるという変化はありました。しかし、被害者団体側は「療養手当などの増額はあったが、実質的な前進はなかった」と受け止めています。
公式確認から70年の節目の懇談はどれだけ内容のある場となったのか、1日のニュースでも詳しくお伝えします。
1日は午前中に2つの被害者団体との懇談が行われるほか、午後1時半からは犠牲者慰霊式が営まれます。