日本が誇る寺社建築、福岡の地で技を受け継ぐ集団の仕事に密着した。
求められる歴史や宗教の深い知識
福岡市南区の浄福寺。いま、本堂の建設が進んでいる。
複雑に切り込んだ木材同士を組み合わせる『木組み』。釘などを使わずに動かない建物が建っていく。千年以上昔から伝わる技を受け継ぐのが、宮大工の集団『花元建設』だ。

「私は500年、保証したいですね。未来の人にまた受け継いでいってもらわないといけない。今までずっと日本には根付いてるんですから」と話す花元数馬さん(69)は、この道50年の宮大工。かつては京都の銀閣寺や本願寺の修復作業にも携わった、その名を知られる職人だ。

宮大工に求められるのは、大工としての技だけではない。寺社仏閣の修復作業には、歴史や宗教にも深い知識が必要となる。

「勉強が嫌いで、中学を卒業してこの道に入ったのに、毎晩、毎晩、夜の11時頃まで本を開いて『なんで俺はこんなに勉強するのかな』と思った。しかし、分かれば分かるほど段々、段々、楽しみが出てきて」と花元さんは笑う。

実績を積み重ねた花元さん。2022年、築50年ほどの鉄筋コンクリート製の浄福寺本堂の建て直しを任されたのだ。
「パソコンじゃ正確な寸法がでない」
「これは天井裏の写真なんですけど」と浄福寺の佐々木成明住職が示した数葉の写真。

「鉄筋の柱が、かなり傷んで、支えとしては機能していないということで、地震とか大きな揺れが生じると倒壊する危険性もあるということで、木造本堂での建て替えを決意しました」と当時の状況を話す。

花元さん曰く、頑丈に思える鉄筋コンクリートの建物は、腐食するなどして数十年しか持たない。一方、木造の建物は少しずつ修復を続けていけば数百年は大丈夫だという。

古い本堂の取り壊しを始めた4年前。それ以来、花元さんの技を受け継ぐ若い職人たちが柱を1本ずつ刻んできた。そのひとりが一番弟子の松村八潮さん(44)だ。

「すごいプレッシャーです。師匠が今まで建ててきたものが素晴らしい建物ばかりなので、僕が引き継いだとき、その技が廃れないようにしないといけない」と話す松村さん。
「パソコンじゃ正確な寸法がでないんですよ。仕上がりのかたちを頭のなかに叩き込んで、イメージして、どこから曲げるのかとか、どこから木材を隅に向かっていくのか、どれくらいの比率で太くするのかで出来上がりの印象が変わってくる」。
図面1つ描くのも容易ではないのだ。

扱う木材は、1000本以上、木ごとの特性も見極めながら1ミリ単位で削る工程が2年以上も続いた。気の遠くなるような作業が続く。

迎えた2026年の春、漸く現地で柱の組み上げ。そして…。近所の人たちも駆けつけ、本堂の棟上げを祝った。「なんか、こういう特徴的な組み方するのは、見ませんから、いい機会でした」と話す男性。地域の誇りとなる建物になりそうだ。

「2年半、張り詰めて仕事してましたので、やっと棟が上がって気が楽になりました」と話す八潮さん。

愛娘にもやり遂げた仕事を見せることができた松村さん。笑顔が零れる。
全国に僅か100人ほどしかいない宮大工
今後の問題は、修復ができる技を持つ宮大工の育成を続けていくことだが、大工を目指す人自体が危険、きついなどの理由で減ってきていて、高齢化が進んでいる。宮大工の場合、さらに技術の習得に5年、10年と時間がかかるため、現在、京都など古いお寺や神社が多く残る地域を中心に全国に100人ほどしかいない。

浄福寺の本堂の完成は、2026年11月頃の予定。100年、1000年と師匠から弟子へ受け継がれてきた宮大工の技。福岡でもまた1つ、建物を介して未来へ託されていく。
(テレビ西日本)
