宮島観光の“通過点”だった宮島口が、いま変化を見せている。
背景にあるのは、来島者数の増加に加え、ほかの観光地に比べて「欧米系の観光客」が多いという被爆都市・広島ならではの特性だ。環境の問題などもあり、島内への新たなホテル建設に限界がある中、大手ホテルなど各社は宮島口を“新たな宿泊拠点”として注目している。

宮島の対岸「宮島口」に新ホテル開業

世界遺産・厳島神社を擁する宮島には、2025年、過去最多となる496万7481人が訪れた。円安の影響もあり外国人観光客の姿も目立つ。そうした需要を見込み、対岸の「宮島口」で宿泊拠点化の動きが進んでいる。

3月28日に開業した「HOTEL FORK&KNIFE Miyajima」
3月28日に開業した「HOTEL FORK&KNIFE Miyajima」
この記事の画像(12枚)

広島・廿日市市のJR宮島口駅から徒歩7分の場所に2026年3月28日、「HOTEL FORK&KNIFE Miyajima(ホテル フォーク&ナイフ ミヤジマ)」がオープンした。

朱色を基調とし、調度品やアートを配した和モダンな館内
朱色を基調とし、調度品やアートを配した和モダンな館内

館内に一歩足を踏み入れると、そこには非日常の空間が広がる。県内で作られた提灯や、木や石をモチーフにした調度品が、宮島らしい趣を演出。館内の随所に、広島ゆかりの若手芸術家を中心とした彫刻や絵画などが展示されている。

天然温泉の露天風呂付きスイートルーム

5階建て34室の館内には、こだわりの客室が並ぶ。
3階の「潮騒」と名付けられた部屋は、定員4人・50平方メートル。眺望浴室を備え、調度品も選りすぐったモダンな空間だ。あたたかな間接照明に包まれた室内で、窓を開ければ宮島を望むことができる。

広さ180平方メートルのプレミアムスイートルーム
広さ180平方メートルのプレミアムスイートルーム

中でも圧巻なのが、1階のプレミアムスイートルーム。定員4人ながら、広さ180平方メートルを誇る。ベッドルームの先には、ガラス張りの浴室やカウンター付きのキッチン、リビングルームまで備わる。

スイートルーム中央に構える“柱”の正体は?
スイートルーム中央に構える“柱”の正体は?

ひときわ目を引くのが、スイートルーム中央を陣取る太い柱だ。
その柱の扉を、石井百恵記者が開けた。
「実は、サウナなんです!」
柱の内部に設けられていたのは、まさかのプライベートサウナ。

部屋の外には天然温泉を引いた専用露天風呂も
部屋の外には天然温泉を引いた専用露天風呂も

外には宮浜温泉の湯を引いた専用露天風呂もあり、贅沢な空間が広がっていた。

食と学びで「日本文化の価値」を提案

運営するのは、東京に本社を置くGREENING。2024年、広島市中区にレストラン「GARDEN HOUSE」を開業したことをきっかけに、広島や宮島の可能性に魅せられたという。

GREENING・川又祐介 社長
GREENING・川又祐介 社長

川又祐介社長はこう話す。
「瀬戸内の素晴らしい食材が手に入り、被爆都市という歴史的背景もある。広島には国内外から多くの観光客が訪れ、ほかの地方都市や観光名所に比べて欧米系の人が非常に多い。そうした方々に、日本文化の本質的な価値を提案したい」

瀬戸内の食材をふんだんに取り入れたコース料理
瀬戸内の食材をふんだんに取り入れたコース料理

ホテル名「フォーク&ナイフ」の通り、食にも力を入れる。
薪火を使った広島県産の魚や肉など、地元食材にこだわった料理を提供。ミシュラン店で修業したシェフが手がける11品のコース料理でもてなす。

さらに館内には、広島の“平和文化”を伝える空間も設けた。椅子やテーブルに地元・マルニ木工の家具を採用し、広島の技術も発信する。「単に泊まるというだけでなく、“食や学び”がこのホテルならではの体験価値になっていると思います」と川又社長は語る。

宮島口に“上質な宿”が相次いで開業

厳島神社を対岸に臨む宮島口エリアでは、今後も大手ホテルの開業が続く。オープンしたホテルの近隣で、新たに2つの宿泊施設の計画が進んでいる。

宮島(右下)の対岸「宮島口」で進むホテル計画
宮島(右下)の対岸「宮島口」で進むホテル計画

2026年夏、星野リゾートが広島県に初進出し、温泉旅館「界 宮島」を開業予定。12階建てで、54の全客室から大鳥居を望める設計だ。海を見渡す露天風呂では、瀬戸内海と一体となったような絶景が楽しめる。

温泉旅館「界 宮島」で、星野リゾートが広島県へ初進出
温泉旅館「界 宮島」で、星野リゾートが広島県へ初進出

さらに2028年には、ヒルトンが運営する「LXRホテル&リゾーツ」も開業を予定。広島銀行の保養所跡地が、屋外プールも備える約60室のラグジュアリーホテルへと姿を変える。

地域経済を潤す「宿泊拠点」へ

観光客はホテルに何を求めるのか。
イギリス人観光客は「いい部屋、ベッドもバスルームも快適で使い勝手がいいものがいいですね」と話す。

トルコ人観光客
トルコ人観光客

トルコ人観光客の家族は「食事と雰囲気、これらが一番重要よ」「日本の文化に関するすべてが、私たちにとって興味深いものばかりです」と語った。

広島修道大学商学部の川瀬正樹教授は、これまで“通過点”だった宮島口が“宿泊拠点”へ変わる可能性に期待を寄せる。

広島修道大学 商学部・川瀬正樹 教授
広島修道大学 商学部・川瀬正樹 教授

「長く滞在して泊まってもらうことが経済効果としては大きい。宮島口を拠点にして、東は広島、西は山口県の錦帯橋まであります。ホテルができることによって人が集まり、周辺の商店などが活性化して新たな店もできてくる。うまく循環すれば、街づくりとして成功するのではないかと思う」

宮島口がこれから、“泊まりたい街”として新たな存在感を高めていくか、今後が楽しみだ。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。