きょう(4月11日)は全国的に気温が上がり、近畿でも25度を超える「夏日」となるところが出てきそうだ。

今年の春は平年と比べて気温が高い傾向にあるらしい。

4月初旬、20代の知人が熱中症とみられる症状に襲われた。

仕事で2時間ほど野外活動をした後、顔が真っ赤にほてり、嘔吐と異常な発汗があったといい、以前に熱中症と診断された時と同じような症状だったそうだ。

晴天だったその日の気温は20度。経口補水液を飲みながら気を付けて行動していたにも関わらず、だ。

気温20度は、過ごしやすい快適な気候ではないのか?

「身体が暑さになれていない春先は、20度前後の気温でも、状況によっては熱中症の症状が出ることがあります」

と話すのは、熱中症患者の救急医療に携わっている埼玉慈恵病院副院長の藤永剛医師。詳しく話を聞いた。

■油断が引き起こす“春の熱中症”

【埼玉慈恵病院副院長 藤永剛医師】
近年の気候変動で春と秋が短くなり、「夏」と「冬」の“二季化”が進行しています。
その結果、熱中症の発生時期が前倒しになっており、春先から注意が必要です。

春の熱中症は、
(1)体の準備不足
(2)自律神経の乱れ
(3)油断
の3つで起こります。

(1)体の準備不足(暑さに慣れる=「暑熱順化」ができていない)
春先は体がまだ暑さに慣れておらず、“夏仕様”になっていません。
気温が上がった時、発汗や皮膚血流などの体温調節が追いつかず、暑さから体を守る仕組みが十分に働かないのです。

(2)自律神経が乱れやすい
春は1年で最も気温や天気の変動が激しい季節です。
朝晩と日中の寒暖差に加えて、気圧の変化も大きく、気温が急上昇したり寒くなったりが数日ごとに繰り返されます。
さらに、進学・就職・転勤など生活環境が変わりやすく、花粉症による睡眠不足やストレスも重なり、「体温調節」や「水分調節」を担う『自律神経』が乱れやすくなります。

(3)「まだ大丈夫」という油断
春は夏ほど強い暑さを意識しにくいため、水分補給や暑さ対策が遅れがちです。
夏ほど汗をかかないため気づきにくいのですが、水分は汗とは別に呼吸や皮膚からも少しずつ失われており、「のどが渇いた」と感じた時には既に脱水が始まっていることもあります。

つまり、『春の熱中症』は、“真夏ほど暑くないから大丈夫”ではなく、“体がまだ暑さに慣れていない時期だからこそ起こりやすく危険”なのです。

■熱中症は「体調不良」ではなく「炎症性の疾患」

熱中症は単なる「暑さによる体調不良」ではありません。

強い暑さや脱水をきっかけに細胞がダメージを受け、体内で「炎症のドミノ倒し」が始まる病態で、炎症反応が広がると、血管障害や、脳梗塞といった重い症状へと進むことがあるのです。

熱中症における炎症の恐ろしさは「熱が下がっても、一度始まった炎症のドミノ倒しはすぐには止まらない」という点です。

体温が平熱に戻った後でも、数時間から数日間にわたり、血管や臓器へのダメージが続くことがあり、その結果、あとから臓器障害が明らかになったり、後遺症が残ったりといったことが起こり得ます。

「炎症のドミノ」が大きく倒れ始めると、それを完全に止めることは簡単ではありません。

だからこそ、重要なのは「炎症のドミノを倒さない」こと。
炎症を立ち上げないよう、暑さに負けない身体づくりをして頂きたいと思います。

■春と夏では対策の食事も違う! 春はエネルギーと筋肉を増やす食事を

では何ができるのか。身近な食事から見直す方法もあります。

熱中症対策というと、「水分と塩分を取ること」が強調されがちですが、春と夏では食事の役割が少し違います。目的が異なるのです。

「春」は体がまだ暑さに慣れておらず、冬の運動不足で筋肉が落ち、腸の動きも不安的になりがちです。この時期の食事は「夏に耐えられる体を作る」ことが目的です。

まず大切なのは“朝食を抜かずしっかりエネルギーを取る”こと。
エネルギー不足は細胞の回復力を下げ、暑さによるダメージを受けやすくなります。

加えて、卵や豆腐、魚などのたんぱく質を取り、歩く量を増やすなどして“筋肉量を増やす”ことが重要です。筋肉は体内に水分を蓄え、炎症を抑える働きもあるのです。

また、ヨーグルトや味噌といった発酵食品や野菜など取ることで、腸内環境と自律神経が整うと共に、炎症の広がりを防ぐ助けになります。

もちろん、春でも、汗がだらだら流れるような暑い日は、真夏と同じで水分と塩分の補給が大事になります。

■“今からやるべき”熱中症対策

この時期の熱中症を防ぐには「早期の暑熱順化」と「当日(暑い日)の熱中症対策」です。

今年は全国的に高温傾向にあり、季節の進みが早いといわれています。

「暑熱順化」は数日から2週間ほどで効果が出ますから、今から“汗をかく”習慣をつけ、「暑さに強い身体の準備」をすることが大切です。

ポイントは“軽く汗をかく”ことです。
必死に運動などをして大量に汗をかく必要はありません。
ウォーキングや入浴(湯船につかる)、自宅で軽い運動…スクワットや柔軟体操をするのでもOKです。

少しずつ汗をかいて、暑さへのウォーミングアップをしていきましょう。

■“当日やるべき”熱中症対策

気温が急上昇する日は「当日」の対策も必要です。

*天候のチェック(天気、気温、湿度、できれば暑さ指数なども確認する)
*こまめな水分・塩分補給
*涼しい服装、日傘や帽子の使用
*外出時は冷却グッズを携帯
*エアコンは躊躇なく使用
*外出は朝や夕方の涼しい時間帯に など

当たり前のことのように思えますが、この当たり前が大切なのです。
油断せず、確実に行っていただければ十分な熱中症対策になります。

そしてもちろん、前提として日頃の体調管理は大切です。
食事、睡眠、持病がある方はその管理もしっかり気を配ってください。
【埼玉慈恵病院副院長 藤永剛医師】

関西テレビ
関西テレビ

滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。