動物園で多くの人に愛されている、お鼻がなが~い“人気モノ”、「ゾウさん」に、いま異変が起きています。ゾウの飼育頭数の減少しているというのです。

【元ゾウ飼育員】「ゾウをとるのか、他の動物たちをとるのか。ゾウは難しいという判断(をしました)」

ゾウが一頭もいなくなった動物園が今、相次いでいるワケとは?

さらに、そんな中でもゾウの飼育に取り組む動物園の知られざる苦労も…。

(Q.何合炊いてる?)
【飼育員】「土日祝は(コメ)40合、平日になると80合」

ゾウがみられる動物園は、もはや当たり前ではないかもしれません。ゾウから見えてきた変わりゆく動物園の実情を徹底取材しました。

■大阪・天王寺動物園にゾウ3頭が登場 8年ぶりの展示

関西を代表する動物園のひとつ大阪市の天王寺動物園。およそ170種類、1000の動物が飼育されていますが、3月、新たに“人気モノ”がやってきました。それは…。

【記者リポート】「4月、天王寺動物園でデビュー予定のアジアゾウ3頭です」

3月にやってきたばかりのマレーシアゾウ3頭。

【来園者】「なんか“押しくらまんじゅう”してた」

一般公開は4月中旬以降の予定ですが、一足早く、“トレーニング”のため、屋外に出てきたのです。

実は園では8年ぶりのゾウ展示となります!

【天王寺動物園 今西隆和獣医師】「泥遊びが好きなんで…皮膚が弱いので泥パックしている。人間でいうUV・日焼け止めの効果もあるので、彼らはよくするんです」

天王寺動物園ではこの3頭を迎えるために、およそ45億円を投じて、ゾウが快適に過ごせるための国内最大級の“ゾウエリア”を整備。(※都市型動物園で)

【天王寺動物園 今西隆和獣医師】「大阪の動物園として、ことし111年目になります。ゾウ・ライオン・トラは“テッパン”かなと思ってます」

■近畿・徳島では5カ所で16頭 ゾウ飼育頭数の減少

まさに動物園の“顔”ともいえるゾウですが、いま、ある異変が起きています。それは…ゾウの飼育頭数の減少。

現在、日本の動物園で飼育されているゾウの数は、ピーク時の141頭から106頭にまで減っていて、近畿・徳島では5カ所で16頭しかいません。

■ゾウが日本に来るには厳しい条件 「群れ」で過ごせる広い飼育場・繁殖につなげる

一体なぜ減少しているのか。その答えを探ろうと、取材班が訪れたのは、去年7月にアジアゾウ4頭をインドから新たに迎えた、兵庫県の姫路セントラルパーク。

やってきてから9カ月ほどですが、すっかり人気者に!

来園者は「初めてこんな近くで見れたのがうれしかったです」、「ずっといなかったので、興奮モノです!」とゾウを歓迎しています。

姫路セントラルパークによると、ゾウが来てから、来園者は1割ほど増えたそう。

ただ、ゾウを飼育するためには、集客以外の目的も必要で…。

【姫路セントラルパーク 中村温子さん】「研究目的・繁殖目的で入れさせていただいているので、なるべく自然に近い形と、自然に近い食べものを食べさせて、より繁殖につなげていく努力が必要なので」

絶滅危惧種であるゾウは、1975年に発効したワシントン条約で、商業目的での取引が禁止に。海外から日本に連れて来るには、必ず繁殖や研究目的でなければなりません。

また、ゾウの生態にあった「群れ」で過ごせる広い飼育場など、厳しい条件も課されるようになり、姫路セントラルパークでは、5億円かけて飼育スペースを整備しました。

■「米80合」の“おにぎり” ゾウ1頭の食費は1日2万円

飼育自体も一筋縄ではいかないようで…。

【姫路セントラルパーク 中村温子さん】「炊いていた米を蒸らして」

(Q.ゾウがお米を食べる?)
【姫路セントラルパーク 中村温子さん】「インドで食べていたので、そのまま」

(Q.何合炊いてる?)
【姫路セントラルパーク 中村温子さん】「80合です」

なんと作っていたのは巨大なおにぎり!ゾウはエサも規格外です!しかも、インドにいた時と同じエサをあげていて、このお米もわざわざインドから輸入しているのだそうです。

【姫路セントラルパーク 中村温子さん】「スタッフも変わる、お家も変わる、環境も変わる、ご飯変わるじゃかわいそうじゃないですか。ご飯くらいは…。

すべて繁殖につながる栄養素も入ってるので、続けたほうがいいよってインドの方に言われたので、作るのは大変ですけど、頑張って作ることにしました」

ゾウ1頭の食費は1日およそ2万円!さらに展示スペースでは、野生の環境に近づけるため、地面はすべて砂になっています。

■直接口にエサ、新しい砂は10万円 飼育にはきめこまやかな気遣い

毎月新しい砂を入れる必要があり…その額、月におよそ10万円!まさに“大富豪”の生活で、お金の負担も大変そうですが、健康管理にもかなり気をつかうそうで。

ゾウの食事といえば、鼻を器用に使う姿を想像しますが、飼育員は直接、口にエサをあげています。

【姫路セントラルパーク 中村温子さん】「口の中のチェックです。色を見たり歯を見たり。ここまで大きくなると、病院に連れて行くのがまず無理。できる治療が限られている。(病気に)なる前にいち早く気付けるように。うんちの状態、中になにか入っていないか、常に確認しながら集めて掃除している」

金銭的コストだけでなく、飼育員のきめこまやかな気遣いも必要になるゾウの飼育。


■ゾウ飼育断念の動物園「ゾウをとるのか、他の動物たちをとるのか」

そんな中で、飼育を断念した動物園も相次いでいます。取材に応じてくれたのは、岡山市にある池田動物園。

【記者リポート】「入り口はいってすぐのところに、ゾウのイラストが描かれたスペースがあるんですけれども、ゾウの姿は見当たりません」

10年前、インドゾウのメリーが死んでから、ゾウがいない状態が続いています。飼育担当だった清水さんに理由を聞くと…。

【池田動物園元ゾウの飼育担当 清水拓矢さん】「飼育のスペースを確保しなければいけないっていう、それはなかなか難しい」

ゾウ飼育をする場合、そのスペースを少なくとも、いまの10倍に広げる必要があり、その費用は想定で数億円にも上ります。

【池田動物園・元ゾウの飼育担当・清水拓矢さん】「大テントと、隣のキリンのところまでは、最低でも必要ではないかと。ゾウをとるのか、他の動物たちをとるのか…」

ゾウのための施設整備が困難なことから、池田動物園では新たな誘致を断念。ゾウを諦める代わりに、今いる動物たちを“身近に感じられる園作り”目指しています。

■日本国内でのゾウの繁殖 姫センで“希望”が

このままゾウと会える動物園は減ってしまうのでしょうか。

実は姫路セントラルパークでは、ある“希望”が…。

【姫路セントラルパーク中村温子ゾウ担当責任者】「メスが発情して、それにあわせてオスがマウントして交尾にいたるんですけど、今のところマウントまではしてます。もうちょっとで交尾できるところまではいってます」

これまで、あまり例がない日本国内でのゾウの繁殖。成功すれば大きな意味を持ちます。

【姫路セントラルパーク中村温子ゾウ担当責任者】「一度繁殖した個体は、そのあとも繁殖続きやすいし、なるべく若いうちに種付けしないと、発情も止まってしまう事もあるので、そのへん含め結果残せたら…。プレッシャーもある、押しつぶされないようにしないと」

■「大きな動物園でないとゾウは飼えない」 進む動物園の「役割分担」

はたして、今後も日本でゾウは見られるのか。動物園に詳しい専門家は…。

【日本動物園水族館協会 成島悦雄顧問】「ゾウを飼うにあたって複数頭、4~5頭を少なくとも飼って、1頭あたりそれなりの面積が必要とすると、大きな動物園でないとゾウは飼えない」

ゾウの飼育は、大規模な動物園に限って担う一方、小規模の動物園では、日本に生息する動物の保護をするなど、「役割分担」が今後も進んでいくと指摘します。

【日本動物園水族館協会 成島悦雄顧問】「(ゾウの)個体数としては、増えていくかもしれませんけど、ゾウを飼育する施設の数は、おそらく減っていくと思う」

もはや当たり前ではなくなった、ゾウのいる動物園。

動物たちと身近に会える機会を、今後も守っていくことはできるのでしょうか?

(関西テレビ「newsランナー」2026年4月7日放送)

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