近年、急増するクマによる人身被害。2025年度(3月9日時点)の全国の被害者数は死者13人を含む237人で、過去最悪となりました。
 
クマが人里近くまで移動するようになる中、クマの生息範囲の把握が喫緊の課題となっています。
 
クマによる人身被害を最小限に食い止めようと坂井市内の企業がクマの生息状況を把握するシステムを開発しました。川の水から生物のDNAを分析することで、クマの生息状況を把握できるという全国初の取り組みを取材しました。


坂井市丸岡町に本社を構え、全国約350の漁協と提携し川で釣りをする時に必要な「遊漁券」をスマートフォンのアプリで販売している企業「フィッシュパス」は、2022年以降、県立大学などと連携し、川の水に含まれる魚や生物の排せつ物などのDNAを分析することで生息範囲を把握するシステムを開発しました。
    
このシステムを応用し、去年10月からはクマの生息調査に乗り出しました。
  
西村成弘社長は「秋田県の漁協の組合長がクマに襲われて、事前にクマが分かるような技術がないのかと要望を受けて今回の技術を開発した」と経緯を語ります。

どのようにクマの生息範囲を把握するのか…調査の様子を見せてもらいました。
   
吉田圭吾アナウンサー:
「こちらのボトルに川の水を入れて調査するだけでクマの痕跡が分かるという画期的な方法だそうです」
     
この日、フィッシュパスの中谷優基さんと地元漁協のリーダーが、大野市内の複数の川で調査を行いました。
   
1地点あたり約1リットルの水を採取するだけでDNA分析ができ、クマの痕跡も見つけ出せるいいます。
  
中谷さんによると「クマは河川を歩いたり水を飲んだりするので、唾液が水に入ったりクマの毛が落ちたりすることで組織が水に入るため、DNA分析ができる」といいます。

クマの場合、水を採取した場所から上流約1キロ、採取した時間からさかのぼって24時間以内にクマがいたかどうかを把握でき「10地点でこの分析をすることでどの辺りにクマが多いかが分かる。定期的にデータをとることでクマの行動履歴を追い、ある程度未来予測ができるようになると考えている」といいます。
     
調査に協力する大野市漁業協同組合の此下美千雄組合長は「組合としても、クマが出るということで雑魚、渓流釣りの客が減り売り上げが減少するので困っている。クマがいないとか、関係ない場所が示せれば有難い」と話します。

DNA分析は、県立大学の敷地内に設けた専用のセンターで行います。
    
採取した水は、ろか器に通し特殊な薬剤を加えるなどの工程を経て早ければ約3日で結果が分かるといいます。
     
環境事業部の藤田宗也さんに結果を解説してもらいました。「縦軸がDNAの濃度で横軸がPCR検査の回数。23地点調査したうちDNAが検出された7本だけがグラフが立っている状態」

すでに調査が進む秋田県の例では「灰色の×がついた地点がクマのDNAが検出されなかった地点。青い丸がクマのDNAが検出された地点。こちら側の沢では、クマのDNAは検出されていない。隣り合った沢よりは真ん中の沢の方がクマの発生確率が高いことがいえる」といいます。

クマの生息分布を調べる環境DNA調査は、福島県大熊町からも依頼が入りました。
  
西村社長は「我々が分かる環境DNAで未知の生物や自然を数字化、見える化する中で地域固有の課題を解決できると思うので、自治体に向けて技術を発信していきたい」とします。
  
環境DNA分析は、これまでは大学の研究などアカデミックな分野のみの使用でしたが、ビジネスとしても利用価値が増えてきています。
   
今後は川の水だけでなく、空気中に舞っているDNA分析もできないか研究が進められています。
   
元々は魚の生息分布を把握するために開発された環境DNA調査。すでにノシシやアライグマなどでは九州の自治体から依頼があり、あらゆる鳥獣害対策への期待も高まっています。
 
これまでは目視や痕跡に頼っていたクマの生息把握に一石を投じることになるか、注目です。

福井テレビ
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