長野県松本市のボランティア団体が、先日、県外のブリーダーが飼育していた元繁殖犬を保護しました。ここ数年、こうしたブリーダーからの保護が増えているといいます。家族に愛され幸せな余生を過ごしてもらいたい。犬の保護活動と、ボランティアの思いを取材しました。
■行き場を失った元繁殖犬たち
軽快にお散歩をする3匹の柴犬。「まつり」と「かぐら」、そして「ひかり」。名前は1週間前に付けてもらったばかりです。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「よく来てくれたね、ありがとね。大事、大事だよ」
名づけたのはボランティア団体「松本ドッグレスキュー」の代表・池田良子さん。「ある事情」で行き場を失った3匹を保護しました。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「ここ1週間くらいで、別の犬になりました、少しずつ心開いてきてくれて」
■ブリーダー廃業で託された命
3月17日、県内を訪れたのは犬の保護活動を行う千葉県のNPO法人のメンバー。車に積まれていたのは、ケージに入れられた6匹の犬たち。
このうち3匹は小型犬の「ビション・フリーゼ」で、県外のブリーダーが廃業し、保護しました。
そして、残りの3匹は―。
NPO法人ワンコのさとten(千葉)のメンバー:
「産んだばっかりです」
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「産んだばっかりだね。表情が違う」
3匹の柴犬はすべて「メス」で、推定6歳から8歳です。
■「愛情を知らずに生きてきた」
NPO法人ワンコのさとten(千葉)代表・鳥沢裕美さん:
「年齢的に出産できないということで引退したワンちゃんたち」
あるブリーダーが繁殖のために飼育し、出産を繰り返してきたとみられますが、年齢を重ね引退。
そして―。
NPO法人ワンコのさとten(千葉)代表・鳥沢裕美さん:
「私たちの見解ですけど、言い方は悪いですけど販売してお金を稼ぐという考え方ですから、お金がかかることは排除していくという考えなのでは。(NPOの飼育)キャパがいっぱいだったので、『松本ドッグレスキュー』さんに胸を借りて、救うことができました」
ブリーダーが飼育し続ける意思がなくなった犬を保護して命を守る―。
NPO法人ワンコのさとten(千葉)代表・鳥沢裕美さん:
「人間の価値観で仕事をさせられてきて、『楽しい』も『うれしい』も知らないできているので、やっぱり愛されてほしいですよね。愛情をいっぱいもらって穏やかに過ごしてほしい」
■新しい名前 初めての散歩
託された6匹は保護拠点となる松本市の池田さんの自宅へ。
松本ドッグレスキュー・ボランティア:
「疲れちゃったね」
「この子が『まつり』?」
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「『まつり』ちゃん」
「まつり」に「かぐら」、そして「ひかり」。あらかじめ用意していた名前をつけました。
初めての場所に連れてこられた犬たちでしたが、興奮することなく、落ち着いた様子。
散歩に連れ出すことにしました。「まつり」と「かぐら」は軽快です。
カメラマン:
「早い、早いよ」
一方、「ひかり」は微動だにせず、抱っこされての散歩です。
池田さんは、3匹がけんかしないか、心配でしたが―。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「けんかにならないですね」
「大丈夫だからね。よく来てくれてありがとう、幸せになろうね」
■「皮膚病?ひどい…かわいそう」
一方、ブリーダーの廃業で引き取った3匹の「ビション・フリーゼ」。
こちらも4、5歳くらいの繁殖犬で、本来、真っ白な毛並みのはずが、茶色く汚れたまま。
さらに―。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「この犬、皮膚病?これはひどい…かわいそう。これはひどい」
きちんと世話がされていなかった証拠です。
それから1週間後ー。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「『リク』です、お願いします」
見違えるように白く、きれいになったビジョン・フリーゼの3匹。
「リク」「リュウ」「トム」と名付けられ、元気に過ごしていました。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「みんな落ち着いてきたね。抱っこなんてできなかったですよ、最初は」
■「人は怖くない」心開く犬
柴犬の3匹は、すっかりなじんだようで、怖がる様子も見られません。首輪と胴輪をつける間もおとなしく待ちます。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「魔法をかけたわけじゃないけど、人は怖くないって、嫌っていうくらい触るんです。いい子、いい子、って私の方法はそれしかないんです」
3匹そろっての散歩。1週間前は動かなかった「ひかり」も、しっぽを振って歩きます。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「ひかり、すごいじゃん。歩くようになったじゃん」
■法改正で増える引退犬の保護
尊い命を救いたいと保護活動を始めて30年以上の池田さん。以前は保健所や個人で飼えなくなった犬が大半でしたが、ここ数年、ブリーダーからの保護が増えてきていると感じています。
要因の一つは、2021年の動物愛護法の改正です。
ブリーダーの繁殖制限が厳格化し、犬の出産回数は「6回」、年齢は「6歳まで」に制限されました。
動物の健康や安全のためで、池田さんも改正を歓迎する一方、引退犬の扱いが課題であると考えています。
■引退犬も大切な家族
松本市で、個人でブリーダー業を営む小野キミ子さん。
1月にチワワの赤ちゃんが生まれました。
ワンダーハウス・小野キミ子さん:
「元気に育ってくれて、うれしいですね」
35年ほど前から、個人や信頼できるペット販売業者のみに子犬を販売しています。
ワンダーハウス・小野キミ子さん:
「見てて、本当に癒やされますしね。いつもありがとう、っていう気持ちで接してます」
家にいるのは子犬や繁殖犬だけではありません。
ワンダーハウス・小野キミ子さん:
「ゴールデンレトリバーの『蘭蘭』です」
蘭蘭は9歳のメス。これまで3回の出産を経験しました。
ワンダーハウス・小野キミ子さん:
「それはかわいかった。たくさん生まれるから」
繁殖は引退しましたが、蘭蘭は今も大切な存在。最後まで世話をすると決めています。
■最後まで看取るブリーダーも
ほかに、体が小さく繁殖ができなかったトイプードルの「すず」も、高齢者施設の訪問などで活躍しています。
ワンダーハウス・小野キミ子さん:
「やっぱり最後まで見てあげたいと思いますしね。一日でも長く、生きてほしいなと思います」
最後まできちんと世話をするブリーダーがいる一方、そうではない業者もいるのが現実です。
ワンダーハウス・小野キミ子さん:
「本当にそれ(ブリーダー業)を職として、生活の糧にしている人たちは難しい。働いて(繁殖して)ないのにご飯あげて(世話する)というのは難しいかもしれないですね。次の飼い主さんを探してくれるところならいいんですけれど、実態はわからないです」
■「利用されても」救いたい命
ボランティア団体代表の池田さんも、法律の改正で繁殖の年齢や回数が制限され、悪質な業者が引退犬を粗末に扱う話を見聞きするといいます。
一方、自分たちボランティアが保護することで、「ブリーダーが安易に繁殖犬を増やすことにつながるのでは」というジレンマも抱えています。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「私たちは利用されているって思ってますよ。思ってますけれど、雑な扱いにされる一つの個体(犬)があるならば見てられない。やっぱり助けたい。法律が改正されて厳しくなればなるほど、もっと多くなると思うんですよ。それも含めて大きな課題になってくると思います」
今回保護した6匹は、今後、未接種だったワクチンや、避妊手術なども受けさせる予定で、費用は池田さんが賄い、ボランティアが支えます。
また保護犬は、いずれ新たな家族に引き渡す予定で、そのためにも人との暮らしや社会性を身につけさせるのも大事な役割です。
家族に愛され幸せな余生を過ごしてもらいたい―。
池田さんたちは救える「命」と、真剣に向き合っています。
松本ドッグレスキュー・池田良子さん:
「こういう命もあるんだっていう現実を目にして実感してほしい。助けてあげられるのは本当にわずかですね。最後までいい方とご縁をつないであげたい」