倒産が少ない業種の1つとして知られていた動物病院の経営が”冬の時代”を迎えている。背景には要求水準の高まりに伴う飼い主の獲得競争の激化や高度な医療機器の導入による負担の増加などがある。生き残りのヒントはどこにあるのだろうか?

激変する動物病院の経営環境

家族の一員として生活を共にするペット。

健康診断や体調がすぐれない際に頼るのが動物病院だが、近年、その経営を取り巻く環境が大きく変化している。

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ドッグランを利用していた飼い主に話を聞いてみても、「何かあった時に頼りになる専門医療の病院に行きたい」「特殊な病気でも対応してくれる病院だと安心」「意識の高い飼い主が増えた」と、以前よりも要求水準が高まっていることを感じる。

これまで動物病院は倒産が少ない業種の1つとして知られ、東京商工リサーチによると、過去30年、最も多い年でも3件、倒産ゼロという年も13回あったが、2024年度は5件、2025年度は2月までに8件と2年連続で過去最多を更新。

背景には厳しさを増す飼い主の獲得競争に加え、高度な医療機器の導入に伴う負担の増加、さらには人手不足があると言われている。

多角的な診察と付加価値で生き残りへ

開業から19年になる静岡市葵区の「あん動物病院」。

高額な医療機器の積極的な導入には踏み切れない反面、犬や猫だけでなく、爬虫類など一般の動物病院では対象としていないペットの診察も受け入れていて、大石将司 院長は「どこまで高額な機器を取り入れるのかは非常に難しいところ。何から何まで全部というのは難しいので、どうしても広く浅くなってしまうところはあるが、その広く浅くを“メリット”に何でも見ている」と話す。

あん動物病院・大石将司 院長
あん動物病院・大石将司 院長

また、犬のトリミングにも対応することで皮膚病の早期発見につなげていて、大石院長は「他の病院と違う特色は無いよりあった方がいい。そういう部分が今後、生き残る上で大事にしなければいけないところだと意識してやっている」と明かす。

さらに、6年前には殺処分を減らすことを目的に、ボランティア団体によって保護された猫の 里親を見つける保護猫カフェ「猫宿町」を開設。

これまでにおよそ250匹が引き取られ、新たな家族のもとで生活を送っている。

大石院長によれば、動物病院が保護猫カフェを運営している事例は珍しく、来店客がカフェをきっかけに「あん動物病院」について知ってくれたり、里親になった人が飼い主として「あん動物病院」に来院してくれたりと、「動物病院の価値を高めてくれていると感じる」という。

高度医療と専門性で差別化

一方、長泉町にある「動物先端医療センターAdAM」。

その名の通り最先端の治療を提供していて、動物病院でありながら内科、皮膚科、整形外科など7つの診療科を設けている。

掲げる理念は「治癒する可能性がある動物を見逃さないこと」で、小林正行 院長は「一般の動物病院で診断・治療できない病気を受け入れる病院を目指している。静岡県東部地域には、そういう大きな中核病院があまりない」と強調する。

エサの品質向上や技術の進歩により犬や猫の平均寿命が伸びる中、インターネットや生成AIの発達により飼い主側の知識や要求水準が高まっていることもあり、AdAMでは専門的な医療機器を積極的に導入。

最近ではガンで死ぬ犬や猫の割合が増えていることからMRIやCTスキャンといったガンに対応した機器を豊富に揃え、今後は放射線治療の機器も取り入れる予定だが、先々を考えると次なる時代を担う人材の育成は喫緊の課題で、小林院長も「個人の病院で問題なのは、やは後継者がいないこと。今後、動物病院もある程度淘汰されていく時代に入っていくと思う」と見通している。

動物病院の経営が冬の時代を迎える中、それぞれが強みを持つ重要性は言うまでもないが、業界として後継者不足や人材育成にどう向き合っていくのかも大切になってきそうだ。

(テレビ静岡)

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