ビジネスマンの”足元”に変化の波が押し寄せている。コロナ禍やオフィスカジュアルの浸透で紳士用革靴の市場が縮小する一方、スニーカーの需要は拡大。最近では軽装勤務を推奨する自治体も出ている。こうした中、試練の時を迎えた革靴メーカーは新たな取り組みを進めるとともに、質の高い靴の魅力を再発見してもらうことで“革靴文化”の継承を目指している。
ビジネスマンの”足元”に異変?
新年度を迎えるにあたり、就職や転職、異動などでスーツや革靴といったビジネスファッションを新調したという人もいるのではないだろうか?
街で革靴を選ぶポイントをたずねてみると「脱ぎ履きが簡単で、軽くて丈夫なもの」と話す人もいれば、「毎日履くものなので安さ」「良い靴を何足か持って、しっかりと手入れをすれば何年も履ける」と答える人がいるなど、こだわりは様々なようだ。
ただ、ビジネスマンの必須アイテムと言われた革靴にいま変化の波が押し寄せている。
経済産業省の調査によると2025年における紳士用革靴の販売金額は約165億円。
新型コロナウイルスの感染拡大により売り上げが落ち込むと、流行が収束したあとも回復基調には至らず、10年間で100億円以上も販売金額が減少した。

一方、低迷が続く革靴とは裏腹に好調を維持しているのがスニーカーだ。
民間の市場調査会社・矢野経済研究所のまとめでは、2020年度に5735億円だった市場規模は2026年度には7320億円に達する見通しとなっている。

背景にあるのはコロナ禍を経て定着したリモートワークに加え、オフィスカジュアルの浸透。
服装の規定は企業を選ぶ側にとっても気になるポイントのようで、「スーツだと堅苦しいので、ラフな格好の方がいい」「(スーツや革靴の職場は)社内の雰囲気が柔らかくないのかなと思ってしまう」と答える就活生もいた。
自治体も推進 広がる軽装化
こうした中、静岡市役所では1月から職員の働き方改革や脱炭素社会の実現を目的に、ノーネクタイ・ノージャケットなど軽装での勤務を推奨する取り組みを試行している。

市職員に話を聞いてみると、「ラフな格好で動きやすく、仕事のしやすさにもつながっていると思う」「市民と接する時に公務員は堅苦しいイメージがあるものの、カジュアルになったことで親しみやすさも増したのかな」など好評のようだ。

もちろん、仕事柄、市民からの信頼を損なわない服装を個々人が考えることとの条件付きではあるが、スニーカーでの勤務も許されていて、静岡市人事課の小久保定男 係長は「派手なスニーカーは当然認めていないし、地味なものであればオッケーかなというところで、いろいろ検討した中で判断した。働きやすい職場、職場の魅力度を上げることによって静岡市で働きたいと思う若者が増えてもらって、公務員志望、静岡市を志望する人が増えてくれればいい」と期待を寄せる。
革靴とスニーカーの融合
焼津市にある革靴メーカーのサンレイ。
レイマ―というブランド名で革靴の製造・販売を手がけ、質の高さには定評がある一方、大石裕介 代表は「コロナ禍が明け、段々とカジュアル化が進んできた中で、私たちが“THE革靴”、本当の紳士靴というものを提案しても『いま持っている』という人も多いし、『履かなくなった』と言われるのがグサグサ胸にくる」と、近年、業界全体の苦境を肌で感じると言う。

そこで、3年ほど前から力を入れているのがビジネスシーンでもカジュアルな場面でも 着用可能なレースアップドレススニーカーの開発・製造だ。
靴の成型はオーダーメイドの革靴と同じように手作業で行い、革靴ならではの立体的な履き心地を楽しめる一方、靴底には耐久性の高いスニーカータイプのソールを用いるなど、従来の革靴とスニーカー双方の長所を組み合わせた。

大石代表によれば、内側も含めてすべて牛革を使っているのが特徴で、蒸れにくく、革靴の機能がそのままスニーカーに入っているイメージで、「スポーツ系のスニーカーだとソールが”ゴツゴツ”したデザインになるので『ビジネスでは使いにくい』というのがお客さんの正直な声。フラットソールにすることでスーツにも合いやすく、シンプルなデザインにするという点を大切にしてる」と話す。
伝統を次世代へ 革靴の未来は?
とはいえ、冠婚葬祭を中心に革靴が必要とされる場面は今後も無くならないだけに、こうしたレースアップドレススニーカーを通じて高品質な革靴の良さを再発見してもらいたいという思いも抱いていて、「このスニーカーをきっかけに、しっかり作られている靴は良いものだと気づいてほしい。その先にもう一度革靴に戻るというような、革靴の良さにも気づくきっかけになったらすごく良い」と前を向く。

サンレイの開発コンセプトは「最高の革靴を身近に長く楽しく」。
ビジネスファッションが変化する中でどう生き残っていくのか?
時代のニーズをとらえる研究心と向上心で、次の時代の革靴の在り方を模索する挑戦は続く。
(テレビ静岡)
