「サブスクの設定に煩わしさを感じるお客様も一定数いる」——そう語るのは、鹿児島県鹿屋市のレンタルビデオ店の副店長だ。動画配信サービスが急成長を遂げる中、街からレンタルビデオ店の看板が消えつつある。しかし、すべての店が時代に飲み込まれているわけではない。取り扱い規模が日本最大級ともいわれる店舗が、鹿屋市に存在する。
市場規模は最盛期の3分の1以下に
映像ソフト市場の統計を見ると、レンタル市場の縮小は数字にはっきりと表れている。2007年には3600億円以上あった市場規模は年々減少を続け、2021年にはついに1000億円を下回った。

一方で、NetflixやAmazonプライムビデオなどに代表される有料動画配信(サブスクリプション)サービスの市場規模は、統計を取り始めた2013年以降、右肩上がりで急増。特に新型コロナウイルスによる巣ごもり需要が追い風となった2020年以降の伸びは顕著で、2024年の市場規模は6000億円を超えた。今や映像ソフト市場の大黒柱となるほどの急成長ぶりだ。
街の声もこの流れを裏付ける。
「昔はよくTSUTAYAとか行っていた。最近はない」(20代)
「今はNetflixで見ている」(30代)
「プライムビデオとかで見ている。便利です」(10代)
10万点超えの取り扱い規模、日本最大級
そんな逆風の中、鹿屋市にあるブックスミスミ鹿屋店は、DVD・CD・漫画などのレンタル作品を10万点超えの規模で扱っている。この取り扱い規模は、日本全国で見ても最大級だという。
平日の開店直後から、お客さんが続々と来店する。この日はレンタルDVDを税込110円で借りられるクーポンが配信されていたこともあり、賑わいを見せていた。
「1日だいたい2本見る。100均になったときに借りる」「毎週5本借りる。10代から20歳くらいの時の作品を見つけて借りている。同じ作品を3回転も4回転もしている」
客それぞれに、レンタルビデオ店を利用する理由がある。

サブスクにない作品を求めて来る客も
ブックスミスミ鹿屋店の大園翔平副店長は、店の強みについてこう話す。
「特に、アジアのテレビドラマシリーズをまとめて借りる客が多い。配信されていない作品も店舗にある。そういう作品を求めて来店する客もいる」

サブスクでは視聴できない旧作や、配信契約が結ばれていない海外ドラマなど、物理メディアだからこそ手に取れる作品が存在する。これがレンタルビデオ店ならではの差別化ポイントになっている。
とはいえ、現状の厳しさは大園副店長も認める。「店舗に来店しなくても家で動画を視聴する環境が広がり、以前と比べると、サブスクリプションにシフトする客も多い」。
「ネイルサロン」を店内に導入し、来店動機をつくる
そこで同店が打ち出した新たな一手が、2024年5月にオープンした「ネイルサロンTN ブックスミスミ鹿屋店」だ。幅広い年齢層の客が店を訪れるきっかけをつくることが狙いで、オープンから約2年が経った現在、1日20人ほどの利用があるという。
レンタルDVDを目的としない層も含め、まず「来てもらう」ことで接点を増やす——時代の変化に対応しながら、店の存在感を維持しようとする試みだ。

懐かしい思い出とともに、今も「そばにある」存在
レンタルビデオ店には、世代を超えた記憶が詰まっている。
「ジャッキー・チェーンが好きでアクション物をよく借りていた。月に10本くらい借りていた」(60代)
「子どもが小さいので、『おジャ魔女どれみ』などを借りていた」(60代)
かつては数少ない娯楽の選択肢だったレンタルビデオが、今は数ある選択肢のひとつになった。そうした状況の中で、大園副店長は自分たちの役割をこう定義する。
「サブスクリプションの設定に煩わしさを感じるお客様も一定数いる。そうしたお客様に喜んでもらえるようにサービスを提供したい。お客様と商品の仲人のような、巡り合わせるのが私たちの役割だと思う」
市場の縮小が続く中でも、工夫を重ねながら地域に根ざす場所であり続けようとするレンタルビデオ店の姿がそこにある。
(動画で見る▶「配信にない名作がここにある」 レンタルDVD10万点の店が示す生き残り戦略)
