東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた岩手県大船渡市。事務所や工場を失った水産会社が再起をかけて立ち上げたのが「魚の駅大船渡」だ。復興の歩みの中で誕生したこの施設は、港町ならではの新鮮な海の幸を堪能でき、多くの人が訪れている。
震災からの再出発
「魚の駅大船渡」を運営する大力水産は、東日本大震災で津波の被害を受け、事務所や工場を失った。
大力水産の及川剛代表取締役は「あのときは、やめるという選択肢はなかった。どうすればいち早く復興できるか、震災のその日からそれだけを考えていた気がする」と振り返る。
その強い思いが、会社再建と施設開設の原動力となり、震災を乗り越えて誕生したのがこの施設だ。
魚の魅力を一杯に
施設の看板メニューは海鮮丼だ。
料理長の紀室修さんは「その日その日、魚を見て、今日はこれをお客さんに喜んでもらおうと考えています」と話し、その日いちばんおいしい魚を彩りよく盛り付ける。
観光客には大船渡の魚を、地元客には全国から集まる魚を味わってもらいたいという。
海鮮丼に添えられるあら汁も、この店の魅力の一つだ。
数種類の魚のアラを使い、うまみを存分に引き出した贅沢な味わいだ。
港町の定番料理
ここでは、港町ならではの魚料理も楽しめる。
日替わりで提供されるメカジキのカマの煮付けは、脂ののった身を甘辛く仕上げた人気メニューだ。
料理長の紀室さんは「メカジキは脂が多く、焼くと臭みが増してしまうので、焼くより煮た方がおいしい」と話し、魚の一番おいしい調理方法で提供している。
炉端焼きコーナーでは、キチジやマダイ、メバルなど旬の魚を炭火でじっくり焼き上げる。
炭の香りをまとった魚は、身がふっくらと仕上がり、素材の味を引き立てる。
イカゲソのポッポ焼きは、オリジナルのたれで味付けされ、店内には香ばしい香りが広がる。
記憶に残る場所へ
新設された屋台風の総菜コーナーには、カキやアジ、ゲソなどの揚げ物が並び、その場で味わうこともできる。
さらに、新メニューの「くじら汁」も登場。クジラ特有の香りと深いコクのあるスープに、大根やシメジ、ゴボウなどを合わせた一品。鍋から自分でよそうスタイルが好評だ。
「魚の駅に来て良かったという思い出の一つになる、感動を与えられる料理を出したい」。紀室さんの言葉には、復興への思いがにじむ。
四季折々の魚の魅力を伝える「魚の駅大船渡」は、震災復興の歩みとともに、港町の今を伝える場所として、これからも人々を迎え続ける。
