「たのしみは」で始まり「とき」で終わる52首の短歌「独楽吟」が代表作として知られる幕末に生きた福井藩の歌人、橘曙覧。150年が経った今でも曙覧の歌が愛される秘密に迫ります。
「たのしみは 朝おきいでて 昨日まで 無かりし花の 咲ける見る時」
日常の小さな幸せを詠んだ橘曙覧の代表作、独楽吟の1首です。この独楽吟は明治時代の歌人・正岡子規からも絶賛され、1994年には当時の天皇皇后両陛下がアメリカを訪問された際にクリントン大統領が歓迎スピーチで引用したことでも知られています。
時代を超えて愛される曙覧の歌。その魅力にとりつかれた一人が、福井市橘曙覧記念文学館の学芸員、内田好美さんです。
「サラッと読んでしまうとなかなか気づきにくいが、読めば読むほど魅力を感じる作品もあるし、考えさせられるというか…人として魅力がある人物なんじゃないかなと思っている。だんだん分かってくると面白くて、魅力の一つ」
今でこそ曙覧を敬愛してやまない内田さんですが、学芸員になったばかりの時は名前を知っている程度だったと言います。
そこから25年の歳月をかけてその功績や魅力を学んでいきました。
「入ったときはまだまだ理解が及ばないところがあったが、何度も作品に触れたり、曙覧の研究会の皆さんと何度も作品を詠んでいく中でそこにある歌の魅力を感じるようになり、曙覧のことをもっと深く知っていきたいなと思った」
休日も返上し曙覧の研究会に参加するなど、誰よりも勉強を重ねてきた内田さん。記念館には、その知識を求めて訪れる人も多く、地元の小学生にガイドもしています。
小学生から「なんで書いたの?」と問われた内田さん。「難しい質問だね。本当の意味は曙覧に聞いてみないと分からないけど、短歌、和歌で自分の気持ちを表現したかったのでは」と曙覧の心境に思いを馳せます。
内田さんのガイドは小学生にもわかりやすいと評判で、時には外国人観光客を相手にすることもあります。
「ウクライナからの留学生の方が来られたり、どこで知り合ったのだろうと思うが…福井の人が思っている以上の広まりを、曙覧の歌は持っている。福井の宝だと言ってくださった人もいる。海外にも広まっている独楽吟というものをまだまだ皆さんに詠んでもらい注目してもらえたら」と話す内田さん。この記念館を、曙覧好きの交流拠点にするべくこれからも様々な取り組みを進めます。