宮崎県の農畜産業界で長年の経験と勘に頼ってきた伝統的な手法が、最新のデジタル技術によって劇的な変革を遂げている。「効率化」と「技術継承」という喫緊の課題に対し、AIやセンサーといった革新的なツールが導入され、現場の課題解決に貢献。日南市のマンゴー農家では土壌センサーを活用してデータに基づいた精密な栽培に挑み、宮崎大学ではAIと画像処理技術で牛の健康管理から出産予測までを可能にするシステムを開発している。これらの取り組みは、職人の経験をデータという裏付けに変え、次世代へとつなぐ宮崎農業の新たな道を切り開いている。

マンゴー栽培にデータ活用

宮崎県の農業は現在、デジタル技術によって劇的な変革期を迎えている。

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日南市南郷町のマンゴー農家、河野俊昭さんは、4棟の農業用ハウスで年間約2万個のマンゴーを栽培する。河野さんは約1年前、土壌の温度や水分量などを測定する持ち運び可能なセンサーを導入した。

河野さんはセンサーで数値を確認しながら、「pHが少し高いかと思っていたが、ちょうど良い数値だ」と話す。

これまでの管理方法について、河野さんは次のように語る。

マンゴー農家 河野俊昭さん:
現状、ほとんどの農家は昔ながらの勘に頼っている。自身の勘も悪くはないが、数字で見ると“違う”と感じることもある。

土壌の状態を知るには、これまで土のサンプルを外部機関に提出し分析結果を待つ必要があったが、導入したセンサーによって、土に刺すだけで水分量や土壌温度、酸性度といった項目を「その場で」確認できるようになった。

河野さんは、ハウスの場所やマンゴーの樹、一本一本の性質の違いをデータで把握することの重要性を感じている。こうしたデータの蓄積は、効率化だけでなく将来を見据えた取り組みにもつながる。

マンゴー農家 河野俊昭さん:
こういうのを蓄積していくと、自分も人に教えていくときに、数字化で言えるかもしれない。事業継承もだが、生産者に教えていくのにも活用されていくんじゃないかと思う。

AIで牛の健康管理・出産予測

一方、畜産分野では農工連携による研究が進められている。

宮崎大学工学部のティティズイン教授が取り組んでいるのは、AIと画像処理技術を用いた牛の健康管理観察システムだ。

牛の肉付きの指標は脂肪の蓄積具合から健康を測る重要なもので、これまでは目で見て確認、経験に頼ってきた。

宮崎大学工学教育研究部 ティティズイン教授:
1頭ずつの個体管理につながる、エサを食べる量や時間、行動など全てが把握できたり、牛が歩くときに痛いかどうかも画像で分かる。牛の脂肪も分かる。農家が知りたいデータをカメラ情報で解析してAIで管理できるシステム。

解析データはパソコンやスマートフォンでリアルタイムに確認でき、24時間体制で健康状態を追跡する。

さらに今年度からは、総務省のプロジェクトとしてAIによる牛の出産予測と難産の早期検知が始まった。カメラは、出産前に落ち着きがなくなる牛の様子を映し出す。農学部の教員の長年の経験が開発に生かされ、システムに落とし込まれた。

宮崎大学工学教育研究部 ティティズイン教授:
アラームが出てきたり、実際に現場へ行く必要があるときだけ行くことになって、それ以外は分娩が近くてもずっと24時間待つ必要もないので、農家の負担も減って、安心して農業を続けられるということを期待している。

このプロジェクトでは、スマートグラスを用いた獣医師による遠隔診療や、牛ごとのデジタルカルテの構築も目指す。

こうしたシステムの普及が、若い世代と農業をつなげるきっかけになるのではないかと、ティティズイン教授は期待を寄せる。人手不足がデジタル化によって解消されれば、宮崎の農業を次世代へつなげる鍵となるだろう。

(テレビ宮崎)

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