奈良の“シンボル”といえば、1300年以上の歴史をもつ鹿。神の使い“神鹿(しんろく)”として大切にされてきた存在が今、奈良公園の外へ、そして奈良県の外へと大移動を始めています。

関西テレビ「newsランナー」取材班は鹿の足取りを追跡。

ついにきょう=17日、“大移動”したとみられるシカの姿を、東大阪市内でカメラにとらえることに成功しました。

この“大移動”の背景には「奈良公園の過密化」がありました。

■「50年以上住んでますが、初めてです」

奈良公園の鹿は天然記念物に指定されていて、行政を中心に保護・管理が行われてきました。

人懐っこく、観光客にせんべいをねだる姿は奈良を代表する光景です。ところが最近、その鹿が公園の外で次々と目撃されているというのです。

取材班がまず向かったのは、JR奈良駅から西方面に2キロ以上離れた住宅街。

空き地でくつろぐ2頭のオス鹿を発見しました。

土地の持ち主だという女性は「3週間くらい前からかな。初めはびっくりしました。私ここに50年以上住んでますけど、初めてです」と語ります。

最初は1頭だったのが、2頭に増え、しかも「あんまり仲いいことない。『ツンツン』って」と、2頭の微妙な関係もちゃっかり観察済みでした。

専門家によると、2頭とも角が人間に切られた跡があり、奈良公園から移動してきた個体とみられるとのことです。

■バスを止めた6頭の群れ、奈良公園から10キロ以上

さらに衝撃的な動画を取材班は手に入れました。

先週火曜日の午前7時ごろ、奈良市・帝塚山の住宅街で撮影されたもので、6頭の鹿が車道を堂々と歩き、路線バスが立ち往生しています。奈良公園からゆうに10キロ以上離れた場所です。

目撃した地元の男性は「6頭の団体を見たのは生まれて初めて」と驚きを隠せない様子。鹿はその後、さらに西へと向かったといいます。

■生駒の山を越えて、大阪へ

取材班は鹿の行方を追って奈良県生駒市へ。

住民への聞き込みを続けると、「閉店したスーパー付近で1頭を見た」という情報が。さらに近くのパン屋の店員が決定的な証言をしてくれました。

【店員】「先週の火曜日に、もう1人のパートさんがレジしたはって、『鹿が通った!』って言ったんで、みんなで慌てて見に行きました。ここの前を通り過ぎていった。6頭」

取材班が入手した動画には、優雅に道路を整列して横断する6頭の姿。

撮影日時は3月10日の午前9時ごろ、帝塚山の動画からおよそ2時間後のことです。

「どこから来たん」…動画を撮影した人の声が思わず漏れています。

店員によると「石切の方に行ったという情報が2人ぐらい聞いてはるみたい」とのこと。

鹿たちは生駒山を越え、奈良公園からおよそ20キロ離れた東大阪市・石切へと向かったとみられます。

■「そこの公園!」東大阪・石切でも痕跡を発見

石切神社付近で聞き込みを始めると、すぐに有力情報が集まってきました。

【石切の住民】「鹿が出たっていうのは聞いて」「そこの公園!」

近くの公園に2頭が出没したというのです。

公園に向かうと、地面には鹿の毛と思われるものが大量に抜け落ち、足跡らしきものも残っていました。

その後の調査で、2頭のうち1頭は警察や猟師に一時保護され、もう1頭は山の方へ逃げたということです。

そして3月17日、取材班が東大阪市で鹿のゆくえを探していると、午後5時ごろについにカメラが1頭の鹿をとらえました。

【記者リポート】「今、大阪に1頭の鹿がいました。こちらを向いています。角が少し生えていて……」

東大阪市の布市町。畑のあたりでゆっくりと休む鹿の姿が!

行政などによると「もともと生駒山に野生の鹿はいない」ということで、奈良公園からやってきた可能性が高いとみられています。

■「過密になってきてる。はじかれる鹿が増えてる」

なぜ今、鹿がこれほど遠くまで移動しているのか。

奈良公園の鹿の保護・管理を担う「奈良の鹿愛護会」の中西康博副会長に話を聞きました。

取材班が追いかけていた鹿の映像を見せると、「うちで角切った鹿でしょうね。奈良公園にいてた鹿であることは間違いない」と即座に断言。

そのうえで移動の理由をこう語ります。

【奈良の鹿愛護会 中西康博副会長】「奈良公園が鹿にとって一番安全安心。だから、好んで奈良公園から出ていく鹿は基本いません。芝生・どんぐりの状況を見ると、いまの頭数を養えるだけの供給源がない。過密になってきているので、はじかれる鹿が増えている」

奈良公園の鹿の数は2025年、前年より140頭多い過去最多の1465頭を記録しています。この数は「異常」だと愛護会は言います。

では、なぜここまで増えてしまったのか。その原因は、観光客の行動にあるといいます。

鹿せんべい以外の食べ物や、食べ残しを観光客が与えることで鹿の栄養状態が改善され、餓死が減少したというのです。

取材中にも、外国人観光客が銀色の袋から取り出したものを鹿に与える場面が目撃されました。

■天然記念物が「管轄外」に出てしまったら

一度増えた鹿の頭数を管理することは、非常に難しいとも中西副会長は指摘します。

【奈良の鹿愛護会 中西康博副会長】「遠いとこまで行っちゃった鹿とかは、我々の管轄外にはなるんですけど、でも天然記念物なんすよね。奈良市にいる間はまだ。許可なく保護管理行為ができない。なんとかこの形でお互いがギリギリのとこで踏みとどまってくれたら」

天然記念物という法的な立場があるがゆえに、勝手に捕獲することも管理することもできない。愛護会の”管轄”は奈良市内に限られるため、大阪まで来てしまった鹿に対しては、ほとんど手が出せないというのが現実です。

(関西テレビ「newsランナー」2026年3月17日放送)

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