『量から質へ』と国の保育政策が大きく変わる中、自分の子供の保育園が閉園となったことをきっかけに、元看護師の女性が、自ら保育園を立ち上げることを決断。『1日をどう過ごすかを子供たち皆んなで考える』ユニークな教育を実践する保育園を取材した。
「ないなら自分で作ればいい!」
訪ねたのは、福岡・朝倉市秋月にある認可外保育園『かてて』。園長の大崎愛さんが出迎えてくれた。

熊本県出身の大崎さんは、かつて精神科の看護師として働いていたが、結婚を機に福岡へ移住。その後、自分の子供を預けていた保育園が閉園することになり、大きな転機を迎えたと話す。

「通っていた保育園が『閉園をします』って決まったのが4年ぐらい前。毎日外に遊びに連れて行ってくれたり、夏は川に行かせてもらえる保育園は、なかなかなくて…。どうしようかと思っていた時に、『自分で保育園を作ってもいいのかな』」と思ったと大崎さんは振り返る。

子供達には「自然の中で、のびのび過ごして欲しい」。しかし、理想とする保育園が近くに無いと知り「無いなら自分で作ればいい!」と一念発起。10年前に閉園した保育園の跡地を活用し、2025年4月、『保育園かてて』をスタートさせた。

『1日の予定』園児が自由に決める
大崎さんの保育園には、0歳~6歳までの11人が通い、保育士6人で子供達を見守っている。園内では、年齢に関係なく全員が同じクラス。

特徴的なのは、当番の園児が、出欠確認などに加え、『その日のやりたいこと』を子供たちが話し合って決めることだ。

当番の園児が、「きょうしたい事、何ですか?」と尋ねると、一斉に園児たちが「はい!」と元気に手を挙げる。名前を呼ばれた園児は、「リズム!」「お散歩で、ツクシを取りに行きたい!」などと自由に発言していく。

ひとしきり意見が出尽くすと、当番の園児が「まとめます!」と言って、「最初はリズムをやって、次にお散歩でつくしを取りに行って…」などと、1日の予定を決める。この教育方法こそが、最も大切にしていることだと大崎さんは語る。

「ある種、自己実現だと思うんです。小さい子だけど、その中にある『これがしたい』が大人になったら、もっと大きなことになっていくんじゃないかなと、私の中では思っていて、それで見守っています」。

急な予定変更にも臨機応変
時には園を飛び出して川に遊びに行ったり、山菜を採ったりもする園児達。自然とのふれあいも大切にしている。

急な雨でその日の予定が中止になることもある。そんな時でも園児達は動じない。「雨降ったけんさぁ、次は自由遊びでいい?」とその日の当番の園児がみんなに呼び掛けると、「いいよ!ホールで遊びたい!」と臨機応変に対応する。

こうした自主性を大切にする背景には、園長の大崎さんの看護師時代の経験があるという。

「入院している患者さんも、それまでできなかったことにチャレンジして、ちょっとできた。また次の日、ちょっとできた。その積み重ねが自信になっていくのを見ていたので、小さい時からたくさん遊んで、食べて、たくさん笑える経験があったら、将来、仕事に就きたいなと思った時に、すっと役に立てる体と心ができていたら1番いいのかなと思って」。
給食も臨機応変 食育しっかり
子供達が、遊びに夢中になっている間、給食室では、給食の準備が進められていた。実は、給食づくりもユニークだ。

「例えば、きょう、散歩でツクシ見つけてきたら、散歩から帰ってきた瞬間、ここに来て『これ料理して』って言うんですよ。だから、食べるものと作ることが、全部繋がっている」と調理担当の菊池美穂さんは笑いながら話す。

給食は献立を決めず、その日、手に入った旬の食材で作る。この日のメニューは、『ほうれん草と里芋とレンコンボールと味噌汁』。レンコンボールは、特に、子供達に人気だ。

「1日3食のうち、1食を保育園で出させてもらえると思ったら、やっぱりこだわりた。全体のバランスと子供達の毎日の体調に合わせて、献立を考えるようにしている」と大崎園長は、食育の重要性を強調する。

給食の後、雨が止み、園庭で元気に遊ぶ園児達。楽しそうな子供達を眺めながら大崎園長は、園の名前の由来を語る。

「保育園かててというのは、『か~て~て』という筑後地方の方言で、『仲間に入れて」と言う意味。この地域で育てて頂けるよう園を知ってもらいたい。そして、いろんなことを『“かてて”いけたらいいな』」と未来のビジョンを語った。
(テレビ西日本)
