今から7年前の平成31年2月24日に開催された上皇さまの天皇陛下在位三十年の祝賀行事。ご退位までおよそ2カ月となる上皇さまは、戦争が無かった「平成」という時代を振り返り、美智子さまが詠んだ一首の和歌を引用し、「平和」への思いを述べられた。平成31(2019)年3月3日放送「皇室ご一家」(第1991回 天皇陛下 御在位三十年記念式典)を振り返る。

なお、本記事は当時のナレーションをそのまま記載。現在の上皇ご夫妻を「天皇皇后両陛下」などと記載する。

在位記念記帳と皇族祝賀

2月24日、皇居では天皇陛下の即位三十年の祝賀行事が行われました。

平成31(2019)年2月24日 即位三十年の祝賀行事が行われた皇居
平成31(2019)年2月24日 即位三十年の祝賀行事が行われた皇居
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一般記帳には、皇居におよそ8000人、全国の御用邸などを合わせると1万2000を超える人々が記帳に訪れました。

宮内庁前に設けられた記帳所
宮内庁前に設けられた記帳所

天皇皇后両陛下は、皇居宮殿で皇族方から祝賀の挨拶を受けられました。

皇太子ご夫妻から祝賀を受けられる天皇陛下(皇居・宮殿)
皇太子ご夫妻から祝賀を受けられる天皇陛下(皇居・宮殿)

皇太子さまが「ご即位30年心からお祝い申し上げます」と述べられると、陛下は「どうもありがとう」と応じられました。

秋篠宮ご夫妻から祝賀を受けられる天皇陛下(皇居・宮殿)
秋篠宮ご夫妻から祝賀を受けられる天皇陛下(皇居・宮殿)

続いて、秋篠宮ご夫妻をはじめ皇族方からのお祝いを受けられた両陛下は、笑顔で応えていらっしゃいました。

天皇陛下御在位三十年記念式典

この日の午後、両陛下は東京・千代田区で行われた「天皇陛下御在位三十年記念式典」に臨まれました。政府主催のこの式典には、各界の代表者などおよそ1100人が出席しました。

天皇陛下御在位三十年記念式典(東京・千代田区)
天皇陛下御在位三十年記念式典(東京・千代田区)

式典では、沖縄出身の三浦大知さんが陛下作詞、皇后さま作曲の「歌声の響(ひびき)」を披露しました。

「歌声の響」を歌唱する歌手・三浦大知さん
「歌声の響」を歌唱する歌手・三浦大知さん

《♪「歌声の響」 歌詞》
だんじよかれよしの 歌声の 響
見送る笑顔 目にど残る

 
 

この歌が作られた背景にはこんなエピソードがありました。

両陛下は皇太子時代の昭和50年、皇族として戦後初めて沖縄県を訪問し、ひめゆりの塔に拝礼されました。

昭和50(1975)年7月 ひめゆりの塔にて(沖縄・糸満市)
昭和50(1975)年7月 ひめゆりの塔にて(沖縄・糸満市)

この時、火炎瓶が投げられる事件がありましたが両陛下は、予定通り日程を続けられました。

過激派が投げつけた火炎ビンで炎上する献花台
過激派が投げつけた火炎ビンで炎上する献花台

その翌日、名護市にあるハンセン病の国立療養所「沖縄愛楽園」を訪問された両陛下。在園者一人ひとりにお見舞いの言葉を掛けていらっしゃいました。そしてお帰りの際、在園者たちからある歌が沸き起こったのです。

昭和50(1975)年7月 国立療養所 沖縄愛楽園をご訪問(写真提供:沖縄愛楽園自治会)
昭和50(1975)年7月 国立療養所 沖縄愛楽園をご訪問(写真提供:沖縄愛楽園自治会)

その歌は、船出を祝う意味の琉球民謡「だんじょかりゆし」。このときの情景に感銘を受けられた陛下は、のちに沖縄に伝わる「琉歌」を詠まれました。その琉歌に皇后さまが曲を付けられたのが「歌声の響」です。

(写真提供:沖縄愛楽園自治会)
(写真提供:沖縄愛楽園自治会)

《♪「歌声の響」 歌詞》
だんじよかれよしの 歌や湧上がたん
ゆうな咲きゆる島 肝に残て

「歌声の響」を歌唱する歌手・三浦大知さん
「歌声の響」を歌唱する歌手・三浦大知さん

長い年月、沖縄と沖縄の人々に心を寄せてこられた両陛下。陛下は、じっと耳を傾けられ、皇后さまは、大きな拍手を送っていらっしゃいました。

歌手・三浦大知さんに拍手を送られる両陛下
歌手・三浦大知さんに拍手を送られる両陛下

《天皇陛下 おことば》
「即位から30年、こと多く過ぎた日々を振り返り、今日(こんにち)こうして国の内外の祝意に包まれ、このような日を迎えることを誠に感慨深く思います。 平成の30年間、日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちましたが、それはまた、決して平坦な時代ではなく、多くの予想せぬ困難に直面した時代でもありました」

 
 

おことばの中で平成の時代を振り返られた陛下は、最後に皇后さまの和歌を引用し、締めくくられました。

《天皇陛下 おことば》
「平成が始まって間もなく、皇后は感慨のこもった一首の歌を記しています。

ともどもに 平(たひ)らけき代(よ)を 築かむと 諸人(もろひと)のことば 国うちに充(み)つ

平成は昭和天皇の崩御と共に、深い悲しみに沈む諒闇(りょうあん)の中に歩みを始めました。そのような時でしたから、この歌にある「言葉」は、決して声高に語られたものではありませんでした。しかしこの頃、全国各地より寄せられた「私たちも皇室と共に平和な日本をつくっていく」という静かな中にも決意に満ちた言葉を、私どもは今も大切に心にとどめています。在位三十年に当たり、今日(こんにち)このような式典を催してくださった皆様に厚く感謝の意を表し、ここに改めて、我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります」

おことばの中で皇后さまの詠まれた和歌について触れられる陛下
おことばの中で皇后さまの詠まれた和歌について触れられる陛下

陛下は式典の終わりに、会場からの祝意に何度も手を振り、応えていらっしゃいました。

宮中茶会

2月25日と26日、皇居宮殿では両陛下主催の宮中茶会が催され、26日の午前は、各界の功労者、およそ500人が招待されました。

平成31(2019)年2月 両陛下主催の宮中茶会(皇居・宮殿)
平成31(2019)年2月 両陛下主催の宮中茶会(皇居・宮殿)

宮中茶会には、皇太子さまをはじめ秋篠宮ご夫妻など皇族方も出席されました。

《天皇陛下 おことば》
「本日こうして茶会を催し、ともにひと時を過ごすことを誠に嬉しくおもいます。この機会に皆さんの健康と幸せを祈ります」

 
 

乾杯のあと、皇族方とともに招待客に歩み寄り、親しく歓談された両陛下。ゆかりある人々と笑顔で話していらっしゃいました。

招待客と歓談される皇室の皆さま
招待客と歓談される皇室の皆さま

2カ月後に退位の日を控え、30年の歩みを振り返るひと時を過ごされた天皇皇后両陛下です。
(「皇室ご一家」第1991回 平成31年3月3日放送)