苦悩の末、導かれたジョージア
すがる思いで、日本国内にある複数の代理出産エージェンシーに相談した。そのうち最も信頼がおけると感じた1社に託す決断をした。
11年から海外での代理出産の仲介を手がけており、他社と比べて実績も豊富だった。
そして近年、その会社が代理出産を主に実施しているのが、ジョージアだった。
医療水準が高く、費用も比較的安価。それでも1千万円以上は掛かる。二人で貯金を出し合い、足りない分は積み立てていくことにした。
25年春、国内で保管されていた受精卵が、海を渡った。ジョージア人の代理母は、運良く順調に見つかった。
しかし、受精卵を検査した結果、5つ残ったうち、3つは代理出産に適しないと診断された。残す受精卵は2つだけ。一つ目は移植を試みたが、着床できなかった。
「やはりだめかもしれない」。
最後の一つに望みをかけるしかなかった。
新たな命の兆し
その知らせは初夏に、二人のスマートフォンに届いた。
「無事、着床が確認されました」
画面に浮かんだ一文を見た瞬間、裕太さんは思わず声を上げた。優美さんは知らせを受けた時、驚きのあまりスマートフォンを取り落とした。
まだ無事に生まれるか分からない。でも確実に大きな一歩だった。
毎月送られてくるエコー動画で、次第に大きくなる子の姿を眺めることが何よりの楽しみになった。
命と制度のはざまで
しかし、喜びもつかの間、今度は日本での大量の手続きが待っていた。
代理出産で生まれた子どもは、法律上の「実子」とはならない。DNA上は実子であっても、夫婦の戸籍に入れるためには、出生後に特別養子縁組などの手続きを踏む必要がある。
出生前から、自らの子どもであることを夫が認知する「胎児認知」の手続きもすることになった。
現地での出生後、スムーズに日本国籍を取得させ、日本に帰国させる。二人はエージェントに何度も確認しながら、書類の山と向き合い、ひとつずつ解決してきた。
一方、その間、二人の心をざわつかせる出来事が日本国内で起きていた。
超党派の国会議員によって昨年の国会に提出された「特定生殖補助医療法案」。その内容を見て、言葉を失った。
法案は、第三者の精子や卵子を使った体外受精などのルールを定める一方、代理出産は制度として認められなかった。そればかりか、代理出産による財産上の利益の授受・供与は、国内のみならず、海外で行われた場合も処罰対象になり得るという内容だった。
熟読すると、施行日以前に代理出産に関わる体外受精をしていた場合は、規制の対象外とされていた。「うちは対象外だ」とひと安心した一方、優美さんは強い違和感を抱いた。
私たちの子どもは“非合法”で生まれたように、みなされてしまうのか――。