望まない「予期せぬ妊娠」を防ぐためのアフターピル「緊急避妊薬」。避妊の失敗のほか性暴力被害などで使われます。2月から薬局で市販されるようになり、いち早い対応が可能になりました。手に入りやすくなった一方、性教育や支援体制の充実が課題になりそうです。
■薬局での市販が開始
緊急避妊薬「ノルレボ」。「予期せぬ妊娠」を防ぐ医薬品で、性交後72時間以内に服用し、妊娠阻止率は約8割です。
これまでは医師の診察と処方箋が必要でしたが、2月から、薬剤師の管理のもと薬局で購入できるようになりました。
長野県内では2月の時点で約250店が販売を始めています。ドラッグストアチェーンの「ウエルシア」では40店舗で取り扱っています。
■薬局での購入方法は?
(記者リポート)
「こちらのドラッグストアでも緊急避妊薬の販売が先月から始まっていますが、店舗には陳列されていません」
薬品は店頭にはありません。販売は、研修を受けた薬剤師がいる時間帯のみ。
まずは、購入したいことを伝えます。言いづらければ商品のサイトにある画面やメモなどを見せます。
ウエルシア薬局 薬剤師・新井友也さん(長野東鶴賀店):
「プライバシーもありますので、奥のブースに行っていただきます」
案内されたのは仕切りのある奥のスペース。
ウエルシア薬局 薬剤師・新井友也さん(長野東鶴賀店):
「(薬が)飲める方、飲めない方がいますので、そういうことを確認するシートです」
購入は、服用を希望する女性本人に限られます。
まず、治療中の疾患やアレルギーの有無などをチェックシートで確認。問題がなければ、服用に伴う注意点について説明を受け―。
ウエルシア薬局 薬剤師・新井友也さん(長野東鶴賀店):
「こちらの薬は、薬剤師の目の前で飲んでいただく必要がある薬になります。予備での購入や代理の方の購入はできません」
薬品を適正に管理するため、その場で服用する「面前服用」が義務付けられています。
価格は1錠7480円。年齢制限はなく、名前の申告も親の同意もいりません。
ただ、吐き気や腹痛などの副作用が生じる可能性もあります。「16歳未満」や薬の服用履歴などによって、産婦人科や小児科の受診を勧められることもあります。
■薬剤師による“不安”への寄り添い
さらに、「不安」に寄り添う対応も―。
ウエルシア薬局 薬剤師・新井友也さん(長野東鶴賀店):
「こちら、性暴力で(を受けて)飲む方もいるので、そういうところがないかサポートという面で」
「相談したい」ことがないか指さしで確認します。
必要に応じて性犯罪や性暴力被害の相談窓口を紹介したり、虐待など緊急性の高いケースは警察や児童相談所につなげたりします。
ウエルシア薬局 薬剤師・新井友也さん(長野東鶴賀店):
「アクセスしやすいドラッグストアで取り扱うことで、望まない妊娠を防げる可能性が高まった。購入を悩んでいる方、1人で抱え込んで悩まずに、まずは電話でもいいので薬剤師に相談いただければ」
■産婦人科受診のハードル
性行為から72時間以内の服用が求められる「緊急避妊薬」は、すでに多くの国で市販化されています。
国内でも、夜間や休日の受診、近くに医療機関がないなどアクセスの改善が強く求められていました。
女性の性をサポートする関係者も、市販化を歓迎します。
「ユースクリニックまつもと」は、産婦人科医や助産師、養護教諭などでつくるグループ。松本市内で月に1回、若い世代を中心に性の悩みの相談会を開くなどしています。
ユースクリニックまつもと(元養護教諭)・三村慶子共同代表:
「妊娠したらどうしようっていう不安になりますよね。処方箋なしで購入できるっていうのは大きい」
人には相談しづらい「性や妊娠の悩み」。市販化は「遅すぎたくらい」だと言います。
運営メンバー・太田紗弓さん:
「医療機関を受診するってハードルがすごく高い。自分自身も若いときに産婦人科を受診するのって、1人で行くのってすごく勇気がいったし」
助産師・川内野千代さん:
「(若い世代は)まず親に話さないといけないっていう第一関門があるから言えない」
運営メンバー:
「保険証を使うのが」
助産師・木村りえさん:
「土日は緊急で受診に来てくれた時も(医療費が)高額になる。(トータルで)2万円は超えてしまうので、やはり受診をためらっちゃう」
■市販化の一方で残る課題
気軽に入手できるメリットの一方、感じる課題も―。
助産師・栗岩美保さん:
「フランスは緊急避妊薬と一緒に性感染症の検査も、コンドームも無料で配布してくれる。もう一つリスクに踏み込んだアクセスもできるということを海外ではやっている。薬剤師が性暴力とか虐待の専門ではないので、判断に困るというところはこれからの課題」
運営メンバー:
「やはり連携していかないとね」
求めるのは、性暴力被害者への十分な支援体制です。また、「安易な使用」への懸念もあります。
助産師・栗岩美保さん:
「決して(避妊率は)100%ではないんですよね、この薬を飲んでも。女性だけが学ぶのではなく、男性も一緒に学んでいくものであると思っています」
ユースクリニックまつもと・三村慶子 共同代表:
「小さいうちに自分の体、性器も含めて、自分の体は自分のものという体の権利を中心に、相手との関係も学びつつ、性の知識も学びつつ、包括的に学んでいくということが大事」
女性が自分自身を守ることにつながる「緊急避妊薬」。アクセス向上の一方で、適正な使用と、その先の支援体制の充実が求められます。