カーナビ技術をヒントに…「アイシン精機」がデリバリーサービスに

新型コロナウイルスの影響で多くの企業が苦境に立たされているが、ピンチをチャンスと捉え、「畑違い」の新たな分野に活路を見出そうとする企業を取材した。

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新型コロナの感染拡大以降、見慣れた光景となったデリバリーサービス。

複数の飲食店から弁当をピックアップし、ランチタイムのオフィスにお届け。6月から愛知・刈谷市で展開されているデリバリー「刈谷めしクルー」。
一見、「畑違い」の会社が運営している。

このデリバリー事業をやっているのは、同じ刈谷市に本社を置く自動車部品メーカー「アイシン精機」。

アイシン精機の担当者:
飲食店に客が来ない、運転代行業者も客がいない、その2つをつなげた「刈谷めしクルー」を作ろうと

新型コロナによる宴会自粛で影響を受けた飲食店や運転代行業者。そしてアイシン自身も、4月から6月までの決算は500億円以上の赤字となるなど、大きな影響を受けていた。

そんな中でアイシンが考えたのがデリバリー事業だった。

同・担当者:
配達業者も利益が出る、飲食店も手数料とっても利益が残る、アイシンにも利益が残る、三方よしの考え方で事業が回せる

現在は11店舗の参加に留まるアイシンのデリバリー。参加店舗を増やすべく営業にまわる。

同・担当者:
注文ごとに配達するのではなく、お客さんを取りまとめて、順に回る仕組みになっています

一般的に1店舗1配達が基本とされる、デリバリー業界。

アイシンのデリバリーは、複数の人からの注文を一度に受け、最適ルートを計算して各配達先に届けるというもの。

自社のカーナビ事業で培った技術をヒントにしたもので、配達コストを抑えた分、店が払う手数料も低く設定した。

飲食店:
お店側からすると、かなりありがたい内容ですよ。前向きにやっていきたい

当初は、地域貢献として、刈谷駅前の飲食店を助けようと始めた事業だったが、担当者は「コロナが蔓延した世界の中でも成り立つビジネスを考えなければならない」と話す。

「無いなら作る」の発想…手広い機械メーカーは次亜塩素酸水の噴霧器を製作

厳しいコロナの時代に畑違いな分野に活路を見出そうとする取り組みは、様々な企業で広がっている。

愛知・一宮市の機械メーカー「シーディアイ」。工場機械の電子制御盤のほか、駐輪場システムにLED製品、映像でフォームをチェックできるシミュレーションゴルフまで手掛ける中小企業だ。

何でも作ってしまうメーカーが新型コロナをきっかけに新たに作ったのは、次亜塩素酸水を噴霧する噴霧器。

新型コロナの感染拡大で除菌水として話題になった次亜塩素酸水。この除菌水を200分の1ミリという非常に細かい霧で衣類などに噴霧する。コロナがきっかけになった新ビジネスだ。

シーディアイの専務:
元々は社員や会社を守るために開発した商品になります。大き目の噴霧器、国内で探しても見つからなかったのです。無いものは作ってみようという発想で

新型コロナの影響で、3割程度の売上ダウンを見込んでいるこの会社。やればできるとコロナを逆手に、畑違いの新ビジネスを生み出し、8月から販売を始めた。

同・専務:
新型コロナ以外でも、インフルエンザや風邪もあるので、その辺の感染症対策ニーズもあり、まだまだ伸び続けると思います

入れる商品は減ったけど…段ボール加工技術で新ビジネス

ロケットや飛行機の組み立てや部品の製造を手がける愛知・知多市の「東明工業」。

これまでH2Bなどのロケットや、三菱スペースジェット・旧MRJ試作機の主翼の製造等を担ってきた。そんな企業がコロナの時代に力を入れるビジネスは「段ボール」。

なぜロケットや飛行機を手掛ける会社が段ボールなのか。
航空機の機体の一部を組み立てる工場には、機体の部品はない。

新型コロナの影響で航空機大手・ボーイングは大幅な減産に。さらにスペースジェットも開発が遅れるなど、航空業界は受難の時代に…。
痛手が続き、売上は3割程減ったという。
そんな時代に乗り出したのが、一見畑違いの段ボールだった。

この会社では、航空機部品を梱包する段ボールも自社で加工している。
これを応用して製造しているのが、段ボール製のベッドやパーテーション。

新型コロナの感染拡大とともに、春ごろから避難所資材として需要が高まっている。

東明工業の担当者:
床からある程度高さがないと飛沫も吸い込んでしまうと。ベッドに加えて飛沫感染防止用のパーテーションをできないかと

湿気に強い強化段ボールなども使い、避難所資材には最適。ベッドの耐重量は驚異の6トン。航空機産業で培った技術を生かした新ビジネスに注目が集まっている。

9月28日、東亜工業は愛知・東郷町と災害時に段ボールベッドなどを提供する協定を締結した。これまで5つの自治体とこうした協定を結び、販路を広げている。

井俣憲治 東郷町長:
全然、怖さがないですね。快適です

同・担当者:
モノづくりの力を持て余すのはもったいないと。世の中に貢献できるものを提供し続けたいなと思っています

「コロナの時代」を踏ん張る企業。新しい畑に種を蒔き、新たな実りを目指していた。

(東海テレビ)

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