近年、地球温暖化を背景とした自然災害が激甚化し、私たちの暮らしを脅かしている。こうした未曾有の脅威に対し、福井県では「産官学民」が連携し災害を素早く予見し、被害を最小限に食い止める動きが加速している。福井テレビの報道番組「タイムリーふくい」で地域防災の最前線を追った。
深刻化する災害と除雪の課題
この冬も、福井県内を大雪が襲った。積雪は福井市で56cm、大野市で108cmに達し、一時「顕著な大雪に関する気象情報」が発表され災害の危険性が高まった。

大雪に伴い除雪費は年々増加の一途をたどっているが、それ以上に深刻なのが担い手不足。雪道研究のスペシャリスト、福井大学の藤本明宏准教授は「除雪作業は厳しい環境で早朝や夜間を問わず行うため敬遠されがちなうえ、作業員の高齢化も進んでいる」と指摘する。
また、除雪車の資格取得には多額の費用が必要で、事業者の大きな負担となっているという。「雪が少ない年は人や機械が余剰となり、逆に多い年は不足するため、計画的な人員・機材確保が難しいという構造的な課題も抱えている」(藤本准教授)
このような雪害対策の課題に独自の技術で挑むのが、雪氷対策メーカーとして全国トップレベルのシェアを誇る山田技研だ。
同社が約40年前の創業以来目指してきたのは「自然災害の見える化」。その象徴的な製品が、路面状況を24時間監視するセンサーである。

この技術の最大の特徴は、雪を従来の「深さ(cm)」ではなく、溶かすのに必要なエネルギー量「ワット(W)」という単位で計測する点にある。
藤本准教授は「従来の制御方法では“凍結しないのに発熱する”、“雪がないのに水を撒く”といった無駄が生じていた」と指摘する。

山田技研の山田忠幸社長は「雪は水分量によって密度が大きく異なり、同じ深さでも重さが倍近く変わることがある。ワットを用いて計測することで極めて正確な制御が可能となり、融雪設備の無駄な稼働を徹底的に抑制できる」とする。
実際にこのセンサーを導入したNEXCOでは、これまでは安全性確保のために連続で通電していた融雪設備を必要に応じて稼働できるようになり、電気料金が半減したという。この熱量計測の考え方は全国初となる技術だ。
雪氷対策技術を河川の水位監視へ
この雪氷対策で培われた観測・情報伝送技術は、季節を問わない“通年型の防災システム”へと進化を遂げている。

その一つが、河川の水位を監視する「河川水位計システム」だ。近年多発する集中豪雨では、これまであまり注目されてこなかった中小河川が突如として氾濫し、大きな被害をもたらすケースが増えている。
このシステムを河川に設置することで、水位データと現地の映像をリアルタイムで伝送することができる。太陽電池で稼働し、省エネのマイコンを駆使することで、電源確保が難しい場所でも画像伝送を可能にした。
一般社団法人・河川情報センターの田中耕司さんは「カメラが付いている事で、数字だけではなく現場で何が起きているかを確認できるのは非常に大きい」と評価。データだけでは伝わらない「川があふれそうだ」といった現場の切迫した状況を「見える化」することで、住民の迅速かつ的確な避難判断を強力に支援することが可能になったという。
産官学民連携の“福井モデル”
政府は現在、大規模災害などが発生した際の司令塔役になる「防災庁」の発足に向け、準備を進めている。その具体的な方針の1つとして挙げられているのが「産・官・学・民」による連携体制の構築だ。県内ではこれに先駆け、福井大学と山田技研が連携。学生を対象に「地域防災実践塾」を開催するなど、新たな取り組みを始めている。

「地域防災実践塾」では、学生たちがセンサー開発からデータ加工、情報伝送、そしてソフトウェアによる可視化まで、一連のプロセスを実践的に学ぶ。
山田社長が目指すのは「防災というテーマを通じて学生に課題解決能力を身につけてもらい、その力を地域の様々なビジネスに応用していくこと」だ。

河川情報センターの田中さんは「防災ビジネスだけで地域経済を支えるのは難しい。しかし、防災で培った高度な技術や課題解決のノウハウは、農業、観光、交通など、他の産業にも応用できる可能性がある」と述べる。
防災を起点として地域に高度な技術を持つ中小企業を育て、地域経済全体を活性化させる。日本の地方創生の新たな可能性を示す「福井モデル」として、全国から注目を集めている。
