4月の入学・新学期のシーズンを迎え、成長した子どもの姿に胸を熱くする一方で、学用品・制服・通学費等の高さに思わずため息をつく保護者は少なくないはずだ。
高校授業料の無償化が進んでも、家計の負担感は消えない。なぜなら、教材や学用品、制服、通学費といった「授業料以外」の出費が重くのしかかるからだ。
文部科学省の直近の「子供の学習費調査」(令和5年度)では、公立小学校の学校教育費の内訳として、図書・学用品・実習材料費が2万6860円とされる。
私立高校にいたっては図書・学用品・実習材料費が7万3312円に上る。授業料以外の費目が家計の負担感を押し上げている実態が浮き彫りとなっている。
負担軽減 子供ベーシックサービスとは
その負担に追い打ちをかけるのが、物価高の波である。
入学時や進級時に必要となる絵の具セット、書道セット、裁縫セット、算数セット等の買い替えや買い足しが必要になり、家計にずしりと響く。授業料が無償でも、保護者が「いま苦しい」と感じるポイントは、むしろこうした日々の教材・学用品などの出費にある。
2026年都議会第1回定例会では、都議会公明党の東村邦浩幹事長が、教育費負担を抑える施策を「子供ベーシックサービス」と位置づけ、代表質問で「教育費の負担のかからない東京を目指しており、基本的な費用を所得制限なく無償化する子供ベーシックサービスの導入を提案しています」と訴えた。
また、教材費の無償化については、「ただ単にご家庭に費用負担軽減の補助を行うという考え方だけではなく、SDGsの観点からも、学校に教材や学用品を備え付け、児童生徒の皆さんが共同で使うという方法など、様々な方策を検討するよう都に求めてきました」と述べ、学用品等の学校での共同利用を含む制度設計を求めた。
学用品買い足しに、軽減策始めた自治体も
その負担軽減の動きは、少しずつ都内で広がっている。
教材費の一部又は全額補助、教材・学用品の無償化、学校備品化等、教材や学用品の負担軽減策を2025年度までに10自治体が実施しており、2026年度も新規導入や拡充が続く見通しだ。
学用品の共同利用か、経費無償化か
負担軽減策は、大きく分けて二つある。
ひとつは学校で購入して共同利用すること。もうひとつは、これまで保護者が負担してきた経費を無償化することだ。ただ、学用品は範囲が広く、何を対象にするかは自治体ごとに差がある。
教材費のように学校経由で徴収しやすい費目は、一括管理になじみやすいと思われる。その一方で、制服や体操服、上履きなど保護者と事業者との間で直接決済するような物は、費目ごとに仕組みを分けて考える必要がある。
家計の金銭的負担だけでなく手続きなどの時間的負担を軽くする仕組みも必要だろう。
都は、都議会での議論をふまえ、区市町村の先行事例に加え、さらに先行する海外事例も調査していく方針だが、東京都全体としてどのような統一的な仕組みにしていくかが次の焦点になる。
“豊か”でも第二子を諦める理由とは
政府の社会保障国民会議・有識者会議のメンバーでもある大和総研の是枝俊悟主任研究員は、「1人あたりの教育費の高騰」が第二子へのハードルを引き上げていると指摘する。
「夫婦とも正規雇用での共働きができるようになったことで、若い子育て世帯は全体的に豊かになっています。30代の子育て世帯の世帯収入の中央値は、2017年から2022年にかけて13.2%増加しています。その一方で30代男性の収入は1.9%の増加にとどまっており、これは、共働き世帯と比べて、女性が専業主婦の世帯の「相対的な低所得」が目立つようになってきたことを表しているといえます」
「かといって、共働き世帯の出生率も、1をやや上回る程度の水準にとどまります。共働き世帯は世帯収入は多いものの、2人以上の子どもについては、望んだとしても年齢や健康面の課題から、現実に持つ子どもの数は1人にとどまることが多く、結果として、2人以上の子どもを育てるのに十分であるはずの教育費が、1人の子どもに集中的に注がれることとなります」
「これが、女性が専業主婦である世帯にとっては『1人あたりの教育費の高騰』に映りやすく、もう1人子どもを持つことのハードルを引き上げている可能性があります」
第二子へのハードルは下がるのか
授業料の無償化だけでは、家計の不安はなくならない。むしろ問われているのは、学用品、制服、通学費といった日々の「基礎費目」をどう下げるかだ。子ども一人にかかる費用の見通しが立ちやすくなれば、「もう一人」をためらう壁は少し低くなるかもしれない。
東京都の取り組みが第二子のハードルを下げることができるのか、今後も注目していきたい。
