65歳以上の日本人のうち、6人から7人に1人が認知症だといわれている。冬はその発症や進行のリスクが高まりやすく注意が必要だ。寒さが脳に与える影響について福井県済生会病院の脳神経内科・上野亜佐子医師に聞いた。
寒さが引き起こす「高血圧」が脳にリスク
寒さの脳への影響について上野医師は「寒いこと自体がアルツハイマー病を急に発症させるというわけではない」とする。しかし、寒い環境が継続することで、脳にとって好ましくない状態が引き起こされやすくなるという。その主な原因の一つが、高血圧である。
寒さで血管が収縮し、血圧が上がりやすくなるのだ。
「血圧が高いと血管が傷つき、脳が十分な血をもらえなくなる」と上野医師は指摘。

血液には栄養や酸素が含まれており、その供給が滞ると脳はダメージを受け、脳細胞が死んでしまう。その結果、アルツハイマー病や脳梗塞になりやすくなるとされている。

脳梗塞や脳出血が原因で認知症を発症するケースもあり、その場合は物忘れのほかに、手足が動きにくくなるといった症状が見られることもある。
活動量の低下が脳の働きを弱める
寒さがもたらすもう一つのリスクは、活動量の低下だ。寒いと、どうしても室内にこもりがちになる。そうした生活が長引くと、脳への刺激が減少し、脳の働きそのものが弱まってしまうのだ。
上野医師は、コロナ禍での経験について「コロナの時期には、やはり人と接することなく家に閉じこもりの生活をした人が軒並み、認知症が進んだ」と振り返る。
やはり「普段の生活で、外に出たり人と話したり、仕事をしたり、家事をしたり、そういう生活が脳の機能を活性化させて維持する」という。

寒い冬は高血圧や活動量の低下を招きやすく、それが認知症の発症や進行のリスクを高めてしまうのだ。
認知症リスクを抑える4つの習慣
では、私たちは具体的にどのような対策を取ればよいのだろうか。上野医師は、認知症のリスクを抑えるための4つの習慣を勧める。
1.部屋の温度を18度以上に保つ。(活動性を高めるために重要)
2.家の中の温度差を小さくする。(血圧の急激な変動を防ぐため。脱衣所に暖房装置を置くなどの工夫が有効)
3.室内で軽い体操をする。(脳に直接的な刺激を与えることができる)
4.定期的に血圧を測る(自身の体調の変化に敏感になること)
これらの習慣は、認知症を未然に防ぐだけでなく、すでに発症している場合の進行を遅らせる効果もあるとされている。
若い世代にも潜むリスク
また上野医師は、若い世代への影響についても「寒いと集中力が低下するといわれていて、これは若い人でも起こり得る。血圧が高くなりやすいので、積み重ねで後々の認知症発症のリスクになる恐れがある」と警鐘を鳴らします。
脳に優しい習慣は、すべての世代にとって重要。日々の暮らしの中で4つの習慣を意識し、認知症のリスクを抑える生活を心掛けよう。
