失踪直前に保護者とのトラブル…

さらに、遺族が訴えるのは失踪直前のある出来事だ。

馨一さんは、失踪する前日の7月7日、保護者会の後に、保護者との面談を行い、その際「馨一さんの指導が厳しいため、登校を渋っている」と抗議を受けたという。

遺族は他の保護者からの情報として、この保護者とのやりとりが、この日だけでなく以前から続いていたと主張した。

馨一さんはこの面談の直後、校長にあたる教育部長と学年主任に報告し、そのおよそ5時間後には、自殺に使ったロープを購入する様子が防犯カメラに映っていたという。

裁判では、自殺の直近に起きたトラブルについても真相を解明するため、口頭弁論が行われる予定だったが、その直前に国側が突如「労災」を認める判断をした。労基署は原告側の主張をほぼ認め、98時間以上の時間外労働時間を認定したのだ。

保護者とのトラブルについても、直前までの長時間勤務とあわせると心理的負荷は強く、その後の精神障害と死亡との間には相当因果関係があると認めた。これによって、遺族は訴えを取り下げることになった。

「故郷を失ったよう」遺族の思い

しかし、遺族らは今も釈然としない思いを抱えている。

遺影を手に報道陣に説明する遺族(20日、東京・町田市)
遺影を手に報道陣に説明する遺族(20日、東京・町田市)

馨一さんが学校内での業務に関するトラブルについて報告をした直後に自殺を決意していることから、学校側が適切な対応を取れていたのかについて、疑問に感じているのだ。

学校側は「保護者との面談は本件の原因ではない」と主張していて、遺族が求める真相究明には応じないという。

馨一さんの姉で、自らも玉川学園の卒業生であるロッソ加奈子さん(48)は、「母親、私、弟、妹が卒業した母校でありながら、誠意の無い対応を受けてきたことは、まるで故郷を失ったような断絶の思いです。このようなことが二度と起きてはいけないと思い、玉川学園には改善してほしい」と語っている。

この件について玉川学園に取材したところ、「本学園としてはこれまでもご遺族に真摯に対応してまいりましたが、ご遺族のプライバシーに配慮し具体的な内容は差し控えます。教職員の働く環境について検証を継続してまいります。」とコメントした。
(調査報道統括チーム 勝又隆幸)

悩みや不安を抱えて困っているときには、電話やSNSで相談する方法があります。ひとりで抱え込まず、相談してみてください。
▶#いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)
0120-061-338(24時間)
▶よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)
0120-279-338(24時間。外国語対応)
▶「いのちの電話」
0570-783-556 (午前10時~午後10時)
▶「こころの健康相談統一ダイヤル」
0570-064-556

▼情報募集
調査報道スポットライトは、皆さまから寄せられた声をもとに記者が取材し、社会課題の解決を目指します。情報提供して下さる方は、ぜひこちらまでご連絡下さい。 https://www.fujitv.co.jp/spotlight/

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(5枚)
フジテレビ
フジテレビ

フジテレビ報道局が全国、世界の重要ニュースから身近な話題まで様々な情報を速報・詳報含めて発信します。

社会部
社会部

今、起きている事件、事故から社会問題まで、幅広い分野に渡って、正確かつ分かりやすく、時に深く掘り下げ、読者に伝えることをモットーとしております。
事件、事故、裁判から、医療、年金、運輸・交通・国土、教育、科学、宇宙、災害・防災など、幅広い分野をフォロー。天皇陛下など皇室の動向、都政から首都圏自治体の行政も担当。社会問題、調査報道については、分野の垣根を越えて取材に取り組んでいます。

勝又隆幸
勝又隆幸

フジテレビ報道局社会部長。1995年の入社以来警視庁、司法、警察庁クラブなど、事件記者を10年。
2010年からロンドン特派員として、ロンドン五輪、ロイヤルウェディングのほか、リビア、シリア、ウクライナで紛争取材にあたり、マレーシア航空機撃墜現場から中継取材も。
その後ニュース番組プロデューサーなど経て、2023年から現職。