2025年1年間の特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は、全国で合わせて3200億円余り…島根・鳥取両県でも被害が相次いでいて、いわゆる「ニセ警察詐欺」の被害額は985億円余りと全体の3分の1近くを占めている。
この「警察」を騙る詐欺に被害者がなぜ騙されてしまうのか?専門家による犯罪心理学の観点などから分析した。
ある日突然…「東京警視庁」を名乗る男から電話
これは島根県内に住む女性に実際にかかって来た電話。
“東京警視庁”を名乗る男:
「愛知県警からですね、捜査協力要請っていうのを受けてまして、東京警視庁のほうからお電話させていただいているんですが…」
「東京警視庁」を名乗る男は、「愛知県警から捜査協力要請」があったと話し、身分証を持って愛知県警まで出頭するよう求めた。
冷静に答えると「ちゃんと聞けくそばばあ!」
心当たりのない女性は、冷静に電話をかけ直すと告げると、男は態度を豹変させた。
“東京警視庁”を名乗る男:
「やましいことがあるから、お電話切るということでお間違いないですか」
「ちゃんと聞いていただけますか」
女性が「ちゃんと聞いています」と答えると…。
“東京警視庁”を名乗る男:
「ちゃんと聞け、くそばばあ!」
男は逆切れし、一方的に電話を切った。
女性の冷静な対応で、被害を未然に防ぐことができた一例といえる。
増加の一途の「ニセ警察」詐欺
詐欺被害防止に取り組む島根県警生活安全企画課の福田敦史警部補は「県内でも多く発生しているニセ警察詐欺の手口」と指摘する。
島根・鳥取両県警によると、2025年の1年間に確認された特殊詐欺被害とSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額は、合わせて20億円を超えた。このうち、「ニセ警察官」詐欺を含むオレオレ詐欺は両県で約8億円と、被害額全体の4割以上を占めている。
福田警部補は「SNSなどを通じて逮捕状や警察手帳を画像で送ることもありません。警察からお金を要求されれば、詐欺を疑って警察署に相談してください」と呼びかけている。
「混乱」と「依存」を作り出す心理戦に巻き込まれない
警察の被害撲滅の取り組みにも関わらず、被害は後を絶たない。
ではなぜ「ニセ警察官」にだまされてしまうのか…犯罪心理学の専門家である立正大学心理学部の西田公昭教授に分析してもらった。
西田教授がまず注目したのは、「愛知県警」に来てほしいという要求を断った最初のやりとりだ。
「警察のほうが強い権威も権力持ってますので、言うこと聞かなければどんな目に遭うんだろうという不安になるわけです。その上で『行けないじゃん』と思わせるわけです」と分析。
犯人がまず狙うのは、被害者を混乱させ、だまされやすい心理状態の「土台」を作ることだという。
次のステップとしてよくある手口の一つが、ビデオ通話だ。偽の手帳などを見せて「警察官」と誤認させ、「取り調べ」と称して会話を続けることで、誰にも相談できない状況を作り出し、被害者の「不安」をあおる。
さらに西田教授は「犯人側の狙いは依存的にさせるっていう誘導なんです。混乱して不安になってるときに人がどう言うか。大抵は『どうしたらいいんですか?』なんです。『こうしたらいいんですよ』って提供できるじゃないですか」と巧みに被害者の心理を手玉に取る背景を話す。
「溺れる者は藁をもつかむ」心理を利用
さらに「私はあなたを信じている」などと、味方を装うニセ警察官が被害者の依存心を引き出し、言葉巧みに個人情報を聞き出し、金銭をだまし取る手口が目立つと西田教授は指摘する。
「『溺れる者は藁をもつかむ』という心理を使って、恐怖感と不安で溺れさせて、安心させる解決策を提供するっていうことなんです。それがもう詐欺の常套手段で、昔から使われているものだと理解をするべきですね」
その上で西田教授は、自分の心理状態の変化に気づくことができるよう、あらかじめ備えることも重要だとしている。
「あらゆるスポーツや音楽とかと同じで練習していれば、ちゃんとコントロールが効くものなので不意打ちとは全然違う。いちばん簡単なのは、なるべく臨場感を持って、お芝居でもいいからロールプレイみたいなのでもいいですよね。そんな感じで練習しとくのがいちばん大事」
「ニセ警察」詐欺では、犯人側が被害者の氏名や住所などを示すことで、本物と信用させる手口が多いという。この点について西田教授は、「犯人側は個人情報を把握して電話をかけているので、それが『本物の警察官』という根拠にはならない」と指摘する。
心理的なテクニックを悪用する犯人たち。その「からくり」をあらかじめ知っておくことも詐欺から身を守る対策となりそうだ。
(TSKさんいん中央テレビ)
