代表作は、東宮御所、のちの赤坂離宮、現在の迎賓館であるが、これと同時に並行して建てられたのが、上野の東京国立博物館の表慶館である。

美術館だが宮殿のような姿

表慶館は大正天皇のご成婚(明治33年)を記念して計画された美術館であり、市民からの寄付金によって造られた。

構造はレンガ造だが、外壁に石を貼った石造のような外観である。また、美術館といっても、全体の形はヨーロッパの宮殿のような姿である。

中央のドームは全体を引き締める最も重要なシンボル。よく見ると2段に重なった大小のドームでできている。これが上昇感を出している(『至高の近代建築』より)
中央のドームは全体を引き締める最も重要なシンボル。よく見ると2段に重なった大小のドームでできている。これが上昇感を出している(『至高の近代建築』より)

中央のホールの上には大きなドームをいただき、左右の階段室にも小型のドームがそびえてバランスをとっている。

外壁の数々の彫刻には、美術、工芸、音楽などさまざまな芸術への連帯感が示されている。小粒ながらバランスの良い、美しい建築である。

片山は、この表慶館と並行して明治期の東宮(のちの大正天皇)のお住まいとして、赤坂に東宮御所の設計を命じられて、心血を注いで設計・建設に当たった。

ベルサイユ宮殿を初め各国の宮殿を視察、世界の宮殿に劣らない、デザイン、構造、設備、すべてに亘って完全な宮殿建築、明治建築の集大成として最高の建築を実現したとの自負をもって明治天皇に拝謁し、ご説明申し上げたのだが、天皇からは「贅沢すぎる」の一言しかいただけず、大変な衝撃を受けた。

大柄で強健だったが、これ以降失意のうちに63歳で息を引き取った。

結局東宮御所は、関東大震災の前後に一時皇太子(昭和天皇)の仮のお住まいとして使用されたほか、国立国会図書館などに使われ、現在は迎賓館として生まれ変わっている。

上野公園には美術館、博物館など各種の建築がさながら建築博物館のように建てられているが、中でも表慶館は、明治時代の建築としてたいへん貴重な存在である。

『至高の近代建築 明治・大正・昭和 人と建築の物語』(新潮新書)

小川格
ブログ「近代建築の楽しみ」で新たな価値を発信。編集事務所「南風舎」顧問。著書に『日本の近代建築ベスト50』(新潮新書)

(写真は著者撮影)

小川格
小川格

1940年東京生まれ。法政大学工学部建築学科卒。『新建築』、相模書房で編集のほか設計事務所勤務。ブログ「近代建築の楽しみ」で新たな価値を発信する。編集事務所「南風舎」顧問。著書に『日本の近代建築ベスト50』(新潮新書)