イスラム組織ハマスの最高指導者殺害を受け、イランは報復のための準備を進めているとみられ、ミサイル発射台の移動や軍事演習を行っている。また殺害は、警備にあたっていたイラン兵2人を買収し、超小型爆弾を使って行われたとみられている。
イスラエルへ報復のため準備…米国務長官が自制求める
イスラム組織ハマスの最高指導者ハニヤ氏の殺害を受け、イランは、イスラエルへの報復のため、ミサイルの発射台を移動させるなどしている。近く、一斉攻撃が近く行われる可能性があり、緊張が高まっている。
この記事の画像(11枚)アメリカメディアによると、当局者の話として、イランがミサイルの発射台を移動させている他、軍事演習を行うなど、数日の内に報復攻撃を行う可能性があるとの見方を伝えている。
また、イラン国営メディアは2024年4月に行ったイスラエルへの攻撃よりも、最新鋭のミサイルが使われる可能性があると報じていて、緊張が高まっている。
一方、アメリカのブリンケン国務長官は、イランとイスラエル双方に、「紛争を激化させてはならない」と、直接伝えたとした上で、これ以上の攻撃は「危険な事態を招く」と自制を求めた。
「1000万円単位の報酬」と「国外逃亡」2つの条件で兵士買収
ここからは、フジテレビ・立石修解説委員室長が解説する。
青井実キャスター:
イランの報復攻撃へ向けて緊張が高まっている中、ハマス最高指導者であるハニヤ氏殺害作戦の全容が見えてきたということですね。
立石修解説委員室長:
ハニヤ氏殺害は、スパイ映画さながらの緻密な作戦だった可能性が出てきています。ハニヤ氏の殺害現場とみられているのは、首都テヘランにある海外要人をもてなすゲストハウスです。このゲストハウスは、大統領宮殿のあるサーダ・バード宮殿から約1kmとイラン中心部にあります。
今までこの建物の全貌は不明でしたが、ニューヨークタイムズが、独自入手した事件後のゲストハウスとされる写真を見ると、イラン側は空爆により殺害されたと主張していますが、建物は破壊されておらず、一部に黒く焦げたような痕が確認されるのみで、空爆ではなかった可能性が高いです。
青井キャスター:
空爆ではないとすると、具体的にはどのような方法が取られたのでしょうか?
立石解説委員室長:
イスラエルメディアによると、イスラエルの情報機関「モサド」は、超小型爆弾を使っての殺害作戦を立案したということです。作戦決行にあたり、モサドは警備にあたるイラン兵2人を買収し、爆弾の設置役として作戦に当たらせました。
青井キャスター:
寝返った2人の兵士がカギを握りますが、どのような面々なのでしょうか?
立石解説委員室長:
2人は、イランの精鋭部隊である「革命防衛隊」の兵士で、イスラエル側からドル計算で1000万円単位に上る「6桁の現金」の報酬と、作戦後「北欧の国への逃亡」の2つの条件が提案され、イランを裏切りました。この精鋭部隊の“裏切り行為”は、おそらくイラン中枢部にも大きなショックを与えていると思います。
殺害方法ですが、イスラエルメディアによりますと、この2人は午後4時23分頃にハニヤ氏が宿泊する部屋のベッドの下に爆弾を設置しました。その後2人の実行役は現場を脱出し、イスラエルの手ほどきで、1時間後にはイラン国外に逃亡したとのことです。
そして翌日午前1時20分にハニヤ氏が外出先から、ゲストハウスに戻ります。そして部屋の灯りが消えたことを確認し、午前1時37分頃に爆弾を遠隔で爆発し、ハニヤ氏を殺害したというのが作戦の全貌になります。
報復求める声強まるも…各国から自制求める声
青井キャスター:
このような緻密な攻撃を行った狙いは、どのようなことなのでしょうか?
立石解説委員室長:
イランの大統領就任宣誓式が行われており、この施設には他にもイランに近い組織の幹部などがこのゲストハウスに宿泊していました。そのため、「エスカレートを避けるためにも、ハニヤ氏だけを殺害する」必要がありました。また、ハマスの後ろ盾であるイランで最高幹部を殺害することで、イランのメンツを潰す狙いもあったと思われます。
青井キャスター:
イランは、近く報復攻撃を行うとしていますが、大規模なものになるのでしょうか?
立石解説委員室長:
ほぼ確実に報復は行うと考えられます。イラン国内では報復を求める声が強まっており、ヨルダン川西岸などでも、大規模なデモが行われています。ただ、アラブ各国からは自制を求める声も出ています。
さらにロイター通信によると、イランと近いロシアのプーチン大統領も攻撃を抑制的に行うよう、イランの最高指導者ハメネイ師に伝えたとのことです。そのため、報復の規模については不透明となっています。
(「イット!」 8月7日放送より)