新派を代表する俳優として長年にわたり活躍した水谷八重子さん、本名・松野好重(まつのよしえ)さんが、2026年8月28日、肺炎のため東京都内で死去した。87歳だった。
水谷八重子さんは1939年4月16日、東京都生まれ。
父は歌舞伎俳優の十四世守田勘弥、母は新派の名優である初代水谷八重子。
1955年8月、歌舞伎座での新派公演で水谷良重の名により初舞台を踏み、同時に歌手としてもデビューした。
舞台、映画、テレビなど幅広い分野で活躍し、1995年には二代目水谷八重子を襲名し、新派の中心的存在として劇団を支えた。
代表作には『滝の白糸』『日本橋』『婦系図』『鹿鳴館』『残菊物語』『京舞』などがあり、伝統的な新派作品で高い評価を得た。
一方で、『三婆』や山田洋次監督の脚本・演出による『麥秋(ばくしゅう)』『東京物語』『家族はつらいよ』、さらに横溝正史作品『犬神家の一族』『八つ墓村』など新作にも積極的に取り組み、多彩な演技で観客を魅了した。
その功績により、1978年に菊田一夫演劇賞、1988年に松尾芸能賞大賞、1992年に芸術選奨文部大臣賞を受賞。2001年には紫綬褒章、2009年には旭日小綬章を受章した。2023年には港区名誉区民にも選ばれている。
初代八重子や花柳章太郎の芸を受け継ぎながら、新派の伝統と情緒を守り続けた水谷八重子さん。
その円熟した演技は多くの観客の心を捉え、新派演劇の発展に大きな足跡を残した。
最後の舞台は2025年2月の南座「二月新派喜劇公演『三婆』」で、富田駒代を演じた。
葬儀は近親者のみで執り行われ、後日お別れの会が開かれる予定だ。
