今年から高校の授業に変化が。情報科に必修科目として「情報I」が新設された。 「進学重点指導校」として、偏差値70以上ともいわれる都立青山高校では、3年前から「情報」の授業を開始している。その「情報I」の授業を取材した。 

偏差値70以上 “名門”高校の情報Ⅰ 

「係数とグラフを出すことが目的じゃないからね。ここから何を読み取るかがポイントだからね」。 1年生の教室では、都立青山高校のYouTube動画の視聴者を分析する授業が行われていた。

生徒たちは、動画を視聴した人の年齢、性別、回数、時間の長さなどのデータをもとに、●気づいたこと ●どのような動画を作成すれば再生回数が上がるか●対象となるターゲットは誰にするかなどを模索していた。

都立青山高校の「情報I」の授業を取材した(7月15日 東京・港区)
都立青山高校の「情報I」の授業を取材した(7月15日 東京・港区)
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これは「データマイニング」と呼ばれるもので、「大量のデータから統計学的手法などを用いて、新たな知識や傾向、パターンを見つけ出す手法のこと。Data Mining(データを採掘する)という意味を持つ」という。

データを打ち込み、グラフなどを作成、それを見ながら分析を進める。 分析後は再生回数を上げるための工夫など改善点をPCを通じて提案、その内容は即座に、担当教師のもとに送られるという。 

ユーチューブ動画 再生回数を上げるには

教室では、担当教師から、「何曜日に、動画の再生回数が伸びるか?」との質問が飛んだ。すると、生徒からは「休み前に再生回数が上がる」との意見が出された。確かに、都立青山高校のユーチューブ動画は、金曜日に、再生回数がアップする傾向にあるという。

この日の授業のテーマは、「データマイニング」だった。
この日の授業のテーマは、「データマイニング」だった。

その背景を探ると、高校入学を控えた中学生が、週末を迎える前に、動画を視聴している可能性が浮上した。生徒と教師の意見のキャッチボールにより、分析は進められた。授業風景は、常に「双方向」だ。

すると、ある生徒が、再生回数アップの”作戦”として「学校説明会の直前に新しい動画をあげる」と提案。データとグラフをもとに、都立青山高校を志望する中学生をターゲットにして、再生回数を上げるとの結論を導き出した訳だ。授業の終わりには、理解度を確認するためのテストが行われる。その場で答えを送信、即座に、平均点も出されるという。 

机上には個人スマホも 

生徒の机の上には、PCやタブレットだけではなく、個人のスマホも並べられていた。かつて、タブレットが配備されていない時期には、スマホを使って授業が進められていたという。例えば、化学の実験では、スマホを使って、試薬の色が瞬時に変わる様子を動画で記録していたとのこと。

取材に応じる都立青山高校・小沢哲郎校長
取材に応じる都立青山高校・小沢哲郎校長

しかし、都立青山高校の小沢哲郎校長は、「データを使ってエビデンスを示して自分の主張を言うようなところをやるには、スマホやっぱり、不十分だと思うんですね。タブレットはお互いの考え方を共有するってことがスムーズにできます」と話した。

PC、タブレット、スマホを、その”長所”に応じて使い分ける。そこには、早くからICT化に力を入れてきた名門校の「矜持」が垣間見えた。 

生徒に変化 教師にメリットも 

実は、この「情報I」の授業には、それを支える「デジタルサポーター」が存在した。都立青山高校などの都立高校では、”教室のICT化”を、大日本印刷や内田洋行といった民間企業に委託しているのだ。

都立青山高校の「情報I」の授業には、民間企業が、デジタルサポーターとして協力しているという。
都立青山高校の「情報I」の授業には、民間企業が、デジタルサポーターとして協力しているという。

授業で使われるパワーポイントは、教室のプロジェクターに投影される。と同時に、そのデータは生徒のPCにも送信される。そうすると、生徒が、授業内容をノートに書き留める必要がなくなるという。内田洋行の新井計五さんは、「生徒が下を向かずに、顔を上げて前を向き、先生の話を聞けるようになる」と指摘する。

また、テストを採点するソフトも導入されているとのこと。答案用紙をスキャンすると、採点だけではなく、回答の傾向も分析できる、と大日本印刷の三枝勲さんは話す。採点に要する時間が減れば、教師の勤務時間短縮にも役立つだろう。

第2の「ビル・ゲイツ」「イーロン・マスク」を 

都立青山高校の「情報I」の授業を視察した東京都の小池知事は、「新しいデータ、ビッグデータの使い方が当たり前のノウハウとして身に付いた学生達が世の中に出ていく、子どもたちが社会に出て報われるようにならないと、その次が育っていきませんのでね、いろんな意味で社会のシステムそのものも考え直す、見つめ直す時期なのではないのかなと思います。イーロン・マスクやビル・ゲイツを超えるような生徒さんが出てくれたらいいなと思うんですけど」 と述べ、世界的な”起業家”誕生への期待に胸を膨らませた。

授業の様子を視察する東京都・小池知事
授業の様子を視察する東京都・小池知事

小沢校長は「日本国内にとどまらず世界で活躍できる人材になってほしい、リーダーになってほしい、その潜在的な能力を持った生徒たちですよ。」 と教え子達を評価しつつも、「でも、やっぱり他の高校生世代と同じように“内向き”なんですよ」とも話した。だからこそ「外に目を向けよう」と生徒たちに、はっぱをかけているそうだ。 「情報Ⅰ」は2025年からは大学の受験科目にもなる。 「覚える」ではなく「考える」力を伸ばし、自ら外の世界に出ていく力を着けることが出来るのか、注目していきたい。 

(フジテレビ社会部・都庁担当 小川美那)