2月8日に実施された第51回衆議院議員選挙において、高市首相率いる自由民主党が圧倒的な勝利を収め、単独過半数を大きく上回る議席を確保したことは、ワシントンの外交・安全保障関係者の間に一定の安堵をもたらしただろう。
現在も、そして今後も日本外交の基軸が日米関係であることは疑いようのない事実であり、米国にとってもそれは対中政策という軸において不可避なものだ。
しかし、2024年10月下旬に実施された第50回衆議院議員総選挙以来、日本は少数与党という政治的脆弱性を抱えることになり、米国にとってそれは大きな懸念材料となってきた。
アメリカの理想は“第二次安倍政権”
日米関係を重視する米国にとって、最も理想的で扱いやすいカウンターパートの姿は、かつての第二次安倍晋三政権時代に象徴される、強固な政治基盤に裏打ちされた政権である。
当時の自公政権は、衆参両院で安定した過半数を維持し、防衛予算の増額や平和安全法制の整備といった、同盟の根幹に関わる政策を迅速かつ着実に実行する能力を有していた。
米国が日本の政権に期待するのは、単なる抽象的な友好の言葉ではなく、合意した戦略を国内の抵抗を排して完遂できる実務能力である。日本の政権運営が安定していることは、米国にとって長期的な外交安保戦略を共有し、予見可能性を担保するための最低条件とも言える。
日本の“脆弱性”注視するアメリカ
しかし、2024年10月の衆議院選挙の結果、自公両党が過半数を維持できなくなったことで、米国は日本の政治的脆弱性を懸念材料として受け止めることになった。
与党が議会運営において常に野党の動向を窺わねばならない少数与党体制は、例えば、対中国を念頭に置いた迅速な意思決定、政策の遂行を遅延させる可能性もある。
石破前政権やその後の高市政権の発足当初、ホワイトハウスは表向きには良好な日米関係の維持・深化を強調したが、その内実としては、両政権が抱える政治的脆弱性の行方を注視していた。
どれほど志の高い安全保障政策を標榜していたとしても、政治的基盤が脆弱であれば、それらは夢物語に終わるシナリオも十分にあり得る。
アメリカの“安堵”
今回の選挙は、こうした米国の懸念を根底から覆すものとなった。
自民党の大勝により、高市政権は少数与党という政治的脆弱性から完全に解放されることになった。ホワイトハウスが今回、自民党の勝利に対して抱く核心は、単なる祝意を超えた安堵である。
自らと交渉する相手が、もはや国内の“些細”な政争に足元をすくわれる心配がなくなり、国家間の合意を円滑に国会で可決・執行できる能力を取り戻したことは、日米関係における最大の障壁が取り除かれたことを意味する。
高市政権下の日米関係の真のスタートは、まさにこの瞬間から始まると言っても過言ではない。
「少数与党」との言い訳出来なくなり…
高市首相が掲げる強靭な日本の構築や、先端技術における日米連携、さらには核抑止の議論を含む高度な安全保障協力は、安定した政治基盤という強力なエンジンを手にしたことで、今後実行に向けてさらに加速していくだろう。
米国側は、高市首相が自身の政治的信条を背景に、これまで以上に踏み込んだ同盟強化のアジェンダを提示してくることを期待しているだろう。
同時に、この安定は、日本にとって米国からの要求がよりダイレクトなものになってくることも意味する。少数与党という「言い訳」が通用しなくなった今、トランプ政権は日本に対し、防衛負担のさらなる増額や、貿易・経済安全保障分野でのさらなる踏み込みを要求してくるだろう。
米国は、高市首相が選挙で得た巨大な民意を背景に、同盟における日本のプレゼンスをどこまで引き上げることができるのかを冷徹に見極めてくる。
“強力なパートナー”日本
今回の衆議院選挙の結果は、日本が「漂流する同盟国」から、再び「計算できる強力なパートナー」へと回帰したことを米国に印象づけた。
米国がこの大勝を捉える視点は、思想的な親近感以上に、政治的な実行力への信頼回復に重きが置かれている。
2024年以降の不安定な霧が晴れ、日米両国は今、より明確で戦略的な協力関係を築くための強固な土台を手に入れた。
高市政権がこの圧倒的な議会基盤を武器に、いかにして日米関係を深化させ、同時に日本の国益を守り抜くのか。ワシントンは今、かつての安倍政権時代を彷彿とさせる強力なパートナーの出現に、深い安堵と大きな期待を寄せている。
政治的脆弱性から解放された今、日米同盟は単なる維持のフェーズを終え、激動の東アジア情勢を主導する新たな実行のフェーズへと、その真のスタートを切ることとなった。
【執筆:株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO 和田大樹】
