岩手県北東部に位置する葛巻町。町に残るユニークな地名の由来を訪ねました。
まず最初は『象鼻山(ぞうびさん)』です。

長年にわたり岩手県内の地名を調べている宍戸敦さんは、次のように説明します。
「象鼻山は、歌人・石川啄木の親友であった高野桃村が名付けた山の名前と言われています。近くに行ってみると、まさに“象が寝そべっているような形”に見えます。そうした見た目から『象鼻山』と名付けられたようです」

山の端が確かに象の鼻のように突き出し、名前の由来に納得させられます。

この象鼻山を名付けたとされる高野桃村とは、どのような人物だったのでしょうか。
山の麓にある秋葉神社には、高野桃村が詠んだ歌が残されています。

葛巻町文化財保護委員の高家卓範さんによると、「高野桃村は、葛巻小学校(旧葛巻尋常小学校)の先生でした。師範学校(教員を養成する学校)の頃から、石川啄木と交流があった人物」ということです。

秋葉神社に残る一首がこちらです。
『山の精 いまひろごりの夕霧や 劫初忍ばゆ 葛巻の夏』
この歌を、石川啄木が大絶賛したと伝えられています。
高家さんは「夕霧が立ち込める葛巻の様子を、『劫初』、つまり世の中の始まりのようだと表現している。そういう雰囲気の町だというようなこと」と説明します。
葛巻町は山や峠の多い地域です。その中に変わった名前の「サッ峠」があります。

宍戸さんはその由来をこう説明します。
「国道340号を九戸の方に向かって登っていくと、ちょっとした峠があります。それが『サッ峠』。かなり独特な名前。さらに先には本格的な『大峠』があるんですが、それと比べるとちょっとした峠ということで“さっとした峠”、つまり小さな峠という意味で『サッ峠』と呼ばれたようです」

「さっとした」という地名は、県内でも使われていたといいます。

宍戸敦さん
「奥州市には、かつて新幹線駅の近くに『さっと沼』がありました。これも小さな沼で、耕地整理で姿を消しましたが、やはり“小さいもの”を表す言葉として『さっと』なんとかという地名のつけ方は少なからず県内にあったような感じがします」

実際にサッ峠を登ってみると、なだらかな勾配でサッと登れている感じがしました。
その先には「大峠」が待っていました。
標識には8%とあり勾配が強くなるります。大峠は、サッ峠と比べて急勾配が長く続きます。昔の人が歩いて越えるのは、かなり大変だったのではないかと思われました。

象が横たわるような山の姿、そして“サッと”越えられる峠。
ユニークな地名をひもとくことで、葛巻町の風景がより身近に感じられます。

岩手めんこいテレビ
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