開場前から長い列ができた。その先にあったのは、プリプリのカキを味わえる年に一度の恒例イベントだ。今シーズン、瀬戸内海で相次いだカキの大量死。逆風の中でも「食べてもらうことが大事」と、廿日市市でかき祭りが開かれた。
「最高です!」焼きたての殻付きカキ
「家族がすごく好きで。誕生日には山盛り買って食べるんですが、今年はカキがなくて食べられなかった。このイベントを楽しみにしていました」
開場前からズラリと並んだ来場者のお目当ては、イベントにあわせて水揚げされたカキ。殻付きの焼きガキをほお張り、「最高です!」と笑顔を見せる人もいた。
2月1日、廿日市市のボートレース宮島で開かれた「大野かきフェスティバル」。
網の上に殻付きカキがぎっしりと並べられ、軍手をはめたスタッフが次々と焼き上げていく。焼きたてをその場で味わえるとあって、毎年多くの人でにぎわう。
37回目となる今回の開催には、これまで以上に特別な思いがあった。
2025年度シーズン、瀬戸内海の広い範囲で確認されたカキの大量死。その影響で、一部のかき祭りが中止となり、廿日市市でも例年を上回る被害が確認された。一時は、このフェスティバルの開催自体も危ぶまれたという。
風評被害への不安…「やってよかった」
実行委員長の上野純一さんは、開催を決断した理由をこう語る。
「ダメだダメだと悩んでいる場合じゃない。カキはまだ残っているし、売り切らないといけない。こういうイベントでどんどん食べてもらって、買い求めていただく機会になれば」
大量死の一方で、被害の程度は“漁場によって差”がある。生き残ったカキが順調に成長し、身入りがよくなっている漁場もあり、むしろ需要の落ち込みが懸念されている。
「こんなにカキが死んでいるところのものは食べられるの?といった風評被害が一番怖かった。こうして楽しんでもらっている様子を見て、ホッとしているし、うれしい気持ちでいっぱいです。やってよかった」
イベントでは、焼きガキのほか、カキうどんなども提供された。
「おいしかった」「最高ですね」。来場者の喜ぶ顔が、会場の空気を温めていく。
手に入りにくい“生ガキ”にも大行列
生ガキを販売するブースにも長い列ができていた。
年に一度、県外に住む子どもへ送っているという女性は、キャリーケースを手に来場。
「買えるかドキドキしながら来ました。今年は数に制限があると聞いていて。いつもなら、いろいろなところで買えるんだけど」
多くの人が“並んでも買いたい”という雰囲気の中、その女性も無事に生ガキを購入。重くなったケースの引いて、その場を後にした。
廿日市市はカキ業者を支援するため、1月にふるさと納税制度を活用した「ガバメントクラウドファンディング」で「牡蠣応援プロジェクト」を立ち上げた。3月末までに1000万円を目標に寄付を募り、厳しい状況に置かれた生産現場を支える考えだ。
カキの身が大きく太る今、おいしく食べることが、カキの産地を支える一番の力になる。
(テレビ新広島)
