日本の家庭で長く愛されてきた漬け物を時代に合わせて進化させ、世界に通用する“酒のつまみ”として世に送り出している『奈良漬専門店』2代目の挑戦を取材した。

『奈良漬け』専門店2代目の挑戦

訪ねたのは、福岡・築上町で40年以上続く奈良漬けの専門店『奈良漬さろん安部』。

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奈良漬けは、野菜を塩漬けした後、酒粕に漬け込んだ古くから日本で親しまれている漬物。

この店では、5種類の野菜の奈良漬けを販売している。

一番人気は、昔からこの地域、九州北部の家庭の味である『うり浅漬け』。しっかりした歯ごたえと、仄かに香る奈良漬けの旨みが人気の秘密だ。

記者が思わず「美味しい!」と褒めると、『奈良漬さろん安部』の2代目、安部雄一郎さんが、2年間漬け込んだという『うり本漬け』も出してくれた。「同じ瓜なんですが、漬け方が違うので、色も味も変わってきます」。確かに『本漬け』は、色も味も濃厚で、一口食べると奈良漬けの旨みが、ガツンと口いっぱいに広がる。

安部さんの店の奈良漬けは、全て手作り。案内された倉庫には、漬物の樽がずらりと並ぶ。

安部さんが、浅漬けの樽を開けると、中には14㎏の瓜がぎっしり。「それに合わせた酒粕の分量を1枚1枚手作業で漬けています」と安部さん。手間暇をかけ、年間13トン以上を生産するという。

原点は祖母の味 ヨーロッパにも

福岡ではあまり馴染みのない奈良漬けの専門店だが、オープンのきっかけは、父方の祖母がルーツと安部さんは話す。「父の母親、私の祖母にあたる人が趣味で漬けていた奈良漬けが、近所や親戚から評判が良く、父(勝憲さん)が『これを商売にしよう!』」と。

最初は、父親が経営していたガソリンスタンドの一角で、祖母の奈良漬けを販売しだしたが、いざ、売り出してみると、お客に大好評!それを機に安部さんの父親は、ガソリンスタンドを畳み、奈良漬け専門店を始めることになった。

業績は順調に伸び、現在は、全国の百貨店はもちろん、ヨーロッパに輸出するまでに成長している。

父、安部勝憲さん
父、安部勝憲さん

奈良漬け×クリームチーズ

生まれた時からから奈良漬けが側にあった2代目の安部さんだが、最初からその魅力に気付いていた訳ではない。

大学卒業後、就職したワインメーカーで携わった『奈良漬けとクリームチーズが合わさった商品』の開発が、家業を継ぐきっかけになったと話す。

「私が子供の頃に、奈良漬けを牛乳と一緒に食べていたのがきっかけ。強い奈良漬けの味を牛乳でまろやかにしていた。その味の記憶を思い出し、この商品を思いついた」と安部さんは当時を振り返る。

幼少期の記憶とワインメーカーでの経験を活かし、実家の奈良漬けをワインにあう漬物として開発した商品は、「パンやクラッカーにつけて、酒のつまみとして食べて頂く」と安部さんは説明する。

口に入れると、クリームチーズの風味と共に、奈良漬けの食感と旨みが広がる。

安部さんの閃きで誕生したこの商品は、『NIPPON OMIYAGE AWARDS 2018』食品部門で、福岡県初の最高賞『農林水産大臣賞』を受賞した。

高校生と開発『酒粕ドレッシング』

更に、幅広い世代に奈良漬に親しんでもらおうと、『奈良漬さろん安倍』は、2025年11月、北九州市の高校生とコラボして、「酒粕を使った完全無添加のドレッシング」を開発した。

「奈良漬けを漬ける際、毎年何十トンという酒粕を使い、そのうちの約1.5tは、肥料として使っていたので、何か別の商品として魅力を伝えられないか」と考えていたと話す安部さん。

高校生とコラボし新商品開発
高校生とコラボし新商品開発

野菜の旨味が溶け込んだ酒粕を“もったいない精神”で有効活用した。「奈良漬けや酒粕にあまり馴染みが無い若い世代にも、美味しく味わって欲しい」と期待を寄せる。

良漬けづくりの副産物として生まれる酒粕まで無駄なく活用する『奈良漬さろん安倍』の2代目。

「最初は、ドレッシングでもクリームチーズでもいいので、最後は『奈良漬って実は美味しいんだな』と思うファンを育てたい」と奈良漬けへの思いは深い。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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