2025年、宮城県内の地方議会では政治不信を招きかねない様々な問題が表面化した。
議長への不信任決議、議員への辞職勧告、さらには選挙における「影武者」疑惑まで、私たちの暮らしに最も身近なはずの地方自治の現場で何が起きているのか。
町議全員が議場を去った 色麻町議会の異常事態
12月2日の色麻町議会。通常であれば町民の生活を支える補正予算の決議など、粛々と進められるはずの議事が、突如として異例の展開を見せた。
「とても看過できるものではありません。直ちに議長の辞任を求めます。」
河野諭町議の発言は、天野秀実議長に向けられたものだった。
問題の発端は8月の議会運営委員会。天野議長が書類を机に叩きつけ、議会事務局長に「どの書類が正しいか日程表をよこせ」などと強い口調で迫った行為がパワーハラスメントにあたるとして、不信任決議案が全会一致で可決されたのだ。
これは9月に続き2度目となる全会一致の不信任決議案の可決。しかし天野議長がそのまま議事を進行しようとしたため、ついに町議全員が「議会をボイコットさせていただきます」と宣言し、議場から退席するという前代未聞の事態に発展した。
天野議長は「いまの議会のあり方というのは決していいとは思っていませんので、やはりこの議会のあり方はしっかりと、健全なものに呼び戻していかなければならない」と自らの姿勢を崩さなかった。
3日間の予定だった議会で可決されたのは町長の不信任決議案のみ。
2日目以降は休会となり、審議されるはずだった町の補正予算など12の議案のうち一部は町長の専決処分、残りは次の議会への持ち越しとなった。
町民からは
「町民にとっては迷惑」
「町民に選ばれた人だから、町民のことを考えてやってもらいたい」
と不満の声が上がっている。
議長の涙と辞職勧告 無投票当選議員めぐる議会の苦悩
富谷市議会では、議長が議会終了後に涙を浮かべながら報道陣の取材に応じる事態となった。
富谷市議会 畑山和晴議長:
市民の…皆さんの…信頼を損ねてしまったのが、本当に申し訳ないです。
その理由は、小松大介議員への辞職勧告決議案の可決だった。
小松議員は11月、市内の入浴施設のサウナにスマートフォンを持ち込み、利用者に不快な思いをさせたとして辞職勧告決議案が提出され、全会一致で可決された。
2023年8月の選挙で無投票初当選した小松議員は、これまでも公務の無断欠席などで2度の厳重注意処分を受けており、複数の議員は今回のサウナでのスマホ使用は一連の問題行動の最新の事例に過ぎないと話す。
小松大介議員は報道陣の取材に対し、「大変重く受け止めています。辞職というところは、今のところ考えておりません。ただ、熟慮して今後検討したいと思います。」と述べるにとどめ、進退を明らかにしなかった。
「影武者」疑惑と町長の責任 町を二分した選挙の先で
8月に行われた大郷町長選挙では、現職を破り当選した石川良彦町長に「影武者」疑惑が持ち上がった。
投票日前日の朝、約20分間にわたり、後援会の男性が候補者本人しか着用できないタスキを着けていたとして、町民が石川町長と男性を刑事告発。
警察は告発状を受理し、公職選挙法違反の疑いで捜査を進めている。
「影武者というのは、公職選挙法違反ではないかということで、撮影した」と目撃した町民は語る。
問題となった場所は選挙事務所の目の前。近くには複数の町議がいたという状況だったが、違反に気づき指摘する人はいなかったのだろうか。

仙台放送の取材に対し、その場にいた町議の一人は「気が付かなかった」と話した。
一方、もう一人の町議は「突然タスキを付けて来たので、みんな驚いた。すぐに注意してやめさせた」と当時の状況を説明し、「田舎では選挙に関する知識のない人が多い」と弁明している。
目撃した町民は「(その場に)公職選挙法に詳しい議員がいた。なぜ、こういう違反を注意しないのかなと思った」と疑問を呈している。
議会での追及に対し、石川町長は影武者が違反にあたると認識を示したうえで「わたしの分からないところでやっていた」と繰り返し、関与を否定している。
地方議会が抱える「なり手不足」という根本問題
地方議会に詳しい日本大学法学部の林紀行教授は、こうした一連の問題の背景には議員の「なり手不足」があると指摘する。
選挙における競争原理が働かなくなっていることが問題だという。
日本大学法学部 林紀行教授:
自分たちが選んだ、自分たちは選ばれた、しかもそこに競争があった、という事実があることが一番大切。それがあると、次の4年後の選挙に向けて一生懸命に活動しますし、悪いことをしたら次の選挙では落ちるということになるので。
林教授によれば、一人の議員が起こした不祥事であっても、議会や行政全体への不信感につながるという。
その対策として、議会が積極的に情報を発信することが信頼回復につながり、なり手不足解消にもなると指摘する。
日本大学法学部 林紀行教授:
議会事務局の職員も巻き込んで、議会というチームとしてどうするのかということが、いま地方議会の改革の現場では問われている事。住民の負託に答えるためにはどうすればよいのかを考えていただきたい。
さらに、議員の不祥事は有権者の問題でもあると林教授は指摘する。
日本大学法学部 林紀行教授:
4年間、議員が何をしてきたのか、町長は何をしてきたのか、自分事として住民側も見守っていく。こういった姿勢も求められるかと思います。
私たちの暮らしに最も近い地方議会。少子高齢化・人口減少が進む中、議員と有権者それぞれの責任は、ますます重くなっている。
