「人間関係構築の魔術師」の異名を持つ日本維新の会の国対委員長・遠藤敬氏。高市政権の首相補佐官として自民党と維新の”潤滑油”役を担います。
その豊富な人脈の源泉は、10年近く務める国対委員長として積み重ねた「コミュニケーション」。
国対政治の裏側から国会改革への熱意まで、永田町を知り尽くしたキーパーソンが本音を語りました。
■首相官邸に滞在できる時間は「10分とか15分」
高市政権が発足し、首相補佐官に就任した遠藤敬氏。しかし、その日常は維新の国会対策委員長の職務に大半を費やされ、官邸に滞在できる時間は「ほぼ10分とか、15分とか」と語るほどの短さです。
【遠藤氏】「(首相官邸には)毎日来たいなと思うけど国対委員長の仕事が。特に今日(12月16日)なんかは明日が閉会日で、うまく閉会日を迎えられるかどうかっていうね」
国対委員長兼務で政権入りするという、これまでの永田町の常識では「あり得ない」人事ですが、それでも、「来てるぞっていうのを見せないといけない」と語る遠藤氏。
首相官邸には執務室も用意されていますが、議員会館にいる時間があまりにも長いため、官邸の秘書官も、遠藤氏の議員会館の部屋にイスとテーブルを用意し、そこで執務をしているといいます。
遠藤氏の補佐官としての指揮命令系統のトップは高市総理ですが、総理にはあまり細かいことは入れず、自身の考えている政策に集中してもらうため、官房長官や官房副長官、ほかの秘書官と密に連携し、永田町の状況を逐次報告する役割に徹しているということです。
高市総理からは「任したからね」と言われ、細かい指示はないのだとか。
■閣外連立の真意は...「お見合いもしないでいきなり結婚するっていうかね」
今回維新は閣僚を出さず、補佐官として遠藤氏のみが政権入りする形で自民党と連立を組みました。
これには、「何かあればすぐに連立を離脱しやすくするためではないか」、という見方もありますが、遠藤氏も「そういう向きもあるね」と否定はしません。
「2カ月前まで野党だったからこそ、自民党の議員よりも野党の動向に対するアンテナが高い。高市総理からそこを買われている部分もあるのではないか」と自己分析します。
維新が閣僚を出さなかったことについては、「うちの党はいきなり閣内に入ってやれる人材もいないっていうのもあるのかも分からない」としながらも、より本質的な理由を語ります。
【遠藤氏】「いきなりお見合いもしないで結婚するっていうかね。お互いを信頼できる、関係を密にした結果、結婚という、閣内入りというかな」
まずは信頼関係を醸成する段階であり、それが深まれば、いずれ維新から閣僚を出すという未来も描いています。
【遠藤氏】「そうでなければ、お互い信用をしないままずっとやっていっても、うまくいかないですよね」
■連立合意は「偶然のたまもの」
“維新と自民党のパイプ役”として、「高市政権誕生の立役者」とも言われる遠藤氏ですが、ただの「偶然」だといいいます。
【遠藤氏】「高市総理の知り合いが(維新には)僕しかいなかったから、それはそうなんでしょうね。
計算を尽くした結果そうだというなら格好良いけど、そんな格好の良いものではないですよ。
自然発生的に人間関係の元々の基礎があったから、そこにフィットしたということに尽きるんじゃないですかね」
■「携帯電話だけは気にしてますもん。トイレとかでなくしたりするとドキドキ」
遠藤氏を「人間関係構築の魔術師」と評したのは、維新の創設者である橋下徹氏です。
「上手いこと言ってくれるなと。そういう言葉ってあんのかなと思うけど」と照れ笑いを浮かべますが、そのネットワークの広さは計り知れません。
遠藤氏の携帯電話には、一体どれくらいの国会議員の電話番号が入っているのかと聞くと、返ってきたのは「数えたことないけどかなり入ってるでしょうね」という言葉。
だからこそ、携帯電話だけは無くさないように常に気にしていると言います。
そしてその連絡先は、自民党や主要野党だけにとどまりません。
【遠藤氏】「れいわ、共産党、参政党も入ってます。全ての政党の人たちとも人間関係を作っていくのが仕事だから、どの政党ともいつでも話ができます」
その言葉を裏付けるように、国対委員長の在任期間は、「代理」の期間を含めると11年を超えます。
■プーチン大統領に送られた秋田犬との知られざる関係
維新だけならず、政界のキーマンの1人である遠藤氏。その豊富な人脈は国内だけにとどまりません。
実は「秋田犬保存協会」の会長を務めていて、ロシアのプーチン大統領に贈られた「ゆめ」や、フィギュアスケートのザギトワ選手に贈られた「マサル」も、遠藤氏が贈呈に関わっていたのです。
【遠藤氏】「各国の大使とかね。オファーがあれば日本の文化ということで秋田犬の外交をやってますよ」
犬との「関係構築」で培われた技が、「人間関係構築の魔術師」を形作っているのかもしれません。
■橋下徹氏が「馬場路線」と「吉村路線」の融合を遠藤氏に期待?
そして維新の内部では、創設者の橋下徹氏が馬場代表時代に執行部を批判するなど、路線対立が囁かれる中で、橋下氏が遠藤氏に期待を寄せているといいます。
それはは、遠藤氏が「馬場路線」と「吉村路線」を融合させ、維新を”真の改革集団に変えてくれるのではないか”ということです。
この指摘をぶつけたところ、遠藤氏は「どちらの路線も間違っているとは思わない」と前置きした上で次のように語りました。
【遠藤氏】「僕の役割っていうのは一緒で、何も変わらないんです。永田町の常識を急に打ち破ろうとすれば、ハレーションが生まれて改革が逆に進まなくなる。それが永田町の理屈です。
馬場路線、吉村路線という極端な分け方というよりも、自分は自分のスタイルで、うまく融合しながら、お互いがお互いを尊重できるような、ものの見方にしていかないといけないと思う。
それが自らの役割だと。それぞれの得意・不得手をうまくコントロールし、自民党にも維新の考え方を理解してもらう。改革を進めるエンジンになることが、来年に向けた目標です」
政権の中枢を担う「魔術師」はその人脈で2026年の日本をどのように進めていくのでしょうか。