赤ちゃんのうつ伏せ寝に気が付かず、死亡させたとして和歌山県田辺市の認可外保育施設「託児所めぐみ」の当時の代表の女(67)が起訴されました。

女は2023年、生後5カ月の柴尾心都(しばお・こと)ちゃんがベッドでうつ伏せになり鼻や口がふさがれたことに気が付かず、窒息死させた罪に問われています。

起訴状によると、女は、当時、国の保育者配置基準を守らず、乳幼児4人を1人で預かっていて、心都ちゃんが寝たあとは別の部屋で保育をしていたとされます。

この事件を巡っては2025年2月14日に検証委員会が調査報告書を県に提出していて、その際に取材に応じた心都ちゃんの母親は、「絶望でしたね。一瞬ほんまに時が止まったみたいな感じで」と語っていました。

■生後5カ月の女の子が亡くなった重大事故の調査報告書が公表された

【検証委員会 森下順子委員長】「保育施設の色々な基準が満たされてなかったという問題点と、行政の指導監督ができていなかった」

14日、公表された調査報告書。

おととし生後5カ月の女の子が亡くなった重大事故についてのものです。

柴尾心都(こと)ちゃん。4人きょうだいの末っ子として生まれました。

母親の心さんにとっては、待ちに待った女の子の誕生でした。

【心都ちゃんの母・柴尾心さん】「結構、生まれてすぐくらいに、もうどれ見てもかわいかったんで、ついつい買ってしまいました。ヒラヒラとか花ばっかり選んで」

しかし、そんな幸せな日々は突然、終わりを迎えます。

■認可外保育施設へ預けた娘が意識不明に

上の子3人と川遊びに行くために預けた、認可外保育施設「託児所めぐみ」で、心都ちゃんが意識不明の状態になったのです。

【心都ちゃんの母・柴尾心さん】「絶望でしたね。一瞬ほんまに時が止まったみたいな感じで」

心さんは病院に駆けつけましたが心都ちゃんは息を引き取りました。

【心都ちゃんの母・柴尾心さん】「管いっぱいつながれてて。もう本当に泣き崩れて、ごめんっていう気持ちでした。預けてしまってごめんという気持ちが強かったですね」

その後の解剖の結果、心都ちゃんの死因とされたのはうつ伏せ寝による窒息死。

そして、預けた託児所に問題があったことが明らかになります。

■「長年の経験で預かれるやろう」 国の規定に反していることを認識して預かり

国は認可外の保育施設で複数の乳幼児を預かる場合、2人以上の保育者を配置するよう求めています。

しかし当時、「託児所めぐみ」では乳幼児4人を代表の女性1人で預かっていました。

心さんはおととし10月、託児所の代表に当時の状況について説明を求めました。

その時の音声です。

【託児所「めぐみ」の代表】「声がなかったから、機嫌よく寝ていると思って。必ず5分に1回のチェックだけは言われていることなので、行政のほうからも」

【心都ちゃんの母・柴尾心さん】「規定はないんですか?」

【託児所「めぐみ」の代表】「実は2人じゃないと駄目なんです。だけど、私の長年の経験で預かれるやろうって」

代表は国の規定に反していることを認識した上で、心都ちゃんを預かっていました。

■この託児所は何度も人員不足で市から指導を受けていた

さらに去年9月、心さんが託児所を直接訪ね、現場の確認に訪れた時には…。

【心都ちゃんの母・柴尾心さん】「代表が1人で見るのは、いつごろから分かってた?」
【託児所「めぐみ」の代表】「その時は、記憶がない…。ごめんなさいね、曖昧ですね記憶が…。今、捜査中なのでどこまで話していいか分からないんです」

心都ちゃんが、どういう状況で、なぜ亡くなったのかすら、知ることができませんでした。

【心都ちゃんの母・柴尾心さん】「1人で見れるわけないやろっていう思い。何で、(預けた)その時に言ってくれへんかったんやろなという気持ちでした」

その後、この託児所は何度も人員不足で田辺市から指導を受けていたということも明らかに。


■事案から1年たち検証委員の設置 報告書では市の対応のずさんさを指摘

和歌山県はこの事案から1年以上がたち、心さんらの訴えを受けてやっと検証委員会を設置。

2025年2月14日、報告書が提出されました。

報告書によると、心都ちゃんが死亡するまでのおよそ3カ月間で、1人態勢の日がおよそ67%と常態化していたことが判明。

さらに、田辺市も指導後、人員不足が改善されているかどうかの確認をしていなかったとみられるなど、対応のずさんさが指摘されました。

報告を受けた心さんは、「県に対して、あまり期待はできないが、二度と同じようなことは起きてほしくない」と取材に対し答えました。

心都ちゃんは二度と帰ってこないという事実を、代表の女性と行政はどう受け止めるのでしょうか。

■市の対応について「運営者へペナルティの重さを認識させることが大事」と弁護士

調査報告書では、行政指導をしていた田辺市の対応についても指摘されました。

番組コメンテーターの亀井正貴弁護士は、田辺市の対応について「運営者への認識させることも大事」と話します。

【亀井正貴弁護士】「行政の場合は、だいたい指導から入って、ダメだったら勧告して、命令という流れが一般的にはあるんですけども、その指導段階では、なかなか強くやらないというのが実態だと思います。いろんなトラブルが生じる可能性があるとかということで」

「ただ、この“うつぶせ寝”による死亡事故は結構、起きています。事故が起きると、警察が捜査に入ります。業務上過失致死事件として。かつ、一般的には、さらに損害賠償請求が来て何千万が認められて、その保育所はもう運営できなくなって、破綻してしまうぐらいのところですから、やはり運営する人はそれぐらいのペナルティがあるようなことなんだということを、認識せしめることが大事だと思います」

二度と同じような事案が繰り返されないような体制づくりが求められています。

(関西テレビ「newsランナー」2025年2月14日放送)

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