2025年は、山形でも「クマ」の出没が相次ぎ、その対応に追われた。1年を通し、所かまわず出没。冬眠するとされる冬になっても遊佐町・飯豊町など各地で目撃が相次ぎ、依然警戒が続く中、自治体では新たなクマ対策の取り組みも始まっている。今後は、駆除・排除していくのか、共生を目指すのか、その姿勢を常に問われることになりそうだ。
2月からクマ出没・人的被害も発生
12日に京都の清水寺で発表された2025年の世相を表す漢字に選ばれた「熊」。
クマの被害が社会問題となったことで、19万票近くの応募から約2万3000票を集めた。

2月、山形・新庄市の中心部でクマが相次いで目撃された。
警察と消防が周囲を閉鎖し、夜通し警戒にあたり翌日を迎えた。
麻酔銃で眠らせたクマは、猟友会によって山へ返された。

同じく2月、鶴岡市で男性がクマに襲われ頭などをけが。
2025年初めての人的被害だった。
学校・商業施設…場所を問わず出没
12月16日に山形県が発表した2025年のクマの目撃件数は2787件(11月末時点)。
これまで最も多かった2020年の3倍以上で、過去最多を更新している。

5月、クマが出没したのは上山市の住宅の庭だった。

住民は、「窓のすぐ外にいた。まさかうちの庭に出ると思わなかった」と話していた。

市街地に現れるクマ、いわゆる「アーバンベア」。
これまではあまり出没しなかった商業施設近くでも目撃され、対応に追われた。
山形市内のスポーツセンターで目撃されたクマが道路を横切り、田んぼに走って行くなど、市北部の住宅街にクマが居座り、警察はドローンを使って上空から捜索した。

秋になると、小学生の通学路など、クマの目撃や被害が連日のように報道された。
そして、クマは学校にも…。

山形市内の高校では、屋内練習場のネットをよじ登るクマ。
南陽市の小学校では玄関に衝突しガラスを割って立ち去るなど、被害は増加の一途をたどった。

果樹・野菜・家畜など農業被害も
えさとなるブナが大凶作となり、たびたび里に現れたクマ。
メロン・スイカ・トウモロコシと、里に実った旬の農作物を食い荒らした。

高畠町のシャインマスカットの畑には、柵を壊してクマが侵入した。

ソルルス・土屋隼代表:
400~500房くらい食べられた。
金額にすると100万円以上かもしれない。

12月に入っても柿などを求めるクマがいるとみられ、県・市町村は不要な果樹を伐採するよう呼びかけている。

そんな中、さらに小国町では、“やまがた地鶏”の食害も。
網を突き破ってクマが侵入し、36羽いたひな鳥のうち34羽が食べられた。

渡部要一さん:
電気柵をやっていても、クマは頭が良くて、ものすごいスピードで突き破る。
現場判断の「緊急銃猟」で駆除
人的被害も13件と大幅に増加し、目撃された数と同様、過去最多となった。
襲われた人:
怖かった。やられると思った。
ここでぬかのフタを取っていた。開けていたら、こっちからクマが来た。

住宅の敷地内で作業をしていた女性は、後ろから現れたクマに襲われ背中や腕にけがをした。
とっさに頭と首を守って、しゃがみこんだ姿勢が命を守った。

クマによる危険から人命を守るため、新たな制度も施行された。
これまで、警察官の命令など特別な場合だけに限られた市街地での銃の発砲を、市町村長の判断で許可できる「緊急銃猟」。

こうした中、11月にクマが米沢市の旅館に侵入。
冬季休業中で宿泊客はおらず、経営者の家族3人が警察により救助された後、県内で初めてとなる緊急銃猟でクマが駆除された。

クマの出没は冬になっても続いている。
12月9日には、鶴岡市の住宅で、飼っていたイヌが腹をかまれて死んでいるのが見つかった。
クマによる被害とみられ、その後近くで発見されたクマが県内15例目となる緊急銃猟で駆除された。
モンスターウルフでクマが近づかない環境つくる
異例かつ深刻な事態となった2025年のクマ被害。
市町村もこれまでにない対応を求められた。
野生動物の対策などを担当する山形市の佐藤由英さんによると…。
山形市環境課・佐藤由英自然共生係長:
令和6年(去年)が紫で、緑が令和7年(今年)。
今まではこの辺りに出没がまったくなかったが、今年度は街の中心部に出没が相次いだ。

山形市でもクマの活動が活発化する5月以降から目撃が増え続け、特に10月は2024年の35倍となる105件の目撃があった。
市は農作物の被害対策として、野生動物撃退装置「モンスターウルフ」の実証実験を実施した。

さらに、不要な柿・クリなどの果樹を伐採する費用の補助を新たに開始。
対象は自治会や個人で、12月16日から補助金の受付が始まる。

山形市環境課・佐藤由英自然共生係長:
人が住んでいる場所に誘引するようなものを、できるだけなくしていこうと。
クマが近寄らない環境作りをやっていきたい。
AI搭載カメラ導入し24時間体制で監視
一方、長井市の山の麓では、県内の自治体が注目している取り組みも行われている。
市が5年前に導入した人工知能・AIを搭載したカメラ。
木の幹に取りつけられていて、動物など動くものを検知すると自動的に撮影し、市の職員にメールで知らせる。

この時、撮影された写真の下の部分には「ヒト」の文字があり、AIが自動で判定していた。
また、クマだけでなく、ネコやキツネなどさまざまな動物を判定することもできる。

市はこのカメラを東西に広がる山の麓に17台設置し、24時間体制でクマを監視している。

長井市総合政策課・塚田知広補佐:
わなに有害鳥獣がかかったかどうか・その状況もカメラで監視できるので、現地に行かなくても確認できるようになった。
AIカメラの導入でクマの生息状況を把握して、箱わなを仕掛ける場所の参考にするなど、効率的に対応できるようになったという。

長井市総合政策課・塚田知広補佐:
昨今はクマの出没数も増えているので、カメラの数を増やすなどしてより効率的な対策をとっていきたい。

クマへの対応にほんろうされた1年。
専門家は、2026年以降もクマに対する「最大限の警戒」を続けなければならないと警鐘を鳴らす。

森林総合研究所・大西尚樹さん:
クマの数が増えて分布域が広がっていて、私たちの生活圏とクマの生息域が地域によっては重なっている。
この状況が、今後改善する見込みはあまりない。
今年のような状況が2~3年に1度は起きると考えた方がよい。
(さくらんぼテレビ)
