新潟にとって大きな判断が下された2025年。東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働への理解を求める国に対し、花角知事は12月23日、正式に再稼働を容認する意向を伝達した。2012年から止まっていた原発が再び動きだそうとしている。
国の再稼働の理解要請に花角知事が“承認”を正式に伝達
「今、出力がゼロになり、6号機が発電を停止した」
2012年に柏崎刈羽原発6号機が定期検査に入り、全ての原子炉が停止して13年。
2025年12月23日に赤澤経産大臣と面会した花角知事は「再稼働の理解要請に対して、了承することと致したい」と、国から理解要請を受けていた柏崎刈羽原発の再稼働を正式に了承した。
止まっていた柏崎刈羽原発の時計の針が動き出そうとしているが、この結論に至っては県民の意見が一つにまとまったわけではなかった。
市民団体が求めた県民投票条例案は否決も県民の意見を集約
2018年に知事に就任した花角知事。
賛否の別れる再稼働についての判断は、2018年に知事選に初めて挑んだときから「県民に信を問う」と繰り返してきた。
しかし、自身が示した再稼働是非の判断に対して、市民団体が求めた“県民投票”の実施に向けた条例の制定には「住民投票については課題がある。二者択一で得られる情報というのは限られてくる」と否定的な意見を出していた。
14万3000筆あまりの署名をもって直接請求された県民投票条例案は、その後、最大会派・自民党などの反対により県議会で否決される。
県民投票条例案が否決されたあと、報道陣から改めて“信を問う”方法について追及を受けた花角知事は「“信を問う”という言葉は想像できるものがあるよねと何度も申し上げている」と、これまでと同様に信を問う方法や時期について明言を避け続けていた。
こうした状況の中、25年6月に当時の石破首相は、柏崎刈羽原発で重大事故が発生した際の緊急時対応策を了承。これにより再稼働に向けた残る必要な手続きは“地元同意”のみとなった。
国からのプレッシャーを受ける中、花角知事は“県民の意見の集約”を目的に県民から直接賛否の声を聞く公聴会や県内30市町村長との意見交換を実施。
再稼働に対する県民の賛否の理由や不安の声、自治体の要望などに細かく耳を傾ける一方で、原発再稼働を急ぐ国に対しては、「柏崎刈羽原発で発電される電力が首都圏に送られているだけで、地元の地域にはメリットがない」と立地地域の“メリット”を求める活動を強めた。
再稼働時の“地元メリット”要望に国や東電も対応
「地元の要望も踏まえながら、特別措置法について対象地域を拡大するなど地域振興の取り組みを着実に強化してください」と当時の石破首相は、原発立地地域の振興に関する特措法の対象範囲を半径10kmから半径30kmに拡大することを決定した。
また、東京電力も地域貢献策として再稼働後、1000億円規模の資金を新潟県に拠出するなど県の要望に応える姿勢を示した。
しかし、この東電の表明に県議からは「新潟県民のほほを札束でたたいているようなもんじゃないですか」「金さえ出せば黙るだろうと思っておられるのでしょうか」と反発する声も。
25年11月に公表された県民意識調査でも約6割の県民が再稼働の条件は整っていないと回答する結果となった。
県民の意見集約を経て花角知事が下した結論は“再稼働容認”
公聴会や首長懇談会、県民意識調査を経て、県民の意見を集約する取り組みにメドをつけた花角知事。
「自分の肌で感じたい」と柏崎刈羽原発と福島第一原発の現状を視察した。
原発が停止して13年…再稼働への理解要請から、約1年半。
再稼働の是非に関する自身の判断を示すとして、11月21日午後に臨時会見を開いた花角知事は「7つの項目について国の対応を確認・確約をいただいた上で、新潟県としては了解することとする」と再稼働“容認”の判断を下した。
繰り返してきた“県民に信を問う”手法は「県議会に信を問う」
再稼働容認の判断を示した花角知事はこの日、県民に信を問うとしてきたその手法について“県議会で諮る”とも明らかに。

これに未来にいがたの大渕健県議は「自ら表明してきた信を問う、このことについて公約違反であります」と主張。
再稼働を前提とした補正予算案と自身を信任する付帯決議案の採決で信を問うとしたこの手法に、再稼働に反対する市民や県議は猛反発した。
県民の意見が一つにまとまらないまま迎えた採決の結果は、付帯決議案を提出した最大会派・自民党などの賛成多数で可決した。
花角知事は、再稼働判断を示した自身の信任が得られたとして、採決翌日の12月23日、国に再稼働を容認する意向を伝えた。
急遽面会することとなった高市首相からは「難しい中で大変なご決断をいただき、ありがとうございます」とねぎらいの言葉がかけられた。

そして12月24日、原子力規制委員会に原子炉の起動に必要な申請を行った東京電力。これにより再稼働のスケジュールは26年1月20日となった。
花角知事は「県民の気持ちは再稼働について、賛否両論割れている状態だと思っているので、それだけなかなか判断が難しい課題であった」と強調する。
福島第一原発事故後、原発をめぐる対立が顕在化している中、下された再稼働容認の判断。
地元同意の議論に終止符を打った形となったが、安全対策や避難路の整備についての議論に終わりはない。
