コメの民間在庫が全国で過去10年で最多となる一方、店頭価格は高止まりが続くという逆転現象が起きている。秋田では倉庫に積み上がる在庫と、売れない現実に現場の苦悩がにじむ。
倉庫に積み上がる「あきたこまち」
秋田・湯沢市。数社が共同で使う低温倉庫には、天井近くまでコメが山のように積み上げられている。鈴木又五郎商店が抱えるのは、2025年産の「あきたこまち」だ。
例年であれば新米が出回る秋に向けて在庫は減るが、現在の量は「例年の倍以上」。売り先は決まっているにもかかわらず、買い手側の倉庫が満杯で出荷できない状態が続く。
在庫は最多、価格は高止まり
農林水産省によると、2026年3月末の民間在庫は277万トンと前年より97万トン増え、過去10年で最多となっている。
しかし、消費者が目にする価格は下がっていない。4月中旬のスーパーの平均価格は5キロ3883円。年初よりは落ち着いたものの、2024年と比べるとほぼ2倍という高水準だ。
流通の“詰まり”とコスト増
現場では価格のゆがみに苦しむ声が上がる。
鈴木又五郎商店の織田拓宏さんは、「買い手は決まっているが、そこから値下げ交渉が入る。場合によっては赤字でも放出せざるを得ない状況に直面する可能性がある」と話す。
一方で、肥料や資材の値上がりに加え、夏に向けた冷蔵コストも増大。コストを価格に転嫁できず、経営を圧迫している。
農家も抱える“投資できない不安”
コメ価格の高さは農家にとって一見追い風だが、必ずしもそうではない。
「高く売れるのはうれしいが、いつ下がるか分からない」。価格の不安定さから設備投資に踏み出せず、将来の生産体制にも影響が及びかねない。
生き残りへ 付加価値の模索
こうした状況を受け、鈴木又五郎商店は新たな取り組みを始めた。
4月にスパイスや昆布だしを使った加工食品『薬膳粥』を発売。
「コメだけを売っていては駄目」と危機感を口にする専務の鈴木アヒナ麻由さんは、美容や健康の視点を取り入れ、付加価値で勝負する戦略だ。
「おいしい」だけでは越えられない壁
“令和の米騒動”から2年。コメは余りながらも高いという矛盾は、日本の農業と流通の構造的な課題を浮き彫りにしている。
主食としての価値だけでは乗り越えられない現実に、生産・流通の現場は新たな道を模索している。
(秋田テレビ)
